どこに行く日本

                  ─ 練馬九条の会 6.6集会 ─

             講師 孫崎享(うける)氏

     
   

                   2014年6月6日 練馬文化センターにて               
         プロフィール
           東アジア共同体研究所理事  城西国際大学大学院講師
          経歴
           ソ連大使館勤務 ウズベキスタン大使 イラン大使
           外務省情報局長 防衛大学教授等を歴任
          ※文化放送 毎週木曜日 6:00〜7:00「おはよう寺ちゃん」に出演

 

日本は「民主主義国家」か?


 日本は民主主義国家なのでしょうか。と言うとみなさん大変びっくりされると思います。どうも今、日本の社会は本当に民主主義国家であるかどうかが問われていると思うのです。産経新聞のブログを見ていましたら、読売新聞の渡辺会長と巨人軍のジェネラルマネージャーの清武さんの裁判が出ています。それに関して今日の新聞には、清武さんが渡辺会長に怒りの発言をしたら、渡辺会長が「俺は最後の独裁者だ」と言ったことが報道されています。また昨日は「読売新聞と俺は一体だ」と言っています。日本最高の部数、約一千万の人が読んでいることが「俺は独裁者だ」という言葉になって出てきているのです。
 民主主義国家の基本は選挙です。各政党が選挙で公約をする。その公約を実践する。これが基本的に民主主義国家の有り様だろうと思いますけれども2012年の衆議院選挙において自民党は何を公約したでしょうか。私たちの大きな関心は、一つは消費税であり、一つは原発であり、一つはTPPです。消費税については「アクション4 暮らしの再生」の中で、「消費税は全額社会保障に使います」と言っています。しかし今社会保障がこれまでよりも良くなる状況になっているでしょうか。消費税は1985年から、消費税の上がった分と、法人税及び高額所得者の税金が減った分とがほとんど同じです。原発において「原子力に依存しなくても良い経済社会構造の確立を目指す」、TPPには「聖域なき完全撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対します」と言ってきたのです。私たちの関心のある消費税や原発やTPPについて、全く嘘の台詞をはいて政権を取っている。それでこの国は民主主義国家だと言えるのでしょうか。投票されたものと政治と何ら関係がないとすると、それは民主主義国家ではなくて単なる欺瞞をしている政治体制ではないかと思います。

 

レジュメより  2012年衆議院選挙での自民党公約
・Action one「経済を取り戻す」「成長による富の創生への転換を図ります。
 名目3%以上の経済成長を達成します」

 

「この人は本当に悪い人だ」─集団的自衛権をめぐる大橋巨泉さんの言葉
  大橋巨泉さんが、週刊現代の6月7日号で集団的自衛権についてコメントを書いていますけれども、「率直な感想は〝この人は本当に悪い人だな〟である」と言っています。集団的自衛権について説明するときに「紛争国から逃げようとしているお父さん、お母さん、おじいさんやおばあさん、子どもたち、彼らが乗る米国の船を、今私たちは守ることは出来ないのです」ということを、あたかもそのようなことがあるような説明をしている。しかし、今まで日本の人たちが戦後米国の輸送戦で、紛争国から助け出されているような事実があったのでしょうか。私はイランとイラクという二つの国に勤務しています。いずれの国に於いても、紛争がおこるから、おこったときにどのように邦人が逃げるか、日本人会とずっと協議してきています。そんな中で米軍の軍用機が救出する、あるいは米軍の軍艦が救出に向かう、紛争時にそのようなことは全く想定していません。しかし安倍さんは、国民に対して、おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さん、その人たちを助け出すのがアメリカだという感じで、それを助けなくてはいけないと言っている。こういうような説明をしている安倍首相を見て、大橋巨泉は「この人は本当に悪い人だ」と言っているのです。

 

真実を伝えないマスメディア

1)原発報道の嘘
 今、この安倍晋三さんを半分以上の人が世論調査では支持していることになっている。なんでこんなおかしいことがおこっているのでしょうか。私はこの問題の一番の原因は新聞だと思っています。テレビだと思っています。これが嘘と詭弁を述べ続けている。新聞が、テレビが、報道しないということを、かなりの人が分かったのは原発の事故からだったと思います。事故が起こって福島原発が爆発しました。戦後最大の悲劇がおこったはずです。原発についてどれくらい日本のマスコミは取材したのでしょうか。福島原発の第一で大変な事故が起こった時、どれだけの人があの内部を調べたでしょうか。少なくとも去年の3月ぐらいまで、その中に入った人は元民主党議員の川内さん以外にはいないのです。東電の人以外は誰もいないのです。危険だからです。そして川内議員は、津波の前に地震でいろいろなところがやられているではないかという映像を持って出てきました。しかしその写真は報道されなかったのです。報道機関が怖くて行けないのなら、代わりに行って来た人の映像を報じるのが当然でしょう。それだけではない。爆発事件が起こったときに、大手の報道機関は現場から離れました。最大の事故が起こっているにもかかわらず現場から離れたのです。それは一つの判断だと思います。メディアが自分の社員をその場所に置いて殺すような事態は避けなくてはいけないからです。これは確かに一つの判断かもしれません。しかし、自分の社員が危ないから「現場から去れ」と言ったのなら、報道機関は「生命に危険がある」と報じなければいけなかったのです。そのような報道をしたでしょうか。「直ちに被害はない」といいましたね。そしてその状況は今日も続いていると思います。
 チェルノブイリの事件の取材を見れば、10%以上の避難民に鼻血が出るという現象がおこっているという調査があります。何よりもましてその場所にいた元双葉町の町長が「俺は被曝をしたことと、鼻血が出たということは関係があると思う」と言ったことを『美味しいん坊』の作者は表現したのです。それがおかしいとして、安倍首相は「正確な情報を伝える努力をしなければいけない」と言い、経済産業大臣は「間違った情報を伝えることも報道の自由でしょうか」と言っているのです。今日本はそういう国になってしまったのです。今多くの人は、日本は民主主義国家であると思っていると思いますけれども、実は、大変に危険な状況に入っているんじゃないかと思うのです。


2)外国特派員協会が出した「秘密保護法」への警告
  フィギュアスケートの真央ちゃんが森首相の発言について、外国特派員協会で「森首相は言ったことを多分後悔していると思います」という発言をしました。この発言はかなりの方がご存じですが、この外国特派員協会は大変重要な声明を発表しているのです。秘密保護法が出されたときに、バーミンガム日本外国特派員協会長が、「秘密保護法は報道の自由、及び民主主義の根幹を脅かすものである。撤廃または修正を勧告する。開かれた社会における調査報道の神髄は、政府の活動に関する活動を明らかに伝えることである」、こういう警告を発したのです。会長名で発したのです。こんなことは外国特派員協会でおこなったことはほとんどないのです。これをご存じの方は手を挙げてください。いませんね。真央ちゃんの発言はみなさんご存じでしょうけれど、本来ならもっともっと重要なことをなぜ知らないのでしょうか。報道しないからですよ。実は秘密保護法が出たとき、たまたま午前12時4分に、このメールが入ってきたのです。このメールはもしかするとガセかもしれない、危ないかもしれないと思いながらツイッターをしました。そして翌日講演の場で、ある元新聞記者に会ったのでそれを伝えると、その方がすぐに特派員協会に電話をして確認をし、ついでに内閣の広報室に電話をしました。すると「それは内政干渉だ」と言うのです。だから新聞社は報道をしなかったのです。今の日本で大手新聞は基本的に安倍首相の望むことは報ずるけれども、安倍首相が困ることは報道しないような状況になっていると思います。それは何もよくおもんばかって報道しないということを言っていますけれども、そんな生やさしいことではないと思います。

3)報じられないアメリカメディアの安倍批判
 安倍首相は昨年の12月靖国神社に訪問しました。アメリカ大使館が異例な、「我々は落胆した」という言葉を使ってこれを批判しました。その頃から米国国内では安倍首相に対する批判が非常に強くなった。それで、ある報道機関が「米国の中で安倍首相に対する批判がある」というインタビュー記事を掲載しました。何が起こったでしょうか。取材した記者に「俺はそんなことはしゃべっていない。あんな報道をするなら、アメリカからいなくなるようにする。」ということまで言っているのです。報道機関に対して圧力をかけるだけでなく、取材源にまで圧力をかけている。そのような状況だと思います。
 5月8日、ニューヨークタイムスが「今日本は集団的自衛権というものを持って国際的に軍事力を使おうとしている。しかし、それを行うには憲法九条がある。これは国会の3分の2の承認と国民投票で憲法を変えなければいけない。しかし、憲法を変えることが難しいということが分かってきた中で、安倍首相は解釈でもってこれを切り抜けようとしている。民主主義の課程を覆すものだ。日本は民主主義の真の危機に直面している」と書きました。
 みなさん鳩山さんを思い出してください。鳩山さんが「最低でも県外」と言ったときに、「こんなひどいことを言ってアメリカからの信頼を全くなくしている」と一斉に新聞は報じました。しかし5月8日ニューヨークタイムズが「日本は民主主義の真の危機に直面している」と報じたことをご存じの方はおられますか。ほとんどおられない。なぜなのでしょう。ニューヨークタイムズはアメリカを代表する新聞社です。それが「日本は民主主義の危機に瀕している」ということを言っていると、社説で書いていれば大変なことなのです。でもほとんど報じていないのです。

4)天皇発言とNHK
  去年の12月23日に天皇が80歳の誕生日を迎えられました。そこで話をされました。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました」。
 「日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作った」、考えて見ると、この発言は少し異例だと思います。80歳の誕生日を迎えられてお話しをされるのであれば、自分が天皇になってからどういうことがおきたかをお話しされるのが普通だと思うのです。でも昭和天皇の時代のことをしゃべられているのです。それは憲法に対する思い入れと、そして平和と民主主義を守らなければいけないというというメッセージを出さなければいけないと思われてお話しをされたと思うのです。この「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作った」と12月23日に天皇が言われたことをご存じ方は手を挙げてください。過半数以下ですね。なぜでしょう。NHKのニュース資料というものを見ると、「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り」という部分は省いています。一番大切なところを省いているのです。なぜでしょう。安倍政権で平和と民主主義が脅かされていることをNHKは気付いているのです。それを言えば安倍首相が文句を言う、それに気がついているんです。

5)報道の自由世界ランキング─日本は?
 「国境なき記者団」というものがあります。イランであるとかイラクであるとかロシアであるとかで記者が虐待された、逮捕された、そのような時に抗議をする機関です。アメリカ、フランス、ユネスコなどが基金を出している、どちらかというと西側の機関です。ここが各国の報道の自由のランキングを発表しています。日本はランキング何番だと思いますか。最近7カ国先進国首脳会議があって、世界の民主主義国家の代表格の1カ国として日本は行きました。経済大国として世界の3番目です。では報道の自由のランキングは何番目でしょう。59番目です。原発報道や秘密保護法などの問題があるからです。ちなみに57番目は韓国です。そのことを「朝まで生テレビ」で私が言ったら、「韓国より悪いはずがないではないですか」と総攻撃を受けました。だけど国際的に見ると、今日本は大変に低い国になっているのです。

 同じように聞いて見ます。マーサー・メルボルンというところが、年金の状況がどのようになっているかについてのランキングを発表しています。このランキングで日本はどこに入っているでしょうか。上から、デンマーク、オランダ、オーストラリア、スイス、スエーデン、カナダ、シンガポール、チリ、イギリス、ドイツ、アメリカ、ポーランド、フランス、ブラジル、メキシコ、中国、韓国…、日本はどこにいるでしょう。「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数2013年」では日本は中国の後ろです。それは十分性、年金が労働者と比べて十分であるか持続性があるかどうかを見ているのですが、日本の場合には持続性が満点に対して28.9です。ここに出ている国でほとんど一番下です。そのような状況になってきて当然のことながら「消費税は全額社会保障に使います」と言っていますが、それには全く手をつけずに法人税を下げようとする、この政権というのは一体何なのでしょうか。


一握りの人たちの利益のために働く政治家たち

 私は時間があると映画をよく見に行くのです。「3丁目の夕日」を見ました。「3丁目の夕日」はある意味日本の理想だと思います。貧しくともお互いに助け合って、そしてそれは単に隣同士の人間の付き合いではなくて、国全体もそうだったと思います。みんなから集めた郵便貯金は、そんなに利益を生み出さない、その代わりに民間の銀行で借りられないような人たちに融資をすることによって、底辺にいる人々が少しでもいい生活をするようにしようということで、農村にお金が流れました。地方にお金が流れました。労働者の住宅に流れました。助け合っていったのです。多分それは国全体としても正しい選択だったと思います。多くの国民が平均的に豊かになれば、それを消費の方に回す、「三種の神器」ということが言われましたが、国民ひとり一人が消費を多くすれば全体の繁栄があるということでやってきたのだと思います。消費税の動きは全く逆です。そして法人税を下げたって利潤は海外に投資する、海外の企業を買う、あるいは積み立てる。必ずしも国内で回らないのです。今、日本の政治家は広い意味で国全体を考えられないで、一握りの人たちの利益のために動く、そういう社会になってしまったのです。その一番代表的なものが原発だと思います。原発であれ、TPPであれ、集団的自衛権であれ、今日本の社会は本当に民主主義国家であるのかということが問われるような時期だと思います。
 私は『小説外務省』という本を書いたときに、前文でこう書きました。「映画「少年H」の宣伝文句は、軍事統制も厳しさを増し、おかしいことをおかしいと自由に発言しずらい社会なっていく中、父親の盛夫は周囲に翻弄されることなく「おかしい。なんで?」と聞くHにしっかりと現実を見ることを教え育てる」と書きました。それは今の日本の社会がおかしいことをおかしいと自由に発言しずらい社会になっているから、この宣伝文句が出てきたのだと思います。映画監督の宮崎さんは引退宣言をしました。「世界がギシギシ音を立てて変化しているのに、今までと同じファンタジーを作り続けるには無理がある」ということを言いました。今日本社会はおかしいことをかしいと言いづらい国になったと思いますし、民主主義というものがなくなりつつある国になってきたのではないかと思います。


日本の民主主義は自分で勝ち取ったものではない─智恵子抄より
 お手元の資料に、高村光太郎著智恵子抄を書いています。
「日本はすつかり変りました。あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた あの傍若無人のがさつな階級がとにかく存在しないことになりました。
・すつかり変つたといつても、それは他力による変革で(日本の再教育と人はいひます。) 内からの爆発であなたのやうに、あんないきいきした新しい世界を命にかけてしんから望んだ さういふ自力で得たのでないことが あなたの前では恥しい。
・あなたこそまことの自由を求めました。 求められない鉄の囲かこひの中にゐて、あなたがあんなに求めたものは、 結局あなたを此世の意識の外に逐おひあなたの頭をこはしました。あなたの苦しみを今こそ思ふ。
・日本の形は変りましたが、あの苦しみを持たないわれわれの変革をあなたに報告するのはつらいことです」。日本は戦後民主主義国家になりました。戦後に生まれた憲法ですから、多くの素晴らしい憲法が「日本国憲法」の中に反映された。だから手に入れた民主主義は最も素晴らしいものであった。しかし、自分で取ったものではない。自分で勝ち取ったものではない。だから今失うことに対して何の危機感も持っていない。


「騙される」ということ─伊丹万作氏の言葉より

同じように、1921年、映画監督の伊丹万作さんが戦争責任の問題というものを書きました。
・多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。おれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。
・日本人全体が互にだましたりだまされたりしていた。(略)
・新聞報道の愚劣さや、町会、隣組、警防団、婦人会といつたような民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたか。
・専横と圧制を支配者に許した国民の奴隷根性とも密接に繋がる。
・我々は、いま政治的には一応解放された。しかしいままで、奴隷状態を存続せしめた責任を軍や警察や官僚にのみ負担させて、彼らの跳梁を許した自分たちの罪を真剣に反省しなかつたならば、日本の国民というものは永久に救われるときはないであろう。
・ 「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。」

 

 今まさに、我々は騙される局面に来ている。一つ一つ見れば騙していることが明々白々、安倍首相がテレビ出て紙芝居をやった。それが嘘だと言うことはちょっと考えれば誰でもわかる。どうしておかしいという声が出ないのでしょう。大橋巨泉さんがしゃべったけれども、しゃべった場所は「週刊現代」だから…、大橋巨泉さんの週刊現代を読んだ方手を挙げてください。おいでにならない。こんな重要なことをしゃべってくれている。そしてみんな騙されるふりをしている。何でこんなにひどい国になったのでしょう。私への批判をする人は「孫崎さんは所詮外務省で偉くならなかった人だから、好きなことを言っている」ということを言っているのですけれど、私は一応局長にはなったのです。霞ヶ関の局長というのはそんなに悪くないです。だから、比較的日本の社会の上の方の人たちは政治家であるとか経済界であるとか官僚であるとかだけど、重要な場所に行けば行くほど何でみんな間違った判断をしているのでしょうか。彼らは東大を出ている。高校時代は一番勉強をしていた人間なんです。わかるんですよ。わかる人間が何で違ったことを言い始めているのでしょうか。今、私は一つ一つ細かいことはどうでもいいと思うのです。どう生きていくかということが、今まで以上に問われて行くんじゃないでしょうか。今「半沢直樹」が売れています。何で売れるんでしょう。おかしいことがおこっているからですよ。みんな共感する。で、忠臣蔵のように倍返しが出来ればいいと思う。だけど倍返しなんて出来るわけがないのです。相手の力は圧倒的に強いのです。どこかで潰されるかもしれない。そのようなときにどう生きていくのか、自分の中でどう説明していくのか、それが問われているのではないでしょうか。
 私は『小説外務省』というものを書きましたが、それは、そのことが言いたかったからなのです。いろいろなところで間違ったことが行われている。それを間違いだと言ったらどうなるのだろう。そんなに明るい未来があるわけじゃない。倍返しが出来るわけじゃない。今、一番厳しいのは原発関係だと思います。私は原発再稼働反対で運動なり、発言してきた人たちが厳しい選択をさせられている人を何人も知っています。読売新聞の渡辺さんが巨人軍のGMに「破壊してやる」と言ったと言われていますが。それと同じこと、発言をすることで、破壊を求められるようなこともある。一番今厳しい最前線で頑張っている人に、新潟県の知事がいます。彼があるインタビューに応えて、「もし僕が自殺なんてことになったら絶対に違うので、調べてください」と言った。そんな国になっているのです、今日本は。その時多くの人はそれに対して発言をしない。


TPPは手権を揺るがす

 私はTPPについて去年の3月にテレビ朝日のモーニングバード「そもそも綜研」で発言しました。「守るべきものは守るといっているけれども、多分守られない。それよりももっと重要なのは国の主権というものがなくなっていく」と言ったのです。それはISP条項なのです。投資家が国を訴えるシステムです。アメリカの企業が日本に投資をする。そしてこれくらいの利益が上がるだろうと推定します。ところが日本の法律や裁判でその機会が利用できなかったら損害賠償を求めるというシステムなのです。去年の5月ごろ、私は外交安全保障の件で参議院の予算員会に呼ばれて、今一番大きな問題はTPPと集団的自衛権の問題だ。これが非常に重要だと思う。特にTPPは国家の主権がなくなっていく。具体的な例を見ると次のようなものがある。メキシコとカナダとアメリカが北米自由貿易圏をつくっている。そこでアメリカの企業がメキシコに産業廃棄物の施設をつくる許可を受けた。そこで有害物資の汚染が出て、その地域の住民に病人が出てきた。それで地域の自治体が有害物質があるからと営業を止めました。この処置によってメキシコ政府は7000万ドルの損害賠償をその企業に取られたのです。



日本がテロ攻撃の対象になる「集団的自衛権」

 集団的自衛権について、今安倍首相が言っているのは全く違っていると言いました。集団的自衛権は日本の国土の防衛とは関係がない。多くの人はこれが尖閣問題だと思っているけれども、尖閣ではない。安保条約は「日本の管轄地に対して攻撃があった時は日米双方の自分への攻撃と見なして憲法の範囲内で行動を取る」書いてあります。全く関係がないのです。基本は米国の軍隊のために、米国の戦略のために自衛隊が戦うのです。そしてそれは実は2005年「2プラス2」という文書の中で国際的安全保障の改善のために日本は必要な措置をとる。自衛隊が出ていくように必要な措置をとる」という約束をしているのです。米国に言われてやっているのです。ごく最近、公明党の態度が明確でないというのでキャンベルが圧力をかけに来ました。アメリカのために我々は自衛隊を海外に出さなければいけないのか。安倍首相はこれでもって日本国民の安全に添うために、できるだけのことをする事が我々の役目であろうと言っている。全く逆ですよ。イラク戦争に参加したスペインは1994年に10箇所もテロ爆発がおこって190人以上が死に、2000人以上が負傷しました。我々が集団的自衛権で戦えば、殺された人たちがいる、殺されたグループがいる、当然に反撃をする。反撃の対象は日本国内に来るかもしれない。海外にいる日本人かもしれない。しかし、今よりも確実に不安定になる。それを日本国民の安全性のためにやると言うのは、本当に嘘と詭弁だと思います。そしてそれを実施するために意識的に煽っているのが尖閣諸島なのです。


尖閣諸島問題の嘘を見抜こう

 尖閣諸島の問題は日中の間に棚上げの合意があるのです。外務省の栗山という元次官が、1990年ぐらいの元次官であり、1972年の日中交渉の時に担当していた条約課長が「僕は尖閣の暗黙の合意はあったと思っています」と言っている。責任者が言っているのです。何でそれがないのですか。それだけではないのです。実は2010年の漁業の問題、衝突事故をめぐって、日中の間には日中漁業協定というものがあります。河野太郎さんがブログの中で書いています。それは相手が違反をしたときに「その地域から出て行きなさい」と警告をし、問題があったら協議をするというシステムになっているのです。そして、ほとんどの人が知らない1997年に2回目の日中漁業協定があるときに「日本の国内法を使わない」ということを外務大臣が書簡で出しているのです。日本の漁業法というのは日本の領域に違反したら、違反者をつかまえるとなっていますが、それはしないということを約束しているのです。少なくともそれが正しい判断か、正しくない判断かは議論があるでしょう。しかし、日中漁業協定があって違反した船は出て行きなさいと言い、捕まえるということは基本的にしないという約束があったのだということをご存じ方は手を挙げてみて下さい。いないのです。ほとんどの問題で我々は詭弁でもってやらされていますが、その一番大きいのが今の安倍政権です。だから何よりもまず、事実を見る、それが重要だと思います。


尖閣諸島にアメリカは出てこない
 この間オバマ大統領が来ました。オバマさんは安倍さんに尖閣問題について4つのことをしゃべっています。一つは安保条約の対象になる。他に3つあるのです、そのことをご存じの方手を挙げて下さい。それは報道されていません。二つ目は、領有権問題ではアメリカは日本側の立場も中国側の立場も取らない。尖閣問題ではどちらの立場も取らないといっているのです。3つ目は、「私(オバマ)は安倍首相に強調したことは平和的に解決をしろ、紛争にするな、お互いに攻撃し合うことを止めなさい。これを強調した」と言ったのです。一番強調したのはそれなのです。本来ならこれが見出しになるのです。でも何も報道しない。もう一つ、紛争になったらアメリカが必ず出るというデッドライン、これを超えたらアメリカが出るというものは何もありません。尖閣諸島でアメリカが出てくることはありません。そして日本のマスコミは日中戦争では必ず日本が勝つということを言っていますが、こんなことはあり得ません。簡単なことはミサイルと飛ばしてきたら、原爆を使うということまではなくても戦争になったらミサイルは来るのです。私はイラン・イラク戦争の時にバクダッドにいて、月に一度は必ず飛んで来ました。どうするのですか。我々は戦争になって勝てるという状況にはあり得ないのならば、なぜ、「尖閣諸島を日本が持っていていいですよ」という棚上げの合意を「良い」と国民が言わないのですか、と思っています。

 

レジュメより

領土紛争にどう対応すべきか

マルティン・ニーメラーの言葉       (原型は1946年の演説)
 ●「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。  私は共産主義者でなかったから。 
 ● 社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。 私は社会民主主義ではなかったから。
 ● 彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。 私は労働組合員ではなかったから。
 ● 彼らがユダヤ人たちを連れて行ったとき、私は声をあげなかった。私はユダヤ人などではなかったから。
 ● そして、彼らが私を攻撃したとき私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。



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