安倍改憲策動の現在

 

    

講師  大内 要三さん


1.安倍首相「2020年までに改憲」発言

 

安倍首相は憲法記念日の 5 月 3 日、ふたつの媒体で、東京オリンピック開催の 2020 年までに憲法を改正したいとの意向を表明しました。
ひとつは「読売新聞」です。4 月 26 日に約 40 分にわたって行われた単独インタビューを、5 月 3 日付の誌面に掲載しました。1 面トップ記事のリードは以下のとおりです。
「安倍首相(自民党総裁)は、3 日で施行 70 周年を迎える憲法をテーマに読売新聞のインタビューに応じ、党総裁として憲法改正を実現し、2020 年の施行を目指す方針を表明した。改正項目については、戦争放棄などを定めた現行の9条1項、2項を維持した上で、憲法に規定がない自衛隊に関する条文を追加させることを最優先させる意向を示した。自民党で具体的な改正案の検討を急ぐ考えも明らかにした。」
首相官邸で行われたインタビューであることから、肩書きも「首相」が先でカッコして「自民党総裁」になっています。
同じインタビューでは、9 条以外に高等教育までの教育無償化と、緊急事態条項についても言及しています。
同日の「読売新聞」は社説「自公維で 3 年後の改正目指せ 『本丸』に着手するなら戦略的に」を掲げ、御用新聞としての姿勢を明確にしました。
もうひとつの安倍改憲発言は、同じ 5 月 3 日に東京の砂防会館で開催された「第 19 回公開憲法フォーラム」の冒頭に上映された、読売インタビューとほぼ同内容のビデオメッセージです。会場には公明・維新・民進各党の国会議員も出席しました。また全国 40 箇所の同様なフォーラムにもインターネットで中継されました。主催者は民間憲法臨調と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」ですが、前者は改憲をめざす知識人によるシンクタンク、後者は国民運動団体です。後者の共同代表は櫻井よしこ(ジャーナリスト、赤坂氷川神社境内に借地した豪邸に居住)、田久保忠衛(国際政治学者、日本会議会長)、三好達(元最高裁長官、日本会議名誉会長)の 3 氏です。
この安倍改憲発言について 5 月 8 日の衆議院予算委員会で民進党の長妻昭議員が質問したのに対して、首相は「メッセージは総裁、国会では首相」と使い分け、「詳しいことは読売新聞に書いてある」と答えず、浜田靖一委員長(自民)から「不適切」と注意を受けました。
安倍首相は 9 条加憲を言っても「どのように記述するか議論を」と条文化については語っていないので、どこまで深い考えがあるのか定かでありませんが、9 条 3 項加憲論の発案者、リライト人を推定することは可能です。
発案者は安倍ブレーンで日本政策研究センターの伊藤哲夫氏でしょう。同センター発行『明日への選択』2016 年 9 月号に論文「『三分の二』獲得後の改憲戦略」を書いています。また 5 月 2 日には同センターから『これがわれらの憲法改正提案だ 護憲派よ、それでも憲法改正に反対か?』と題する本を岡田邦宏・小坂実両氏との共著で出版、ここで「自衛隊の存在を憲法に明記しよう」と主張しています。
またメッセージの文章を練り上げたのはナベツネこと渡辺恒雄・讀賣新聞主筆らでしょう。
インタビュー前に首相と会談、要するにリハーサルをしています。


2.安倍改憲発言の問題性

    

現首相が時と内容を明示して改憲意向を表明したのは初めてのことで、明らかに憲法 99 条違反です。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあります。だから首相と自民党総裁を使い分けたのですが、分けられるはずがありません。
また改憲発議は国会の権限ですから、三権分立の原則からいえば行政の長が憲法改正を言い出すのは憲法 96 条違反で越権です。「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」とあります。
さらにいまも生きているはずの自民党改憲案と矛盾します。党内での根回しなしの改憲発言は党首独裁を示すと思います。
2012 年 4 月 27 日発表の自民党「日本国憲法改正草案」は 9 条改正をどのように書いていたか。同草案は日本国憲法第 2 章のタイトル「戦争の放棄」を「安全保障」とし、9 条 1 項の「戦争放棄」は維持するものの 9 条 2 項の「戦力不保持」「交戦権否認」を抹殺、「9 条の 2」に「国防軍保持」と「国防軍審判所」を明記していました。今回の安倍改憲案では 9 条 1 項、2 項はそのまま残して、自衛隊を国軍にしなくて良いことになります。
要するに今回の安倍改憲発言は、国軍創設から自衛隊認知にハードルを下げての改憲、という癖球です。これならば自公民の協力態勢が比較的容易にできるし、反対する国民もそう多くはない、なにより「自衛隊違憲」の声を抹殺できる、と踏んだのでしょう。
それにしても安倍改憲論には一貫性がありません。2007 年には国民投票法を成立させ 10 年改憲をめざしましたが、参院選で惨敗して挫折、首相を退陣しました。13 年には憲法の変え方を変える 96 条改憲を言い出しましたが、裏口入学と批判されこれも挫折しました。そして当面は改憲が困難なので、14 年に解釈改憲の閣議決定をし、翌年戦争法で自衛隊の海外派兵を限定的ながら可能にして米国の要求に応えました。今回の新提案は、ともかくまず改憲の実績をつくりたい、国民が改憲慣れすれば次もある、という目論見です。
それにしても 2020 年の東京オリンピックを「日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけ」とする、要するに国威発揚につかう政治利用は、オリンピック憲章に反するのではないでしょうか。同憲章 50 条は「政治的、宗教的、人種的プロパガンダ」を禁止しています。1936 年ベルリン・オリンピック、1940 年幻の東京オリンピックと同じです。
また 9 条以外のテーマでは、高等教育無償化は明らかに憲法を改正せずとも可能です。9 条単独の改憲では目立ちすぎるし、他党を取り込むにも他のテーマと抱き合わせにするのが良いのでしょう。

3. 9条3項加憲の意味

これまでも政府統一見解では自衛隊は合憲でした。自衛隊法と防衛庁設置法が公布されたのは 1954 年 6 月 9 日ですが、その半年後の 12 月 22 日、衆議院予算委員会で鳩山内閣統一見解として大村清一防衛庁長官が次のように答弁しました。
「憲法は戦争を放棄したが、自衛のための抗争は放棄していない。……自国に対して武力攻撃が加えられた場合に、国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない。」「自衛隊のような自衛のための任務を有し、かつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは、何ら憲法に違反するものではない。」
自衛隊は国を守るための必要最小限の「実力」だから 9 条 2 項の「戦力」にあたらず、合憲だ、という論理です。以後、自衛隊は「専守防衛」でやってきました。建前上は現在でもそうで、16 年版『防衛白書』では「安全保障・防衛政策の基本」を次のように書いています。
「これまでわが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備してきている。」
実際には 2014 年 7 月 1 日の閣議決定で限定的な集団的自衛権行使を認め、翌年に戦争法を制定しましたから、制限的海外派兵も合憲とされています。
「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理にもとづく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。」
「至った」わけですから、ここであきらかに判断が変わったわけです。
憲法 9 条の条文内容に則して 3 項加憲論を見ます。
9 条 1 項の「戦争放棄」は日本国憲法に独自のものではなく、すでに 1928 年のパリ不戦条約、 1945 年の国連憲章で戦争は国際法違反になっていますから、国際常識に反して 9 条 1 項を改正しようという人は誰もいません。
9 条 2 項「戦力不保持」は、すでに自衛隊合憲の政府見解で実際には形骸化しており、国際的にも自衛隊は軍として認知されています。1990 年 10 月 18 日の衆議院本会議で、中山太郎外務大臣は次のように答弁しました。
「自衛隊は……通常の観念で考えられます軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われておりまして、自衛官は軍隊の構成員に該当いたします。」
9 条 2 項の「交戦権否定」はどうか。戦争法で限定的集団的自衛権行使を認め、制限的海外派兵をして駆け付け警護もするわけですから、限りなく形骸化しています。
改憲をしなくても実態としてはここまでできており、かつて米国側からの日本への要求書「アーミテージ・ナイ報告」をまとめたアーミテージ教授さえ、今は日本の改憲は不要と言っている。わざわざ 9 条に 3 項を追加する改憲の必然性は低いはずです。ということは 9 条 3 項加憲提案は単なる現状追認、自衛隊認知にとどまるものではないということです。自衛隊違憲の声を絶滅させるとともに、戦争法廃棄の声も消し去り、集団的自衛権行使の限定を取り払い、海外派兵の制限を取り払う。それが意図されているのだと思います。
安倍 9 条 3 項加憲提案が、条文案を示さず「自民党で具体的な改正案の検討を急ぐ」と丸投げしているのが曲者です。どのような任務・性格を条文に書き込むのか。すでに「防衛計画の大綱」に書かれているような「我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を追求しつつ、世界の平和と安定及び繁栄の確保」とでも書き込めば、「専守防衛」は完全に吹き飛んでしまうでしょう。名称は自衛隊でも軍隊そのものになります。

 

4.出ると負けで後がない安倍首相

この間、安倍政権の実績はどのようなものだったでしょうか。箇条書きで挙げてみます。
・アベノミクスは刀折れ矢尽きた 無理やり国会を通した TPP はどうした
・外交に伸展なし 「北方領土」は 拉致被害者は 韓国少女像は 尖閣問題は 米国以外の近隣国・地域とはすべてトラブルを抱えたままではないのか
宗主国なら民主党オバマでも共和党トランプでもただちに尻尾を振るのか
・戦争法で安全保障環境は好転したか 戦死者を出す危険が増えただけではないか
・原発は 沖縄は
・森友学園・加計学園問題は 友達ファーストの奢りではないのか
ひとつのテーマで追い込まれると次のテーマを提示して目をそちらに引きつけ、マスコミの応援を得て逃げるのが安倍首相の常套手段でした。たくさんある地雷のどれを踏んでも安倍政権が終わってしまって不思議ではない状況ですが、これまではうまく地雷原を抜けてきた。憲法は究極のテーマであって、後はありません。

スケジュールはタイト

しかも「2020 年まで」と言ってしまった。スケジュールはかなりタイトです。確認してみましょう。
17年5月26-27日 タオルミーナ・サミット(イタリア)。共謀法でも加計学園問題でも国会が緊張しているときに、出かけて行っていいのかな、という気もしますね。安倍夫妻が手をつないでタラップを降りるか、というゴシップ的興味もありますが、とにかく健康には十分気をつけられて無理をされないようにと思うばかりです。
17年6月18日 国会会期終了。日曜日ですからじっさいにはこれ以前の 16 日で終わるのが常識的でしょう。積み残しになりそうな重要課題はたくさんあります。会期延長をしたいところでしょうが、
17年7月2日 都議会議員選挙。小池都知事に押され、公明党がそちらに行ってしまった都議会ですから、自民党は苦戦です。党幹部や国会議員はこちらの応援で忙しくなります。
18年9月 自民党総裁選挙です。17 年 3 月の党則改正で総裁任期は「連続 2 期 6 年」から「連続 3 期 9 年」となったので、安倍総裁が 3 選されれば任期は 21 年 9 月までという長期にわたります。いくらなんでもここまでには念願の改憲はできる、という含みがあるのでしょう。しかしこの前に、
18年12月13日 衆議院議員任期満了。いくら引き延ばしても、これまでには総選挙を実施しなければなりません。改憲派がまた国会の 2/3 議席を確保できるかどうかはたいへん危ういところで、だからこそ総選挙までに改憲国会発議までは済ませておきたいと安倍首相は考えているでしょう。また、
19年1月 天皇退位、改元? という大問題があります。元日は皇室行事が多い日ですから、元日改元は分かりやすくても現実にはいかにも無理、という意見もあります。天皇ご本人の意向を確認したうえでのスケジュールなのか、疑問です。
19年7月28日 参議院議員任期満了。ここまで現在の政党地図がそのまま維持される保障は何もありませんね。そして
19年10月 消費税律引き上げ。これまでに日本経済は好転しているでしょうか。
19年4月25日 練馬区議会議員任期満了。というのもありますが、これは国政に影響はないでしょう。そしていよいよ
20年7月24日-8月9日 東京オリンピック です。

 

6.改憲手続きの確認

 

このスケジュールのもとで改憲実現をしようとすれば、国会法や国民投票法で決まっているルールがあります。
まず衆議院 100 人以上、参議院 50 人以上の議員が憲法改正原案を発議します(国会法 68 条の 2)。もちろん自民党内で憲法改正原案の合意ができ、改憲派各党間での合意ができていないと原案作成自体が不可能ですが、まとまれば人数については必ず確保できるでしょう。
次に衆参各憲法審査会が改憲原案を審査します(国会法 102 条の 6)。審査会の過半数賛成で憲法改正原案が成立します。現在、衆院憲法審査会 50 人のうち改憲勢力(自民・公明・維新)は 37 人です。参院憲法審査会では改憲勢力は 45 人のうち 32 人。強引に押し切れば過半数賛成を得られますが、現状では審査会は少数会派も対等に扱い、ていねいな論議をしています。これは自民党憲法改正推進本部がそのような無理をしない対応をしているからで、とても憲法改正原案の審査をする状況にはありません。しかし安倍加憲法提案メッセージでは「自由民主党は ……憲法審査会における『具体的な議論』をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたい」と意気込んでいます。
改憲原案が審査会を通って改憲案となり国会に提出され、審議がなされた後、衆参両院本会議で 2/3 の多数賛成で改憲発議が行われます(憲法 96 条)。数の上では改憲派の自民・公明・維新が 2/3 多数を確保していても、国会審議は当然紛糾しますし、院外の市民運動は各議員の地元で、こんなものに賛成したら次の選挙で当選できない、という状況をつくるでしょう。
それでも改憲案が国会を通り改憲発議となりますと、最終的に決めるのは国民ですから、国民投票が行われます。
国民への改憲案周知は国民投票広報協議会が行います(国民投票法 11 条以下)。同協議会は衆参各 10 人の国会議員で構成されますが、議員数で各会派に割り当てます。議員総数の 1 割以下の議員数しか持たない会派は連合して 1 名枠を確保するのでしょうか。この広報評議会が国民投票 30 日前までに公報を作成します。ここには憲法改正案、新旧対照表、賛成意見、反対意見などが掲載されますが、国民が読んで判断する期間は約 1 か月だということです。
国民投票は国会の改憲発議から 60 日以後 180 日以内に行われます(国民投票法 2 条)。この間、国民投票運動つまり改憲反対・賛成の運動が自由にできるかというと、公務員・教育者などに制限があり、罰則もあります。
国民投票の結果が開票されると、有効投票総数の過半数賛成で改憲の成否が決まります。どんなに投票率が低くても。
というように、基本的には日本国憲法は改正のしにくい憲法です。だからこそ 70 年間にわたっていちども改正されなかった、改憲派は何度も挫折してきたわけです。しかし近年の国会では自公合意のもとに次々と悪法を通してきた実績がありますから、油断はできません。

 

7.国会で改憲多数は可能か

 

では、各党の態度はどうでしょうか。
維新は 16 年 3 月に「日本維新の会 憲法改正原案」で憲法改正を提案しています。①幼児期から高等教育にいたる学校教育の無償化 ②自治体は基礎自治体及び道洲とする ③法令の合憲性を判断する憲法裁判所の設立 の 3 点で、条文案も示していますが、9 条改正については積極的ではありません。安倍提案は高等教育無償化を言うことで維新を取り込むつもりなのでしょう。
公明の憲法政策はもともと「加憲」が基本です。戦争法に賛成したくらいですから、自衛隊認知の 9 条 3 項加憲に反対する理由がありません。国政選挙では自民との選挙協力なしの当選は不可能、これは自民の側も同じです。5 月 3 日の安倍改憲発言に対してマスコミからコメントを求められた北側一雄副代表は「理解できる」と答えました。
民進はが基本姿勢で、このスタンスから戦争法に対して、また参院選でも市民・野党共闘に参加してきました。もともと寄り合い所帯としての党は危うい統一を保ってきましたが、いまこの基本姿勢をめぐって党内に深刻な対立が生じています。
細野豪志前代表代行は今年 4 月号の『中央公論』誌(読売新聞系)に 3 項目の「改憲私案」を発表しました。9 条改憲はこの 3 項目にはありませんが、同論文の中では「将来的には、自衛隊を憲法に位置付けることを検討すべき」と主張しています。彼は意見の違いから代表代行を辞任しました。前原誠司元代表は 16 年の代表選で、憲法に自衛隊の位置づけがないことを問題視しています。少し古い話ですが枝野幸男議員は 13 年 10 月号『文藝春秋』に「憲法九条 私ならこう変える 改憲私案発表」と題する論文を発表しています。軍事力の保有、集団的自衛権の行使、国連のもとでの多国籍軍への参加を、と明快です。
蓮舫代表は都議選の結果があまりにひどければ辞任せざるを得なくなるでしょうか。安倍政権は民進党の分裂を心から願っているに違いありません。市民・野党共闘は民進党が安心して「安倍政権のもとでの改憲反対」の基本姿勢を維持していけるよう、世論の安定多数である必要があると思います。
そして自民。まず党内をまとめないと改憲原案もできないですね。小選挙区制のもとで党公認を得るためには安倍首相に反逆はできないため、派閥再編の動きも「安倍後」を想定して、安倍加憲に反対の動きは大きくはならないようです。国軍創設から自衛隊認知にハードルを下げていいのか、という党内からの反乱は、9 条 3 項加憲論がそもそも日本会議発の「大迂回戦術」であるために、難しいようです。安倍総裁はまず憲法改正推進本部を刷新することから始めるのではないでしょうか。
いずれにしても、今国会はあまりにも多くの重大課題をかかえたまま終盤になだれこみます。
ここをどう乗り切るか、都議選がどうなるかで状況は変わってくるでしょう。


8.対抗軸をつくる

 

安倍首相も、改憲が容易なことではないと覚悟しているはずです。「国民的な議論が盛り上がっていかなければこの目的は達成できない」と言っています。
ただ、ハードルを下げた(ように見える)ことで、世論は安倍改憲反対多数ではないという現状を直視する必要があります。とりあえず目くらましは成功しているのです。5 月中旬、つまり安倍首相の 9 条 3 項加憲提案がなされた後の各社世論調査で(それぞれ調査方法は少しずつ違いますが)、安倍改憲賛成は、朝日 41 %、讀賣 53 %、産経 55.5 %、NHK32 %です。
改憲阻止の対抗軸をつくるいちばんの肝は、現与党支持者や自衛隊委員・家族まで含む市民・野党共闘を前進させ憲法論議を活発にさせて、個々の選挙に勝利していくことです。そのうえでは各年代に合った宣伝方法が必要でしょう。
また改憲阻止層の理論武装も必要です。いちばん大事なのは「自衛隊をどうする」という議論ですが、安倍首相が認知させようとしている自衛隊がどういう実態であるかの認識が必要です。
ひとつ。戦争法が成立したことによって、自衛隊は専守防衛は名ばかりで海外派兵をすることが可能になりました。駆け付け警護で戦闘行為もします。
ふたつ。災害派遣は自衛隊の主要任務ではありません。主要任務はあくまでも国土防衛と治安維持であって、災害対処は「従たる任務」です。そして米国との「防衛協力ガイドライン」によって大規模災害対処も自衛隊と米軍の協議の上で行うことになっており、東北でも熊本でも日米共同作戦司令部の災害対処版が稼働しました。このシステムは実戦でも使えるものであり、災害派遣が有事対処の演習となったのです。日本は自然災害の多い国ですから災害対処の部隊は必要でしょうが、それが軍隊組織として重武装している必要はまったくないと思います。
みっつ。先ほど申し上げたように自衛隊の主要任務は国土防衛と治安維持です。60 年、70 年の安保闘争で、自衛隊は「暴徒鎮圧」のため治安出動の準備をしていました。有事あるいは有事が想定されるとき、戦争反対の声を武力で弾圧するのは自衛隊の役目です。特定秘密保護法が制定され、共謀法が成立しようとしているとき、治安出動以前から日常的に警察とともに自衛隊が一般市民を監視する態勢が強化されるのではないでしょうか。
よっつ。では敵が攻めてきたとき自衛隊は国民を守ってくれるのか。国民保護法の規定では、有事の住民保護は自治体の役目です。自衛隊は敵と戦うのに忙しくて個々の住民を助ける余裕はありません。
このような自衛隊でいいのかという疑問を封印するような、あるいは限定的集団的自衛権行使、制限的海外派遣を全面化するような、そういう 9 条 3 項加憲をさせていいのか。いいはずがありません。メディア報道に流されず、9 条の会を大きく強くしていきましょう。
                            (2017 年 5 月 25 日 ねりま 9 条の会拡大世話人会での報告に加筆)


 

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