18号 2008年8月発行

〈1面〉

「まともな生活  まともな労働、支える平和  

                    小川 政亮(社会事業大学名誉教授)

 今年また、8月6、9両日の原爆記念日、そして8・15平和記念日が巡ってくる。
 日本は1931年9月18日、中国東北部を侵略、以来、戦域を拡大し、太平洋戦争へと発展し、最後は一九四五年3・10東京大空襲を始めとする各地の都市攻撃、そして前記の広島・長崎への原爆攻撃を受けた。この打続く戦争の犠牲者はアジア・太平洋各国で2000万人、日本人310万人とも伝えられる。
 こういう内外多数の犠牲者を出したこの戦争が天皇絶対の政府によってもたらされたことへの痛切な反省から、主権在民を冒頭に宣言し、平和と自由の中で生活する権利があることをうたった日本国憲法が1946年11月3日成立し、1947年5月3日施行される。
 特に平和について、憲法前文で、われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する という「平和的生存権」をうたい、2008年名古屋高裁判決は、これについて「具体的権利」を認めたのである。そして本文第九条で、〔1)戦争の放棄(2)戦力不保持(3)国の交戦権放棄を明言しているのである。
 憲法の特色はこれに止まらない。2つあげよう。生存権(むしろ生存、生活の権利)の25条、今一つは労働の権利、そして両者を実現するための勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権をうたったのだ。憲法28条である。 憲法25条は「 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2、 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」 とする。1950年の朝鮮戦争を機に、アメリカによって、憲法九条に違反してつくられた再軍備による社会保障圧迫に対しての人民の団結をバックに闘われた朝日訴訟の一審勝訴判決(1960年10月19日、東京地裁)は、「最低限度の水準は決して予算の有無によって決せられるべきではない」とした。しかし、今次2008・6・26東京地裁敗訴判決はあまりにも行政当局べったりである。勿論控訴した。今後全国11の地裁が控えている。
 ここには労働権を無視した、労働者をモノ扱いする、いわゆる労働者派遣法を始めとする今の労働法がある。最低賃金法をまともなものとすることを始め、真に労働者の人間らしい労働を守る法律をつくらなければならない。  そして、生活保護法を始めとする社会保障法、そして労働法をまともなものにするものは、何といっても勤労者人民の団結権を踏まえた力である。そしてまた平和である。
 今や、前田朗氏によれば、日本を含む27の国々と人々が、『軍隊のない国家』(2008年4月 日本評論社)を持っている。それにふさわしい国家になろうではないか。(ねりま九条の会呼びかけ人)

〈2面3面〉

          私にとっての日本国憲法

日本国憲法と私   伊藤文子(大泉学園在住)

 2006年10月、自覚症状のないまま入退院し、安静治療の生活となった私に、地域や全国から伝わる“九条の会”の誕生、活動は大きな感動であり励まされました。
 15年戦争の時代に文字通り軍国少女として生い立ち、17歳で初等科訓導として教壇に立った私は、学童疎開で茨城、秋田へ児童を引率しました。しかし、戦後、子どもたちを親許に帰して一安心というわけではなかったのです。出征した父親は帰還せず、母親には満足な職もなく、空腹で目ばかり大きな子どもたちは疎開中と変わりませんでした。餓死した姉妹の哀れさに、20歳になったばかりの教師の私は、あまりの非力に号泣いたしました。
 1960(昭和35)年、大泉学園町に転居。2人の子どもの幼稚園教育で“教育基本法の精神に則って、子どもたちが健やかに成長しますように”と訴え、愛育会会長に就任しましたが、以来、あの戦争の惨禍と犠牲の代償として得ることのできた平和憲法、児童憲章は、人類の宝として、日本国内のみならず、世界に発信したいと願い運動を続けました。
 大泉小学校で同じPTAの会長であった家永三郎教授が、「教科書検定は違憲違法である」と国を提訴しました。直ちに支援に立ち上がった私たちは、多くの人々に支えられ、1970年7月17日、杉本判決は「教育権は国民にあり」と宣言しました。主権者としての喜びと共に、この判決の現実化への希望を抱いて歩み続け、PTAや高校増設、区立図書館建設への住民参加など、また、社会教育法の精神に則って30年間、国民の教育権へ目標を持って母親たちは学級を開催、記録を残しました。
 1966年に革新都政、1973年区長準公選に力を集め、「憲法を暮らしに生かす区政」が実現、運動の10年、20年の記念誌にも連帯のメッセージが寄せられました。区が刊行した「平和への架け橋」上巻に寄稿した経緯もあってか、近隣3小学校の6年生に平和への願いを語ることができました。
 九条の会に道を拓き、街々に灯となり、根をおろし柱となって歩む人々に、深く敬意と感謝を捧げます。

児童養護施設から平和を願う      太田 雄三(錦華学院)       

 今年も私たち福祉保育労城北支部では、原水爆禁止世界大会へ2名を派遣します。支部では、平和を願う思いは大変強く、「平和のつどい」の開催や小さな学習会を、年間を通して取り組んで、います。
 私の職場には、多くの子どもたちが生活をしています。一人ひとりはとても大切な命です。近年児童養護施設には、親等からの虐待を受けて施設に入所する子どもが急増しているなか、どの子にも十分な手厚いケアと生活環境が求められます。しかし施設の現実は、子ども6人に対し職員の配置は1人と大変厳しい状況となっています。戦争で傷つくのはお年寄りや小さな子どもたち。二度と同じ誤りを繰り返していけない。そのためには、私たち大人は命の大切さを十分に認識しなくてはなりません。そして、子どもたちやお年寄りや障害を持った人たちに対する社会保障の拡充が今、必要となっています。格差社会と言われる現在の中で、子どもへの格差も広がっています。日本国憲法14条では国民の平等について、25条では公的責任について、そして9条では戦争放棄を掲げています。
 施設で生活をする子どもたちの命を守るため、そして、私たちの生活を守るため平和を願う取り組みは、職員が一丸となってこれからも続いていきます。

「日本の自衛隊は、すでに世界有数の軍隊。自国防衛のために憲法改正が必要だという議論は成り立たない。逆に、日本は戦後9条によって同盟国の戦争の道連れから守られてきた。」
(南山大学助教授 マイケル・シーゲル氏 オーストラリア人)

 「貧困と若者」   松田 俊作 (大学1年生)

 最近はもうテレビなどでも、ワーキングプアーという単語は、聞き飽きるほど耳にしてきているように思う。僕はいま大学の一年生だが、高校や大学でもこのような話題を授業で取り上げた事は少なからずあった。ではこれほど注目を集めて声高に叫ばれているのだから、少なくとも解決の何らかの手段はとられるだろうか、というとそうでもないように思う。なにしろ企業は安い人材が欲しいだけなのだから、アルバイトやパートを中心にこれからも雇用形態を変える気はないだろう。少数の正社員だけで後はバイトなんていうのは、大抵の店でやっていることだ。利益を上げるために経営方法を考えて実行するといった捉え方は、資本主義として間違ってはいないだろうが、そこに貧困格差を生じさせるようなものであればしっかりと考え直してほしいものである。
 この問題は、何もマクドナルドなどでの店長問題などを取り上げなくても、身近に感じないだろうか。
 こういった変化はここ十数年で如実になったと思う。
個人商店は地元の商店街でも減っているし、コンビニの店員などは数年前にはもっといたはずだ。最近は呼ばないとレジに店員なんか出てこない。こういった変化に、これから対面しなければいけないのはもちろん我々若者世代なのだろう。
 しかしそんな社会に一番なじんでしまうのも若者だろう。オリジン弁当が母の味になろうが、ネット難民と言われようが、ニートだろうが、その世代として多くの人が同じことをしていればそういうものなのだと受け入れる人もいるはずなのである。だが企業の業績次第でそこまで振り回されるのはおかしい、と若者が中心に言い続けなければ、変わるものも変わらないかもしれない。
 日本人だけの問題ではないだろう。違法就労の外国人労働者がいなければ成り立たない店だって日本にはあるし、そういった外国人もそうでもしなければ国の家族が食べていけないのだろう。豊かさを求めたからこそ、我々は今世界でも有数の裕福な国民でいられるが、行き過ぎた資本主義も見直されるべきではないだろうか。                                           (上石神井在住)  

『生きさせろ』チーム     中島 大地 (高校1年) 
        

  自由の森学園には『森の時間』という科目が有ります。他の学校の総合学習に当たるものです。いろんなことをやるのですが、その中でもひときわ記憶に残ったのが『生きさせろ!』チームのことです。昨年度、中学3年生のとき、『生きさせろ』チームで、現代日本の貧困問題について学びました。もやいの湯浅誠さんや、雨宮処凛さん、実際に路上生活を経験した方に出会い、はなしを聞かせてもらいました。
 貧困問題というのは昔からずっとある問題です。今でも無くなっていません。だけど、いまの日本は豊かだから貧困という言葉とは関係のないところにあるのだろうと、なんとなく思っていました。それにいくら、年収200万円以下の人が1000万人を越えた、といわれても想像のつかない数字です。分かっても、ぴんとこないのです。だけど、いまの日本に、貧しさゆえに餓死する人がいると聞いたときは衝撃でした。貧困が人の命を奪う。このからくりをつくり出しているのが政府や企業(日経連)であるというのは気にかかります。。正社員は過労死寸前、フリーターはホームレス寸前、においつめられるという二極化がすすんでいるといわれます。人の命が安くて手軽になってしまって、まるでモノあつかい、といってもいい。それではいけないだろう、と思います。
 こんどの雨宮処凛さんと金子勝さんの対談ではどのようなことが話されるのか?楽しみです。

(『生きさせろ』チームのことは、ウェブぺージにまとめてあります。「生きさせろ!自由の森学園」と検索すれば表示されるはずです。
    http://www.cablenet.ne.jp/~jimoren/ikisasero/)

「憲法変えようといっている人たちに、たとえ戦争をする悪意がなくても、改憲してしまったときに当初の意図とは別の使われかたをして思わぬ結果を招くのでは、それを非常に警戒します。」「私は市民運動をしてこなかったのですが、最近は護憲の運動にかかわっています。多数派になるための工夫をもっと必死になって進める必要があると思います」(精神科医・香山リカさん)

 

〈6面〉    地域九条の会の活動とお知らせ            

光が丘さわやか9条の会         月に一度は憲法9条

 団地や町会の役員、ボランティアの仲間、年金暮らしの女性達、出勤前のサラリーマンが、毎朝7時にマックに集合。物価高や、ワーキングプアや年金、税金、平和や、生き甲斐について語り合い、その仲間が中心になって今年3月から毎月憲法9条をテーマに催しを開いてきた。
3月「東京大空襲を語り継ぐ会」・4月「朝日新聞記者の公園の夕べ」・5月「さわやか9条緑陰の集い」・6月「バーベキューを楽しむ集い」・7月「団地の盆踊りを楽しむ会」、そして月に一度の「さわやか9条カラオケを楽しむ会」という具合…。 8月15日(金)、恒例の「光が丘終戦記念日を考える集い」を開催。今年は、歌謡曲「異国の丘」(吉田正)をギターとハーモニカで聞くコーナーも予定している。
 会場は光が丘区民センター5階 第一集会室        時間はPM6:30〜8:30(入場無料) 

   
「9条を支える映像とうたごえ」を開催

光が丘9条の会この春発足したばかりです。この間、9条風船を渡しながらの宣伝やピースウオークを通して、地域住民に9条の大切さを訴えましたが、8月には「9条を支える映像と歌声うたごえ」と題したイベントを光が丘で開く。
第1部 フォトジャーナリストの中村梧郎さんが、中国解放軍写真家の沙飛(さひ)の写真を通して、    日本の侵略戦争と戦った戦士や民衆の姿を説明する。
第2部 シンガーソングライターのきたがわてつさんが、憲法と平和の心を歌う。韓国の元従軍慰安
    婦たちとの交流の模様なども聞ける。
日時 8月17日(日)午後6時半開会         会場 光が丘区民センター3階多目的ホール
    *資料代1000円。(大学生まで500円、中学生以下無料)
申込み先 根本03(3970)1664・猿田03(3976)5364

下石神井九条の会  草の根運動を続けて1年

 1年前、20数名で発足した私たちの会は、現在77名になり、6月29日(日)に第2階総会・学習会を行った。2回行った学習会も15〜20名の参加があり、環境・立場の違いを越え、和やかに深い話し合いができた。地域の会として“小さな無理はしても大きな無理はせず”ねりま九条の会の活動を強く支援しながら、当会の合い言葉「学び合い、語り合い、輪を拡げよう」をモットーに“憲法9条を守る”草の根運動を進めている。
本年度の活動計画
(1)世話人会、毎月一回(2)学習会10月・3月に予定(3)しもしゃくニュース2ヶ月に1回(4)ねりま九条の会の活動ヘの参加・PR (5)会員の拡大(100名にしたいな!!)
           連絡先 3997-2246 野崎 

平和を育てる大泉九条の会 憲法学習会    憲法九条はどのように誕生したか

講師 岩田 行雄さん(憲法研究者)

憲法誕生の歴史的背景を、当時のGHQ(連合国総司令部)と日本政府の文書、国会議事録で検証。また当
時の世論調査なども取り上げながら、「押しつけ憲法論」の誤りを解明します。
日時 9月23日〔火・祝日)午後1時半開演
会場 勤労福祉会館 大会議室 (大泉学園より徒歩3分)
参加費 300円
           主催  平和を育てる大泉九条の会 連絡先 TEL03-3923-0925 町田 

DVDを観る会を開きませんか?

以前もお知らせしましたが、練馬九条の会ではDVDの映写機を購入しました。それぞれの地域でDVDを観る会が開催されていますが、もっともっと活用しませんか?
九条の会ライブラリーとしておすすめ映像をご紹介します。
一、戦艦「ポチョムキン」1905年の黒海艦隊の反乱事件をモンタージュの技法で描いたソ連の名作。
二、「命どぅ宝」沖縄で小学生がインタビューした沖縄戦。自決の強制はなかったという文科省ウソがバレバレ。
三、「日本の悲劇」戦後の日本で吉田茂首相(麻生太郎の祖父)がマッカーサーに上映禁止を頼んだニュース映画。
四、「9・11の嘘をあばけ」ニューヨーク、マンハッタンのビル破壊はやらせでは?というアメリカの作者の作品。
五、「焼け跡から生まれた憲法草案」NHKの制作、放映。新憲法誕生の裏話    
                    希望される方は TEL/FAX 0424-23-6258神中までご連絡ください。