19号 2008年10月発行

〈1面〉

「格差社会…」講演会 インタビュア雑記 

                    三宅明正(千葉大学教授)

 日本の自殺者数は一九九九年以降毎年連続して三万人を越え続けている。自殺者数を人口で割った値、自殺率は、今の日本は、国際的にみて突出している。十万人当り二四人と、 OECD(経済協力開発機構)参加国中で一位、アメリカと比べて二倍以上、フランスとでも一・五倍以上という高い数値なのである。歴史的に見ると、大戦後一九五〇年代後半に増加した自殺者は、その後減ったが八〇年代半ばに再び大きな数値を示し、いったん減少したのち九〇年代半ばから増加傾向に転じ、近年、新自由主義の経済政策が全面化するなかで激増した。
 自殺者を年齢別にみると、最近のそれは一五歳以上のすべての年齢層で増加しているが、とくに男性で四五〜五九歳と三〇〜七四歳で死亡者が増加し、三〇〜四四歳でも漸増している。リストラ対象となったり、不安定就業がずっと続くなど、雇用に関する問題が深刻な影を落としているのは明らかである。実際、自殺の動機を見ると、病気と、生活苦・失業・事業不振・負債などの経済問題とが多くを占めており、これらへの不安が人々の未来を奪っているのである。数年前「失業率が高いからといって自殺者が増えるとはいえない」などと述べた経済閣僚が以前いたが、両者の関連はもはや誰も否定しないだろう。
 事態の深刻さはとどまるところがない。半世紀まえ、日本で交通事故による死者が毎年一万人を越えた一九五九年から、「交通戦争」ということばが広がった。それにならうなら、現在の日本は経済的・社会的な「内戦のさなか」にあるというのが、適切かもしれない。貧困とのたたかい、生きるためのたたかいがいまさまざまなところで進められている。経済的・社会的なやまいを広げてきた人々を退場させ、病気でも不況でもともかく安心して生きることができる未来を自分たちで手にするためにである。             (ねりま九条の会呼びかけ人)

〈2面3面〉

    真剣に、うなづきながら聞く人々で溢れた!       雨宮 処凛・金子 勝 講演会報告

 

 0月8日、平日にもかかわらず「格差社会ー変えさせるのは平和を愛する私たち」と題した講演会は、三宅明正さんのインタビューで行われ、文化センター小ホールに集った満席の人々は、時には拍手で声援を送りながら、熱心に聞き入っていました。
 講演会の内容は、記録集にして詳しいものをお手元に届けたいという事務局判断から、紙面には掲載せず、冊子を同封しますのでお読みください。
 

記録集を理解するための基本用語           

オルターナティブ = 代案。既存の支配的なものに対するもう一つの考え方、思想。

「影の銀行システム」= 銀行は、預金を集めて貸し出し、基本的に企業の決算機能を担う。それをFRB(中央銀行)が監督し、証券会社や投資銀行はSEC(証券取引等監視委員会)が監督している。
 ところが、ブッシュの金融自由化政策によって、銀行の傘下に、それらの監督を受けない“ファンドやSIV”といった「陰の銀行システム」が作り出された。これらは、あらゆる規制をくぐり抜け、複雑な金融システムを次々に開発していった。監督も保護もいらない自由な「陰の金融システム」はギャンブル性が高く、バブル社会にフィットしていた。しかし一度つまずくと、複雑なシステムは収拾不可能になり、破滅的な金融収縮を招くことになった。
「金融立国」を目指す日本のモデルでもある。

ファンド= 小魚に襲いかかる鮫にたとえられ、巨額な資金を動かせる少数者の出資によって組織されている。企業を買収し、その企業の従業員を解雇したり、強引な手法で債務を削減したり、債権を早期に回収したり、様々な形でその企業を切り刻む。企業転売しやすくするためである。身軽にさせられた企業が、ファンドによって転売される。ファンドは買収価格よりもはるかに高い価格でその企業を転売する。
 大儲けしたファンドの陰で、首を切られた多くの従業員とその家族が泣き、企業の取引先が顧客を失い、企業内部に蓄積されてきた技術が無惨に消失した。

ヘッジファンド=世界中の投資家からお金を集めて、巨額の資金を背景とした運用を行い、「価格のゆがみ」に注目し、先物取引などを利用して利益を上げる投資システム。世界の経済に対する不透明感が高まると、ヘッジファンドの売りをきっかけに相場が崩れ、売りが売りを呼ぶ状況になることも珍しくない。

SIV= 金融市場から低金利の資金を調達し、不動産などを担保にした高利回りの証券に投資を専門に行う投資会社のこと。

アメリカにおける住宅ローンのランク

プライム=信用度の高い人向け高級住宅ローン。利息は安い。
ジャンボ=企業等による大口住宅ローン。利息は安い。
オルトA=勤め先がしっかりしているものの、所得や資産内容に若干の問題がある人向けローン、金利だけ支払う猶予期間が終わる2009年から焦げ付きが急増すると見られている。利息は中間。
サブプライム=信用度の低い人向けローンで利息が高い。信用度が低いため、自動車ローンなどとミックスしてリスクを見えなくして証券化している。猶予期間を終え、本格的返済に入った2007年から返済不能者が続出した。

労働者派遣法の変遷

1986年 施行  適用対象業務を専門職13業務に限定。
1999年12月改正 一部を除いて原則自由化。対象業務を26に拡大。
2003年 6月改正  以前は禁止されていた製造業も解禁された。
これとあわせてリストラ会社に税控除を行う、事実上の口入れ稼業  を認定するなど、経営者に有利な政策が取られている。

会場からの質問

Q1 雇用や失業に関して、法で規制するなど、どのような方法が良いと考えるか。政治の役割をどう考えるか。
Q2 金融に関して、日本だけでなく海外も含めてどういうルールが必要と考えるか。
Q3 社会体制の問題をどう考えるか。特に中南米などのあり方絡めて、これから先をどう展望するか。
Q4将来に対する展望と、私たちが個人のレベルでもできることをどう考えるか。
Q5 人と人との社会的な連帯をどうつくるか。

 

感想から(紙面の関係で一部しか載せられまん。お許しください)

● 貧困の行きつくところは「平和九条」だというところに納得。「生 きさせろ」という生存権25条と九条は一緒、本当にそう思う。
 戦争は生きられないー私たちは生きる権利があるんだ。何か言う と「すぐ予算がない」と言う政府。ー軍事費はいらない。今生き ている人を殺すな!!入場料が500円で良かった。もし、それ より高かったら行きたくても来られなかった。1日1000円以 内の予算と決めているので、交通費を含めると840円かか る。どんないい集会もすぐ入場料を気にしてしまう。
 
● 今から2年前、鉄工所で働いていたころ、毎日会社を休まず行っ ていたにもかかわらず、突然工場長から、今年限りで首と言い渡 された。こういう雇用はおかしいのではないか。なぜ急に首にさ れたのかわからない。今は福祉施設で働こうと思い、福祉園でボ ランティアをしています。と言っても、 職員になるのも狭き門だ との事。

● 私自身も派遣で働き、契約が切れて次の契約まで間があくと、
 生活の為に日雇い派遣を利用しています。派遣会社の中でも短期 の派遣先が多い所は、時間分の給与を支払ってもらえない人がい たり、本当に問題が多いのです。

● 今までに何度も金子先生の話をきいてきましたが、今日が一番
 感動しました。金子勝という人間に目をつけた私の勘に狂いがな かったこと、金子勝に出会えたことをうれしく思いました。

● 「現在の状況は予測された事態だ」との自説をとうとうと述べら れた金子氏だからこそ、「では、私たちはどうしたら良いのか」「身 近な経済の問題と結び付けたい」との声にこたえて欲しかった。 
● 平和の問題を、経済や社会の問題から解き明かしていくことは  重要だと思う。これからもこのような企画をしてほしい。

 

 

〈6面〉    地域九条の会の活動とお知らせ            

第8回ピースシアターin大泉      DVD 9条世界会議

 5月4〜6日に千葉市幕張メッセで開催され
た「9条世界会議」の内容を記録したDVD を上映します。
 日時  11月9日(日)
        1:00開場 1:30上映
    場所  勤労福祉会館大会議室
    資料代 500円
    上映後、感想会あり 
    主催 平和を育てる大泉9条の会 
    連絡先 3923-3775 小林

   

光が丘さわやか9条の会報告
 「戦争はやめて」美空ひばり熱唱!「戦争はいやです」と切々と唄い上げる美空ひばりの歌声を聴く平和のつどいが9月20日、光が丘区民センターで開かれ、28名が参加しました。ひばりが戦争や原爆に反対するメッセージソングを歌い続けたことは、あまり知られていますん。曲は
「1本の鉛筆」「8月5日の庭だった」のシリーズ曲。もし私に1本の鉛筆があったら私は戦争に反対と書きたい」と心から平和を守る思いが込められた内容でした。さわやか9条の会では、12月13日(土)に、第16回の戦争体験を語り継ぐ会を予定しています。

              映画上映会のお知らせ

生きたい、書きたい 「時代を撃て多喜二」

日時 11月3日(月)(文化の日・休日) 午後2:00〜4:00
場所 池島道場(関町北4-18-8)
参加費 無料

連絡先:関町九条の会   大島 3929-3408   遠藤 3594-1626
 

映画「不都合な真実」

日時:11月10日(月)  午後6:30開場 午後7:00上映開始
会場:練馬文化センター 小ホール 
主催 何よりも自然を大切にする練馬区をめざす区民集会実行委員会
整理券500円


映画「靖国」

日時 2009年1月17日(土) 
    第1回上映 10:30
    第2回上映 13:30
    第3回上映 16:30 第3回終了後に奥村和一さん(蟻の兵隊・主人公)のトークあり
会場 練馬公民館ホール    
一般1000円 学生500円      主催ねりま文化の会 連絡先 田場 3991-9165  

こんな本はいかがですか?

 マンガ「蟹工船」 
    原作 小林多喜二
    作画 藤生ゴオ
    企画・白樺文学館多喜二
       ライブラリー
     600円
とても原作に忠実で、読みやすい本です。作家の井上ひさしさんも推薦しています。

 

事務局からのお願い

 ・来年の企画を検討しています。ご希望がありましたらお寄せください。
 ・12月3日の総会には、是非ともお誘いあわせの上、おいでください。
 ・同封の払い込み用紙で年会費の納入をお願いします。
 ・記録集をご入用でしたら、ご連絡ください。無料(送料のみ)で差し上げます。