20号 2008年12月発行

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平和と平等を求めて 

                    本尾 良(市川房枝記念館理事長)

 前途に明るさを見いだせないままに、歳末・新年を迎えようとしている。
 ご承知のように、大正二年、平塚らいてう氏、市川房枝は、婦人参政権運動に着手したが、第2次世界大戦が始まる昭和十五(一九四〇)年に婦選獲得同盟は解散を余儀なくされる。そして今から六三年前、すなわち敗戦の年に「八王子在の川口村に疎開していた市川は、ー略ー空から降ってきた一枚の紙切れを拾った。それは連合軍のー略ーその一節に『日本政府は、日本国民の中にある民主的傾向を復活強化し、これを妨げるものを取り除くべし』とあった。民主主義とは男女平等ー当然参政権を意味する。市川はその時、そう思った。放っておけば連合軍から命令されるであろう。その前にわれわれの手で、日本政府自らの手で決めなければならない」(児玉勝子著、市川房枝伝戦後編より)と、苦心のすえに八月二五日、「戦後対策婦人委員会」を結成した。
 市川は政治委員会の責任者として、政府や政党に婦人参政権を要求しつつ、十一月三日に「新日本婦人同盟」を結成した。十月九日に幣原内閣が結成され、堀切善次郎氏が内務大臣となった。 翌十日の初会議の席上で、彼は婦人参政権と男子の年齢引き下げを提案し、閣僚は全員一致で賛成。翌十一日に首相は新任挨拶のためマッカーサー元帥を訪問した際に、これを報告した。元帥は日本民主化五大改革の四に、「参政権の賦与による日本婦人の解放=日本婦人は政治体の一員たることによって家庭の福祉に直接役立つ政治概念を日本に招来するであろう。」との指示を与えた。と堀切氏は後に市川に語ったということを聞いた。そして十二月十五日に政府案が衆・参両院で成立し、十七日に公布され、次の総選挙で選挙権を行使したのである。六十三年後の同じ十二月、平和を強く求めて一票を行使した女性の心意気を思いつつ、女性は今こそ、アメリカ発の経済不況に立ち向かう知恵と勇気を示したいと思う。
 実は「九条の会」への最初の賛同者に女性の数があまりにも少ないことに愕然として、三年前の十二月、十六人の呼びかけによって全国に「女性九条の会」への賛同を発信した。今や千人を越える個人が賛同、県単位の大きな会から数人単位の小さなグループまで、全国で女性たちががユニークな活動を行っている。平和と平等を希求する大勢の女性が立ち上がり、近隣諸国との友好を進め、「九条」を世界化することへと発展させられることを夢見ている。            (ねりま九条の会・女性九条の会呼びかけ人)

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    ねりま九条の会 第5回総会の報告       

        会場 石神井庁舎 5階  参加者93人とき12月13日〈土〉13:30〜16:30 

 第1部の記念講演では、有原誠治さんの「アニメーションで伝える戦争と平和」と題する映像を交えての講演で、アニメーションという魅力的な技法は平和の文化にもなりうるし、子どもを戦争に加担させて行く力も持っていることを、 作品を紹介しながら語ってくださいました。
  第2部の総会では、経過報告、方針案、決算、予算案(別紙で報告)、各9条の会報告(4面に掲載)などが報告され、参加者からも活発に質疑が出されました。その中で「事務局長等の選出は総会で行うべきでは」という意見が出され、事務局長と会計の承認が行われました。
 

第1部 記念講演報告  
「アニメーションで伝える戦争と平和」  お話 有原誠治さん 
          

 太平洋戦争中には、日米双方で、マンガ映画を通じて子どもたちを戦争に参加させる作品が次々と作られました。日本では、鬼ケ島に行って宝物を奪うことで親孝行をするという「桃太郎」が、他国に侵略して宝物を奪うことを正当化するために教材として盛んに使われ、「海の桃太郎」「空の桃太郎」という日本初の長編マンガ映画がつくられます。この作品は60万の子どもたちに見られ、パイロットを志願する子どもたちが大量に増えたといいます。一方、1945年にはウオルト・デズニーが「空軍力の勝利」という作品をつくっています。アジア各地に触手を延ばしていた日本は「タコ怪物」として描かれ、それをアメリカの最新鋭の爆撃機が猛攻撃をして壊滅させ、アメリカの象徴である白頭ワシが勝利宣言をするというストーリーなのですが、実にリアルで迫力があり、日本の当時のアニメーションとは比較になりません。これは日本では未だに未公開だそうで、ミッキーマウスやシンデレラなどの映像を日本で公開しているアメリカが、「日本本土を焼き尽くせ」というメッセージの映画を日本で公開するわけにはいかなかったようです。映像を見終わった会員達からは、「映像の差から見ても日本がアメリカに勝てるわけないね」との感想も出ていました。
 「ヨーロッパの子どもたちは、核兵器を大型爆弾であるとしか思っていない。核兵器の持つ放射能の恐怖を、小さい子どもにも分かるアニメーションを作ってほしい」と、フランス在住の方から言われたことを契機に、ピースアニメ「つるにのって」をつくりました。これはフランス語版や、英語版になって世界75カ国に送られました。

世界に旅立つ「アンゼラスの鐘」

                       

 2005年、被爆60周年にあたって長崎を舞台にした「「アンぜラスの鐘」の制作を始め、翌年に完成しました。この作品は、長崎で被爆者の治療に当たった実在の医師、秋月先生の著書「長崎原爆記」を映画化したもので、国際アニメ映画祭に出品したことから影響が拡がりはじめました。

 2007年10月には、国連での上映の機会がやってきましたが、主催団体に日本政府が入っていたことには驚きました。長崎では毎年高校生を平和大使として国連に送る運動をしているそうですが、2007年度の高校生が国連に同行してくれました。

 映画が終わってからのディスカッションで、ある女性が「この映画は全米の小中学校でぜひ見せるべきだ」と発言しました。広島・長崎の原爆投下はやむを得なかったとこれまでは思ってきたが、聖ルークススクールでこの映画を観て考えが180度変わったのだと話してくれました。アメリカのほとんどの人は「原爆の投下は必要だった。あの投下のおかげで多くの人の命が救われた」と信じているのです。聖ルークススクールでは小さなミッション系の中学校ですが、社会科の授業の一環としてこの映画を観て、見終わった後ディスカッションをして、自分たちでも核兵器をなくすために何かしようと話し合い、ニューヨーク出身の上院議員ヒラリー・クリントンともう一人に「核兵器をなくすために行動してほしい」という内容の手紙を書いて送ったということです。
 どこの国の学校でも、上映後のディスカッションで、子どもたちは核兵器の恐ろしさを認識したことや、平和の大切さを活発に語り合い、たくさんの感想文が届けられました。

聖ルークス校の子どもたちからのメール

 また、感想へのお礼として出した手紙に対して、聖ルークス校の子どもたちから、たくさんの感動
的なメールが届きました。ここでは、二通だけご紹介します。

JDCJL25
有原誠治様、私は「ナガサキ1945」を見せてもらったセント・ルークス・スクール7年生です。映画を見て悲しくなり、ショックを受けました。長崎のことは聞いていましたが、戦争の本当の悲惨さを理解していませんでした。秋月医師の話のような勇気ある話を聞いたことがありませんでした。映画を見た後で、クリントン氏に、核兵器を使わないようにという手紙を書きました。今日、有原さんの手紙を読み、被爆者が私たちのことを知ってくれたことを聞き嬉しくなりました。日本国憲法9条にほかの国も加わることを願います。映画を見せてくださって、また、私たちが(世界を)変えるお手伝いをしていただき有難うございます。

Sophie Mancini
有原様、ソフィ・マンシニといいます。核兵器と戦争廃絶の集会に参加したセント・ルークス・スクールの7年生です。有原さんの手紙を頂きました。すばらしい「ナガサキ1945」の作品を通して有原さんの仕事に私が関われたことをどんなに誇りに思っているかを伝えたくてメールを書いています。私も学校のみんなも、核兵器製造を中止しようとしており、有原さんがこうして協力してくださることに感謝しています。私たちは皆、相手を攻撃する代わりに、暴力を阻止し世界平和を広めようとしている広島と長崎の被爆者を深く尊敬しています。このようにして被爆者のお手伝いをすることを誇りに思います。正しいことをして下さって、また、この映画を作ってくださって有難うございます。

 

〈4面〉       九条 変える必要はない 
                                         -衆議院候補予定 3氏から回答- 

 ねりま九条の会は、在住国会議員や衆議院選立候補予定者に、九条にかんするアンケートを実施しました。民主党参議院議員1名と、東京九区・十区自民党衆議院議員2名、他の立候補予定者を含め8名に手紙で要請したところ、15日の締め切りまでに3名から回答がありました。東京九区:木内孝胤(民主)、岸良信(共産)、東京十区: 山本としえ(共産)の各氏からで、いづれも「日本国憲法は変える必要はない」というものでした。他の小川敏男(民主)、菅原一秀(自民)、小池ゆり子(自民)、小林興起(無所属)、江端たか子(民主)の各氏からの回答はありませんでした。無回答も1つの意思表示です。
 アンケート項目は  ①憲法九条を変える必要はない
           ②変える必要がある。変えるとすればどう変えますか?           ③この時期の変更は好ましくない
 の3項目です。なお、結果の公表は各人にお約束しています。

 

練馬区内九条の会の活動紹介 

平和を育てる大泉九条の会 入会金は300円で年会費はなし。会員は150名。催し物は講演会な      どを年4回、ピースシアターを年4回ぐらい行っている。2008年は、1月に落語会(立川団      の助の憲法落語)、4月に渡辺治さんの講演会(福田さん憲法をどうするつもり)、5月に      憲法ウォーク、9月に、岩田行雄さんの講演(憲法はこうしてつくられた)、10月に尾木      直樹さんの講演(学校を元気に)を行った。参加者は50人ぐらい。ピースシアターとし      ては、2月に「なぜアメリカは戦うのか」、5月に「軍隊を捨てた国コスタリカ」、9月に      NHKスペシャルの「靖国問題」、11月に「世界9条会議」。こちらも参加者はほぼ50名。
 

武蔵関九条の会 3年前に立ち上が休眠状態だったが、「日本の青空」関区民センター上映会を契機     に活動を再開。現在は月に一度は9のつく日に駅頭やスーパーなどで、署名活動とビラ配り     などを行っている。今年の最後は12月29日。映画会としては11月に「時を撃て多喜二」、     今月は「軍旗はためく下に」を観る。資金は武蔵関商店街のお祭りの際にフリーマーケット     を出したり、映画会での募金などで、会費は一切取っていない。

下石神井九条の会 会員は78名。 年会費500円。 月1回世話人会を開いている。 年に3回の
      学習会をしたいということで、憲法を読んだり、DVDを観るなどの学習会をしている。

豊玉9条の会 会員は100名。6月に2周年の総会と講演会を開催。憲法9条は戦争を放棄するこ      とで生きる権利を保障、25条も生存権を保障しているということで、開業医の立場から「後      期高齢者医療制度」の問題を報告してもらい、講演後に記録集をつくった。

土建9条の会 地域の9条の会の協力を得て、さまざまな駅での署名活動を続けている。先日は光が      丘の団地と駅前で387筆集めることができた。学校で9条のことを学んだからと、子ども      たちが並んで署名をしてくれた。しかし、その親たちは署名をしてくれないという現実もあ      る。国民投票になったときに国民の半数以上が「憲法を変えては駄目だ」と意思表示をする      ことが出来なければいけないので頑張っている。