64号 2015年12月発行

〈1面〉

篠原一氏の死を悼む──市民の政治参加をうながした学者   

                                                                                   

一〇月三一日、ねりま九条の会の呼びかけ人のお一人である篠原一(しのはらはじめ)氏がお亡くなりになりました。新聞各紙は「市民の政治参加にも早くから目を向け、練馬区長の準公選運動では中心となった」と紹介し、その死を悼む記事を掲載しています。
 戦争直後の民主化の流れの中で、特別区の区長が公選制で選ばれるようになりましたが、昭和二七年、占領政策の転換が起こり、旧勢力による自治体の中央統制が進みます。その中で地方自治体法が改正され、区長は都知事による任命制になってしまいました。そのため特別区では、選任に手間取り、長期にわたる区長空白期間を生むという事態を引き起こしました。その時に立ち上がったのが練馬区の市民たちでした。篠原氏は大島太郎氏らと共に市民を支えて、「区長準公選運動」という形の運動を起こしたのでした。篠原氏は『区長準公選制─その思想と方法』(東京都政調査会)の中で、「政治の原点は地方政治にあります。そこからもう一回政治をつくりかえていくという時代に来ているわけで、地方議会が非常に重要な役割を持っています。自主的に行動し、新しい政治をつくっていく、しかもその議会をサポートする形で市民運動が出ています。そして現代は市民参加の時代になっておりまして、準公選はそういう現代の一つの傾向をあらわしております。」と述べておられます。
 また、女性の政治参加の大切さを訴えられ、田畑革新区長の後任として、練馬九条の会の呼びかけ人のお一人である本尾良さんに立候補を強く勧め、選挙戦にも全面的に協力をされたのでした。篠原氏の講演「市民と政治」を記録した『篠原一の市民と政治5話』には「私はいのちとくらしを主たる対象とする地方政治は、女性たちによって運営される方が良いと考えています。市長や区長はもとより、、助役などにももっと女性が登用されるべきでしょう。そうすれば日本の政治はがらっと変わっていくのではないでしょうか。」そして「しかし、こういう女性の社会進出が可能になるためにも、それを支える市民が健在でなければなりません。今一番必要なことは、生と生活を大切にし、既成組織にとらわれない、いきいきした形で、政治や社会に参加するパーフェクト・シティズン〈完全な市民〉なのではありますまいか。〈完全な市民〉が、まさに地域に根を持ち、憲法愛国主義につらぬかれた人々であることは、あらためて言うまでもありません。」と述べておられます。
 また、二〇一〇年八月号の「ねりま九条の会」のニュースに「この短文を書いているのは八月六日、広島に原爆が投下された日である。憲法第九条の理念が軍事現実主義に屈するようなことがあってはならない。理念は現実化されなければならない。そういうことを誓う一日でありたい。」と執筆されています。
 「地域に根を持ち、憲法を愛し、政治や社会に参加する市民であれ」という篠原氏の言葉を私たちも受け継いでいきたいものです。
 小沼 稜子 (ねりま九条の会 会員 )

 

〈2〜3面〉                                       

ねりま九条の会   第12回 総会報告

 ねりま九条の会12回総会は11月28日(土の午前中から開催されました。午前の部の記念講演には、連日のように国会前で「戦争法反対」を訴えてこられた高田健さんをお迎えして、「戦争法を実行させない」と いうテーマでお話をしていただきました。高田さんはこの度、韓国の李泳禧(ィ・ヨンヒ)賞を受賞されました。この賞は「偶像を打破し時代の真実を明らかにしようとした故李泳禧先生の精神を実践した」として李泳禧財団から贈られたものです。私たちにとっても喜ばしい受賞です。午後の総会では、活動報告、会計報告、そして活動方針案や予算案の発表に続いて、活動方針に関する質疑が出され、活発な意見交換ができました。講演記録と、活動報告、活動方針を同封いたしますので、ニュースと共にお読みください。

不満や怒りをこぼしながら      石井真智子(貫井九条の会)

 「たまにはお茶を飲みながら話しましょう」杉浦さんの呼びかけに顔を合わせた3人。日常のあれこれに話がおよび、気持ちが解放された時間を楽しんだ。「これからもこんな時間を是非」と第1回を踏みだして10年あまりになる。
 仲間を拡げるのは難しく、数人の会がしばらく続き今もって大きなことはできない弱小グループだけれど健在だ。折しも教育界本法改正前の時、憤りの収まらなかった三浦朱門の発言「できん者はできんままでいい、できる者は100人に一人で…。」今日一句者の名に値しない者が行政の中枢でうそぶいている。私たちは以来、何回か本や新聞切り抜きコピーで教育問題を勉強した。学校選択制、学校五日制、小中一貫校、教育特区、ゆとり教育等々、現場の教師の悩みや子どもの実態を勘案することなく、真剣な話し合いも見られないまま、思いつきのようなことが、あれよあれよと。多数を頼み、「何でもできる」の傲慢は今に始まったことではない。
 マイケル・ムーア の「シッコ」「華氏911」の映画を見たりもし、国民皆保険のありがたさをかみしめたことも。
 自民党の憲法草案に触れ、コスタリカの憲法、カナリア諸島の公園にスペイン語で日本国憲法があることも知った。日本では原発の売り込み、武器輸出解禁、集団的自衛権に突っ走る。閣議決定も安保法案の可決も憲法違反だ。嘘っぱちやはぐらかしに始終した国会でのアベ政権の空疎な発言、昔、貧しい暮らしの中でまじめに誠実に生きようとしてきた日本が泣く。恥ずかしくて情けない。
 「標的の村」の映写、大内先生からの自衛隊の現状、水面下で深く進行している日米の戦略の話、はじめて部外に声をかけるデモや駅頭宣伝という経験も今年はできた。中村九条の会設立のお手伝いもした。
 世界で希有な日本国憲法、平和を希求する熱い思い、高く掲げた理想の灯を消してはならない。国民連合政府の実現を‼そのために貫井九条の会もできる形で頑張らなくちゃ!

 

講演要旨  戦争しない国であり続けるために ─これから安倍政権とどう向きあうのか
                                              講師 高田健さん
挫折などしてはいられない
   

★「二〇一五年安保闘争」の特徴は、敗北感や挫折感がないこと。
 理由としては、運動の高揚を作り出したことへの確信と、戦争法の発動を阻止する、あるいは廃止するという課題が突きつけられていることへの危機感が挙げられる。
★戦争法案は、国会を徹夜で包囲する市民の反対の声の中で参議院本会議で強行「採決」された。しかし違憲の立法は「可決」されても違憲である。
★与党は憲法五十三条を無視して臨時国会を召集しない。強行採決まで行った首相が、参院選に向けての打算から憲法を無視して臨時国会を開かず、審議を逃げている。
★与党は三月以降に南スーダンへのかけつけ警護に参加するとしていたが、十一月に延期した。審議を打ち切って強行採決をしなくてはならないほど急いでいたのに、参院選までに現地人を殺傷したり、自衛隊員が亡くなると都合が悪いからである。皮肉なことに、南スーダンで日本の自衛隊が警護するのは、中国軍であるという。
総がかかり果たした行動の役割
★日本の平和運動は、長い間、意見の違いなどで対立して分裂してきたが、立場や意見の違いを越えて、二〇一四年一二月一五日に「総がかり実行委員会」
が発足。三万人の参加者を結集した五・三憲法集会に続いて、九月までに一万人超の集会が十二回取り組まれ、八月三十日には十二万人、国会審議の山場となった九月十四日以降は五日間にわたって連続数万人の行動を国会周辺で展開した。八月、九月の国会前の集会では、毎回野
党のトップが全員で手をつなぐ
ようになった。シュプレヒコールでも、「野党は共闘せよ」「野党ガンバレ」という声が出た。
★SNSや新聞で情報を得て、やむになまれぬ気持ちで国会前に集まってくる個人の参加が多かったが、それを支えたのは徹
底した非暴力平和運動だった。

今後のたたかい

★国会で野党が共同して「戦争法廃止法案」を提出するよう、市民運動を展開する。

★違憲訴訟(国賠訴訟)や、差し止め訴訟を裁判所のある都市を中心に行っていく。

★沖縄辺野古埋め立て反対、原発再稼働反対、労働法制規制緩和反対などを通して安倍退陣の運動を展開する。

★十九日を忘れない行動、全国統一街頭宣伝(毎月第三火曜)をはじめとするさまざまな行動を展開していく。

★戦争法廃止の二〇〇〇万全国統一署名運動を成功さよう。
 二〇一六年五・三憲法記念日(臨海広域防災公園)に向けて集めるが、締め切りは四月二五日。
 前回の参議院議員選挙の得票は自民党が二五〇〇万であることを考えると、二〇〇〇万筆という数字は、野党の選挙協力が実現すれば、参院選での与野党逆転に決定的な影響をあたえることを可能にするものだ。
 署名運動は目的ではなく、参議院選に向けての手段であり道具だ。私たちはこの二〇〇〇万署名運動を通じて、全国の至る所で、戦争法廃止の世論を起こし、機運を高揚させ、安倍政権を追いつめていくことは可能だと考えている。

★改選議席の過半数を獲得
 参院選では、野党共闘で改選議席の過半数(六一議席)を取ることを目標に、戦争法廃止を選挙の争点にさせ、野党に選挙協力を実行させる。選挙区のうち、一人区は三二選挙区、一人区は全国の三分の二以上の地域を占めている。これが実現できれば安倍内閣に痛撃を与え、衆議院選挙がらみで安倍政権の退陣は現実のものとなりうるし、戦争法廃止への道を開くことになる。野党共闘は市民運動の高揚にかかっている。


〈4面〉 
防戦争法廃止2000万署名に取り組みます                                                                      

 国会包囲行動を主導した総がかり行動実行委員会が、
①2000万人署名を5月3日までに達成しよう
②選挙で野党を支援する
③毎月19日の国会包囲を成功させる
④違憲訴訟を支援する、などの方針を提起しました。
 ねりま9条の会はこの提起を受けて、区内の各団体に呼びかけて仮称「2000万署名練馬実行委員会」の発足を目指しています。国民の15パーセント、練馬では10万人を目標としています。
 2000万人署名は、この国を戦争する国にしてよいのか、日本の将来像を語る国民総対話となるでしょう。さらに過半数の人が明文改憲に反対するよう働きかけ、次の選挙で戦争法廃止の政権を産み出すことにつながります。ねりま9条の会員は1000人、一人ひとりが語り部となって、10人の語り部を養成し、その人が10人に署名を訴えれば達成します、決して不可能ではありません。10人に心を込めて戦争の愚かさ、平和の尊さを訴え、署名をお願いしましょう。

頑張って2000万署名に取り組みましょう!
                
 署名用紙を同封しました。親族、友人、ご近所など、12月中にお届けください。5人全部埋めることはありません、一人1枚でも結構です。足りなくなったらご連絡ください。集まったら「練馬区職労」か、「アニメセンター」に送ってください。受取人払いの返信封筒もあります。いろんなところから署名が来てると文句を言われるくらいにならないと2000万は集まりません。
 ここは年寄りパワーの見せ所です。参議院選挙で勝てればアベを引き摺り下ろすことができるでしょう、自衛隊のスーダン派遣も止められるでしょう。一言添えてください。

今年九つの9条の会が発足 

■各地で開かれた「日本の青空」上映会
田柄九条の会、 8月9日、春日町九条の会10月4日、石神井町九条の会10月22日、北町九条の会11月8日、関町 ・立野町九条の会12月5日、土支田九条の会12月6日が上映会を開き、大好評で新しい会員を増やしました。                       

■学習会・集会・平和パレード・宣伝カー・駅頭宣伝・議員要請など
また、既存の九条の会の頑張りと同時に、今年できた九つの九条の会も頑張りました。平和パレードを行った田柄九条の会、春日町九条の会、南高石九条の会、石神井町九条の会。そして田柄九条の会は文化集会を、中村九条の会、石神井台九条の会、春日町九条の会では、戦争法に関する学習会を行うなど、それぞれが工夫をして頑張って来た2015年でした。

                      

高畑勲監督の受章とジャック・プレヴェール

 今年の四月、高畑勲監督が「仏芸術文化勲章」を受章された。
 「仏芸術文化勲章」は「芸術・文学の領域での創造、もしくはこれらのフランスや世界での普及に功績のあった人物」に授与されるも
ので、たいへん権威のあるものだ。「九条の会」呼びかけ人の加藤周一さんが一九八五年と九三年の二回受章されている。
 高畑さんは東大仏文科在学当時からジャック・プレヴェール ─詩人、シャンソンの「枯葉」の作詞者であり、名匠マルセル・カルネの作品『霧の波止場』、『天井桟敷 の人々』のシナリオライターとして知られる─に傾倒されていた。アニメ業界入りを決意されたのも、「プレヴェールとアニメーション監督ポール・グリモーの制作による傑作アニメ『やぶにらみの暴君』に感銘を受けたのがきっかけ」であるという。
 六月には、世界最大級のアニメーションの映画祭「アヌシー国際アニメ映画祭」で、長年、アニメーション映画の発展に貢献してきた監督に贈られる名誉クリスタル賞も受賞された。高畑さんのために後ればせながらでもお祝い会を兼ねて「アニメとフランス文化、そしてプレヴェール」といったテーマでお話をうかがう機会を設けたいと願っている。
        勝山 繁( ねりま九条の会 事務局)