ねりま九条の会 第10 回総会 記念講演
日本国憲法の危機!
─「ファシズム憲法」作りを阻止するために─
2013.12.8.練馬区職員研修所にて
講師 金子勝さん
金子勝さんのプロフィール
(かねこ まさる、1944年〜 )立正大学法学部教授
愛知県出身。愛知大学法経学部 法学科、同大学院法学研究科修了。専門は憲法学、政治学、社会科学論。
はじめに
昨年12月の衆議院選挙と今年7月の参議院選挙で、日本国憲法にとって最も危惧する事態が起きました。衆・参議院で改憲を主張する政党が3分の2以上の議席を占めてしまったからです。なぜ3分の2が問題なのかというと、日本国憲法96条(憲法改正のための手続き)の第1項に、憲法の改正は各議院の総員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票をして、「過半数の賛成」の承認を得る必要であるとしています。何の過半数かは憲法には書いていません。有権者総数の過半数か、当日の投票票数の過半数か、有効投票の過半数かは書いていないので、国民投票をするときにはそれを決めなければならないのです。自民党と民主党がつくった国民投票案では、有効投票の過半数としています。
自民党は、「発議の条件」を国会の過半数としていましたが、過半数に改めるにしても一回は3分の2を取らなければならないのです。だから最初の憲法改正には3分の2が必要なのです。ところが残念なことに、衆・参両院で3分の2を占めてしまったのです。衆議院は480人の3分の2は320、その内自民党294、公明党31、維新54,みんな18で、390議席を改憲派が占め、反対はたったの10です。数で押し切ればいいというので、審議はいい加減なのです。いい加減にやって「強行採決」で押し切る。だから答弁などはどうでもいいのです。7月21日の参議院選挙でも改憲派が3分の2の議席を占めてしまった。これは日本国憲法の歴史が始まって初めてのことです。今回は現実に改憲できる数を握ってしまった。この危機は現実的な危機なのです。
改憲派は「黄金の3年間」を獲得した
衆議院はあと3年間任期があります。安倍内閣は自らの意思で解散することはないだろう、国民が引きずり下ろさない限り解散はないから衆議院も参議院も2016年まで選挙はないだろうということで、この3年間を「黄金の3年間」呼んでいますが、この3年間で、自民党は憲法改正の国民投票の障害となるものをすべて粉砕していくに違いありません。もう一つは2012年に決定した自民党の改憲案の内容を法律にして、日本国憲法を骨抜きにしてしまう。この3年間で日本国憲法が役に立たなくしてしまう。法律をつくって憲法を潰してしまう。これが麻生太郎氏が言った「ナチスの手口」です。ヒトラーは政権を握ると民主的なワイマール憲法をそのままにしたまま、ナチスのつくった法律に違反する憲法を無効にしたわけです。
改憲を実現するために障害となる要素
第一次安倍内閣の時に「改憲のための手続き法」をつくりました。国民投票をやるための法律ですが、急いでつくったために問題点があるのです。問題点は附則の中に3つの課題として提起されています。
1)国民投票は「18歳以上が参加できるようにする」こと。これは民主党から出されたもので、民主党を巻き込むために呑んだものです。現在日本の民法では、成人は20歳(天皇は18歳で成人)となっていますから、民法を改正しなければならないし、公職選挙法も変えなければなりません。自民党は、18歳に改める法律をつくったのですが、適用は4年目以降になるといいます。自民党は2016年までに改憲をやると言っているわけですから、現行のままでやることになります。
2)公務員の政治活動は禁止されています。すると国民投票で自分の意思を表明できないことになるので、国家公務員法、地方公務員法の政治活動禁止の見直しを行う必要が出てきます。
3)民主党の要請で、「日本国憲法のどこを改正するかを国民に聞く」ことになっています。つまり国民投票の実施の是非を国民に問うことになっているのです。
この3つがクリアできて初めて国民投票ができることになります。自民党は今回の臨時国会で「日本国憲法の手続きに関する改正案」を出すつもりでしたが、党内で意見が一致できなかったので来年に出すと言っています。もう一つ、自民党の「日本国憲法改正法案」は国民に不人気なのです。そこで、国民に改憲法案を説明する対話集会を年内に日本全国で持つと言っています。そうやって国民を誘導しようとしているのです。
法律を制定して日本国憲法を骨抜きにする
自民党の改憲案の内容を実現する法律を制定して、日本国憲法を骨抜きにしようということを考えて出してきたのが「特定秘密法案」なのです。安倍内閣は「地球的規模の日米安保同盟」を実現するために、米中戦争を念頭に入れて、世界中で侵略戦争をやるための体制をつくらなければならない。そのためにはアメリカと共に戦争する「集団的自衛権」を行使できるようにしなければならないと言っています。
「集団的自衛権」とは、自国は襲われていないのだけれども、同盟国が襲われたら同盟国と共に戦うという権利です。自国が襲われていないのに他国を襲うのは「侵略戦争」です。つまり「侵略戦争」をする権利なのです。醜い権利です。
集団的自衛権を使えるようにするためには、アメリカの「国家安全保障会議」という戦争指導機関と同じものを日本にもつくらなければというので、日本にも「国家安全保障会議」(NSC)を11月27日に強行採決をしてつくったわけです。日本の戦争指導機関をつくったのです。
と同時に秘密が漏れると困るから、アメリカの秘密を守るため、また、反対する国民を弾圧するために「特定秘密法」をつくりました。この法律は、自衛隊がアメリカの「御用軍隊」となって世界中で戦争をするための、国民の反対を封じる法律なのです。主権者である国民対して秘密などあってはならないのです。これは国民主権を否定する、つくってはいけない法律なのです。
これができると、国民には政府や自衛隊からの「いかに自分たちが正しいかという情報」しか手に入らないから、いつも「戦争万歳」になってしまうのです。おかしいと思って情報を取ろうとすると、特定秘密を盗んだとして弾圧されるから、戦争反対は言えなくなり、国民は戦争しかできなくなってしまいます。「秘密保護法」というのはそういうものなのです。すると、国民の中にも密告する者がでてきます。そこが嫌らしいところです。すると国民同士がお互いに敵になってしまい、ますます反対運動はできなくなります。
だからみなさん、家を出るときは必ず後を振り向きましょう。そして公安調査庁、警察、自衛隊の3つの組織に狙われているのですから、いつも後を振り返って見て、尾行を捲きましょう。部屋に入ったら盗聴器が仕掛けられているかどうかを調べましょう。
自民党「日本国憲法草案」の本質
こんなことをやって日本国憲法を骨抜きにし、「黄金の3年間」でどんな憲法をつくろうとしているのかを見ていきたいと思います。
1,「『安保』憲法」をつくるための憲法
安倍政権は、日米安保条約に基づいて、アメリカと日本が世界中で戦争ができる憲法をつくろうとしているのです。2006年6月26日にブッシュ大統領と小泉純一郎との話し合いで決めた「21世紀の安全保障の運営に関する文書」があります。それには「21世紀の地球的規模での協力のための新しい安保条約である」と書いてあります。「21世紀の安保条約は地球上どこででも協力してたたかうことができる」ということです。現在存在している軍事条約の中で全世界を対象にしているのは「日米安保条約」だけなのです。従って日米安保条約は世界で最も凶暴な軍事条約なのです。
2,「戦争の放棄」から「安全保障」に
第2章を見ます。日本国憲法の第2章は「戦争の放棄」ですが、自民党は「戦争の放棄」を放棄します。すると残るのは「戦争」です。戦争をやって自国の安全を守る、つまり「安全保障」ということになります。日本国憲法九条にある「国権」とは、国家の主権のことです。国はどの国でも自分の国を統治しているわけですが、その統治権を主権と言います。「他国が侵入してきた場合はそれを撥ねのける権利がある」これが国家の主権の発動です。そういう戦争のことを、「国権の発動たる戦争」というのですが、日本国憲法は「国権の発動たる戦争」を放棄すると書いてありますから、侵略戦争も、自衛戦争も、制裁戦争も放棄すると言っているのです。
「武力による威嚇」は兵隊や武器を送り込むことですが、それは国際紛争を解決する手段としては用いないと言っているのです。自民党の解釈によると、「国際紛争を解決する手段」とは「侵略の手段」だと言っているのです。つまり、日本は侵略のための武力の行使や、武力の威嚇はしないけれども、自衛のための武力の行使や、武力の威嚇はできると言っています。自衛のための武力の行使とは、北朝鮮が核実験をした、あるいはテポドンを打ち上げたから日本が危ないと言って、北朝鮮にミサイルを撃ち込むことができるということです。中国が回実験をやった、日本が危ないと言って、中国にミサイルを撃ち込むことができるということです。侵略のための武力の行使はできないけれども自衛のための行使はできる。つまり、「自衛のためだ」と言えば軍隊を送り出すことができるということなのです。アメリカをみて下さい。アメリカはいつでも「自衛のため」「正義のため」と称して侵略戦争をしています。
3,「国防軍」は「日本軍」の隠れ簑
改憲案の第九条第2項では、「前項の目的は自衛権の発動を妨げるものではない」としています。九条1項で戦争を放棄すると言っておきながら、自衛のための戦争はやると言うのです。日本もアメリカ同様、自衛戦争をやると言って侵略戦争ができるわけです。つまり全ての戦争ができるということになります。
戦争をするために、九条の2項の2のところで「我が国の平和と独立、並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を創設する」。自衛隊から「国防軍」に変える。軍隊というのは外国でも国内でも人を殺し、建物を破壊する行動をする武装人間集団であり、人を殺せない軍隊は歌を忘れたカナリアで裏山に捨てられるのです。ではなぜ「日本軍」にしなかったかというと、第2次世界大戦で2000万ものアジアの人々を殺しているからです。アジアの国から総スカンを食うから「日本軍と」いう名称は使えないのです。「国防軍」なら自衛隊に毛が生えたものと言って騙すことができるからです。とにかく軍隊を持つ、そこが日本国憲法との違いです。
第2項で、「国防軍は前項の規定を遂行する際は、我が国の平和と独立、及び国及び国民の安全を確保するために法律の定めるところにより国会の承認、その他の統制を受ける」としていますが、「その他の統制」ってなんでしょう。憲法には何も書いていないのです。何も書いていないときは読み手が解釈するのです。ということは、憲法の条文に書いてないことについては、みんな名探偵にならなければいけないのです。
4,「積極的平和主義」とは
第3項では、「国防軍」は「法律の定めるところにより、世界の安全と平和を確保するために国際的に強調して行わなければならない」つまり軍事的な国際貢献をやると言っているのです。憲法九条の下では平和的国際貢献であるのに対して、これからは世界中の軍隊といっしょに、世界中、紛争のあるところはどこでも、平和をつくるという名目があれば軍事活動ができる。軍事的な国際貢献ができる。これが安倍さんのいう「積極的平和主義」です。アメリカが正義のない戦争をするときに真っ先に駆けつける。これからはいっしょになってどこにでも軍事的な貢献をしますよと言っているのです。
5,戦争の指揮は「在日米軍司令部」
ところで、「誰が戦争の指示をするのか」についての規定はありません。大日本帝国憲法では、13条で「天皇は戦を宣し、和を講し、及諸般の条約を締結する」としています。戦争を始めるのも天皇、終わらせるのも天皇です。天皇に一番の戦争責任があるということです。日本国憲法は戦争を放棄しているのだからないのがあたりまえですが、草案では戦争をやると言っておきながらこの規定がないのです。1997年9月27日に締結された「日米防衛協力のためのガイドライン」には、「日本が襲われた場合、つまり日本の領土が襲われた場合、あるいは日本にある米軍基地が襲われた場合は、日本に対する武力攻撃があったとアメリカが判断した場合には、アメリカ主導で日米が協力して戦争をする」と書かれています。つまり日米安保体制の中では、日本は独自に戦争をすることはできません。アメリカの許可がないと戦争はできないのです。
もう一つ、日本とアメリカに攻撃がないのだけれども、日本の周辺で紛争が起き、この紛争が日本の安全に悪い影響を与える事態(周辺事態)が起きたとアメリカが判断した場合は、日米は共同で戦争をする。アメリカの戦争に日本が従う形を取るわけだから、自民党の草案の中には宣戦布告も講和の条項もないのです。
6,「基本的人権狩り」が可能となる
「安保憲法」で戦争するときには、国民は戦争に反対するから、民主主義や地方自治や基本的人権は認めない。こんなものを認めたら戦争はできないからです。そこで、自民党は民主的なものを全部潰す改憲案をつくろうとしているのです。ファシズム憲法です。そのシンボルは自民党改憲案の12条です。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力により保持されなければならない。国民はこれを乱用してはならならず、自由及び権利には、責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」日本国憲法では「公共の福祉」という言葉を使っています。「公共の福祉」とは、みんなに基本的人権を保障されて、みんなが幸福になって社会が繁栄するということです。改憲案では「公益及び公の秩序」に反してはならないとしています。「公益及び公の秩序」に反するものは潰すことができるというのです。「公益及び公の秩序」を判断するのは政府や警察官やスパイです。「公の秩序を維持し、又は国民の生命又は自由を守るための活動を行うことができる」つまり、治安を維持するための活動ができる。例えば、今、首相官邸前で毎週何千人もの人が原発反対運動が起きていますが、石破茂氏の論理でいくと「あれはテロだ」と。テロだったら、国防軍を派遣して一網打尽にすることができるのです。皆殺しにできるのです。政府に反対するデモをやるやつは、大企業に反対するやつは社旗秩序を乱すからみんな皆殺しにできる。日本でも今中国や中東で行われているような大企業反対デモは、治安維持を守るということで潰すことができます。
「公益」とはみんなの利益であって、日本ではまず国家、それから大企業です。だから東京電力を潰していないのです。在日米軍も日本の安全のためにあるということで「公益」です。「国防軍」も我が国の安全を守るから「公益」です。つまり、「公益」とは国家の利益や、在日米軍の利益、国防軍の利益を言うわけです。だから「国防軍反対!」というと「公益」に反することになります。辺野古に基地をつくらせないというと「公益」に反することになります「公の秩序」というのは、国家の定める秩序ですから、「日本は天皇が大事」「日本は戦争する国」と決まれば、反対すれば「公の秩序」に反することになります。基本的人権は憲法上はあっても実際には保障されないということになります。
7,「政党狩り」が可能となる
もう一つ改憲案第64条の2は「国は政党の活動の公正な確保及びその健全な発展に努めなければならない」。これにより、政党も潰すことができます。「俺が指導してやったのに、お前らは俺の言うことが聞けない。健全な発展をしていない」と言って潰すことができるのです。「政党刈り」です。ヒットラーのような人物が出てくれば与党であっても潰すことができます。政府の言うことを聞けない政党は全部潰すことができるのです。そうなったら民主主義は機能しません。まさにヒットラーナチスのファシズムです。
※ファシズムとは
ブルジョワジーの支配の危機時に現れる全体主義的反共主義・反民主主義専制政治体系のことです。国家権力が、民衆による「改革」や「革命」の道を遮断して、事実に反する扇動的な宣伝を用いて、民衆に対して「改革」や「革命」の実行を言いながら、民主的なものを潰し、「平和」を掲げながら「侵略」を実行する政治体系のことです。それを前提にして対外的には強大な軍事力をもって、他国と他民族に対する侵略主義と排外主義(他民族を支配するために民族間の憎悪や反目を煽る思想)と抑圧主義を実行する。また対内的には、強大な軍事力・警察力・官僚力をもって、国民主権や民主主義、基本的人権。地方自治、議会政治を抹殺して、国民に対して一つの思想を押しつける思想的独裁と、暴力で国民を押さえつける暴力独裁を実行します。イタリアのムッソリーニ、ドイツのヒットラー、日本の戦前の軍国主義がそうです。軍国主義というのは国全体を巨大な軍隊にして侵略に行く、侵略戦争に邪魔になる民主的なものを全部潰していくもので、1940年の「大政翼賛会」の発足で確立しました。
※「安保」ファシズムとは
強大な軍事・警察・官僚機構を柱とする中央行政権力型統治機構をもち、反対派のいない、アメリカと財界翼賛議会を持ち、右翼化・反動化したますメデイアや労働組合や宗教団体、暴力集団などを協力隊として持ち、熱中したファシズム支持層を持ち、天皇を、それの精神的総括者の地位に置く、アメリカ至上主義型日米核軍事同盟体制を基礎とする対米従属の「日本型ファシズム」。
憲法改悪を阻止するために
では、私たちはどうしたらいいでしょうか。
自民党がこういう憲法をつくろうとしていること、それは日米安保条約に基づいて世界中で侵略戦争をするために、アメリカと日本の資本主義の利益を守るためにつくろうとしているのだということを多くの人に知ってもらうことが必要です。
改憲を阻止するために私たちがやらなければならないことは5つあります。
1)改憲阻止のために、日本国憲法のすばらしさと自民党の改憲案の醜さを多くの人に伝えていかなければならない。
2)星の数ほどある改憲を阻止する個人・団体の学習会は、月に1回のところは2回行う。そうやって数を増やして行く。
3)ここにいるみなさんが今日勉強したことを、いない人に伝える。憲法の語り部となって多くの人に日本国憲法のすばらしさと自民党の改憲案の醜さを伝える、語り部活動をやっていただきたい。日本国憲法の全てを知る必要はない、自分の語れるところだけでいいのです。語り部が日本中に溢れたときに改憲は阻止できるだろう。みなさん勇気を出して語り部になってください。
4)向こうは戦争国家をつくろうとしているのだから、こちらは全ての人が幸福になる平和な福祉国家をつくる。そのために、改憲を阻止する全ての個人・団体・政党は団結しようじゃありませんか。
5)「改憲阻止国民会議」をつくろう。
憲法改悪を阻止するために
「改憲阻止国民会議」は2つの統一戦線をつくる必要があります。議会の統一戦線と議会の外の共同行動です。20世紀の統一戦線は、どこの国でも、特定の政党がトップに立って、個人はそれに従うというものだったけれども、21世紀は国民が政党と同じ資格になる必要がある。最初から特定の政党や特定の労働組合をトップにすると必ずそれに反対が起きてケンカが起こる。それを防ぐためには平等にする必要がある。それから、個人には「自分が一番正しい」と思う「独善主義」を持っている。「独善主義」は個性で、いいことなのだけれども、それを貫こうとするとケンカになるから、ちょっとセイブしてほしい。
もう一つ、日本には自分に反対する人や意見をアカだと決めつける人が多いけれども、自分と異なる意見を持つ人に「アカ攻撃」をすることは止めようではないですか。「独善主義」と「反共主義」を克服すると、そこに「寛容主義」が生まれる。「寛容主義」で自分に反対する人と手を結ぶことができたら、ここで統一戦線ができると思う。そして我々は絶対に暴力は使わない。非暴力、平和主義を貫いて、あらゆることを話し合いで解決しましょう。
運動にはお金がいるけれども、変なお金は危ない、CIA から金をもらうと必ず殺されるから、そういうお金はもらわない。今度JCIAができる。国家安全保障会議ができたので、今度は陸軍中野学校をつくると言っています。日本にも007ができるのです。スパイ組織ができるのです。どんなに苦しくても、今の運動を貫かなければならいと思います。
「平和的福祉国家」をつくる
世界中の全ての人が平和で幸福になる権利があるというのが21世紀の理想なのです。世界中の全ての人が平和の下で幸福になるにはまず9条が必要です。一切戦争をしない、戦争の道具を持たないという9条が必要なのです。どんなことがあっても、食べることと着ることと住むことができることが人間の幸福です。それプラス、必要なときに働くこと、休むこと、勉強をすることができること、病気になったら診療を受けること、そして自分の心と財産を誰からも強制されない、それが人間の幸福です。これを実現するためには、福祉国家をつくる以外にはないのです。20世紀の福祉国家は軍事的な福祉国家でした。軍隊と戦争を認めて福祉国家をつくろうとするからみんな潰れてしまいました。戦争と軍隊を否定しない限り本当の福祉国家はできません。戦争と軍隊を否定するのは憲法9条ですから、憲法9条を持つ福祉国家にするのが平和な福祉国家ということになります。
軍隊と戦争を否定する平和主義の下で国民はどうなるか、国民自身が武装・非戦、国家自身が非武装・非戦国家、自治体も非武装・非戦自治体、そうすると、国民は殺し合いはしません。国家が軍隊と戦争を認められると国家は悪いことばかりします。国家から軍隊と戦争を奪わない限り、国民はいつも国家にいじめられる。これが20世紀の教訓です。そして国家が軍隊を持っていると、国民が反乱を起こしたときには国民を潰すことができるのです。
だから軍隊を持つ国は基本的人権も民主主義も自由もいい加減なのです。日本もいい加減、アメリカもいい加減、フランスも、ドイツも、イタリアもみんないい加減。国家が軍隊を持って人民を弾圧できるからいい加減にできるのです。でも、軍隊を持たない国で、民衆が一〇〇万人立ち上がったら国家は潰れます。軍隊を持たない国家は、国民に基本的人権と民主主義と自由意思を保障して国民の支持を得る以外に生きる道はないのです。そういう国家をつくったときに、初めて人間は幸福になるのです。だから平和的福祉国家をつくればこの世に天国ができるのです。宗教はあの世に天国をつくっているわけですが、もし平和的福祉国家ができたら「、生きて極楽死んで極楽」だからこんないいことはない。そういう社会をつくりましょう。そういうふうに「改憲阻止国民会議」をつくって福祉国家をつくったときに、国民は本当に幸福になるのです。それが改憲阻止の私たちの最大の課題であり、それをやったときに全ての人が幸福になれるのです。