44号 2012年12月発行

総選挙の結果と九条の会のこれから
                岡本 厚(【世界】元編集長)

 

  2005年は自民に、2009年は民主に大きく振れた振り子が、今度はまた自民に大きくスイングすることになった。とはいえ、比例得票数では、自民は、2005年に2588万票、2009年に1881万票をとっていたのに、今回は1662万票で、大負けした09年よりも減らしている。得票率も2009年26・7%が2012年27・6%とわずかに増えたに過ぎないのである(毎日新聞12月17日夕刊)。選挙のたびに、これほどの振幅が存在するのは、小選挙区制という選挙制度に起因する。
 投票率も戦後最低の59・32%。2009年の69・28%より10ポイントも減少してしまった。
 政党政治の危機である。
 結局、この選挙のテーマは、「民主党の三年間」だった。マニフェストを掲げ、颯爽と登場した鳩山政権は、日米安保という岩盤にぶち当たって崩壊。続く菅政権は、小沢を外して党内がもめ、参院選で敗北して推進力を奪われ、東日本大震災と原発事故の対応だけで終わった。続く野田政権は、日米安保に舞い戻り、消費税増税決定とTPP推進に舵を切り、おびただしい離党者を出した揚句、自爆解散のような形で民主党政権に幕を引いてしまった。初めの有権者の高揚は失望に、やがて嫌悪に変わっていく過程であった。
 自民への支持は、他に選択肢がないから、と言うほどの「弱い」ものである。しかし、議席の数は圧倒的である。改憲自体はまだ先としても、早い時期に、必ず「集団的自衛権」行使の解釈変更問題が出てくる。この問題は、内閣法制局の元長官が、「直接的には国民の生命、財産が危険にさらされている状況ではないのに、自衛隊が海外に行って、たとえ国際法上違法でないにしても、武力を行使することを憲法九条が容認していると解釈する論拠は、日本国憲法をどう読んでみても、見出すことができない」(阪田雅裕『世界』2007年9月号)という問題である。実質的改憲と考えなければならない。
 前回の安倍内閣の発足に危機感を抱いた多くの人が、九条の会に集まり、活動を始め、全国に輪を広げていった。改憲志向第二次安倍内閣の発足である。九条の会は気を引き締め、活動を活発化させるときである。都知事選挙には、負けたとはいえ、宇都宮陣営に党派、世代、地域を超えて多様な市民が集い、連携した。国会前の反原発デモとも通底する動きともいえる。困難な中でも、希望の芽はある。これまでにない連携をし、これまでにない運動を広げよう。

 


第8回 練馬九条の会総会 終わる

12月9日、練馬区職員研修所にて総会を開催しました。第1部は「九条の会」事務局員で、「許すな改憲・市民連絡会」代表の高田健さんの講演、第2部は総会でした。都知事選と総選挙の告示後の日曜日とあって、参加者は41人と少なめでしたが、会場からは、活動への要望などが活発に出され、大変活気のある総会でした。
 高田健さんの講演は、私たちに、復活した安倍政権とどう対峙するべきかを考えさせる内容で、本当にこれからが正念場であることがひしひしと胸に迫りました。ニュースでは、ほんの一部だけ扱っていますので、同封の記録集をぜひお読み下さい。

高田 健さんの講演   永田町に渦巻く改憲の企て 〜私たちはどうするかより

■「改憲」を公約に選挙を戦った自民党の狙い

 自民党が「改憲」を総選挙の公約にしたのは、勝利したときには、自民党の「憲法草案」を多くの国民が信任してくれたのだと居直って、これに向かって突き進むためである。

■震災・領土問題をめぐる世論操作

  3・11契機に、被災地には10万からの自衛隊が投入され、米軍がトモダチ作戦ということで投入された。その結果「あれだけ頑張っている自衛隊を憲法に明記しないのはおかしい」と思う人が増えてきた。「日米安保があったから米軍が来てくれた」と思う人も増えてきた。
 合わせて尖閣諸島の問題、石原慎太郎が尖閣諸島を買うと言い出し、政府が慌てて国有化をした。そのことで中国はカンカンに怒る。すると、中国が攻めてきて、尖閣諸島が占領されるかもしれないという風潮が一気に広がる。「中国から領土を防衛するのか、しないのか。」という議論が町で起きるようになる。酒場で酒の肴にされる。こういう中で、「軍事力を強化するべきだ」「日米同盟を強化するべきだ」「九条があったら中国が尖閣諸島を占領しても戦えない」という話になってくる。さまざまなメディアで、憲法に対する攻撃が一気に行われるようになった。

■アーミテージの脅しと「集団的自衛権」の大合唱

 アメリカは、第3次アーミテージレポートで、「日米両国は、中国の台頭と、核武装化した北朝鮮の脅威に直面している」「日本はこの地域で二流国家に没落する危機にある」「日本は集団的自衛権を行使して、米軍と自衛隊の相互能力を高めるべきだ」 そして、「東日本震災後のトモダチ作戦は、日本が集団的自衛権を行使できる土台とするためにやっていたのだ。にもかかわらず、集団的自衛権の行使ができないのはなにごとか」と、露骨に脅してきた。
 これに応えて、「今の日米同盟を強固にして、尖閣諸島の防衛を果た
すことが大事だ」と自民党は言う。これに橋下徹も石原慎太郎も呼応する。野田政権も「集団的自衛権の行使ができる日本になるべきだ」と発言、永田町では、一気に集団的自衛権の大合唱になってきた。

■集団的自衛権を行使すると…

 集団的自衛権を認めれば、アメリカがどこかを攻めた場合には、その国が日本にとっての敵ではなくても、自衛隊はアメリカと一緒に戦うという構図になる。イラク戦争のときは、ハルージャの町にテロリストがいるということで、市民に対する大虐殺が行われた。イギリス軍はこの虐殺に荷担をした。今イギリスではその責任が問われている。アメリカは、「日本もイギリスのように戦え」と言ったのだが、憲法九条のおかげで、この虐殺に手を染めなくてすんだ。集団的自衛権を認めればもう断ることはできなくなる。
 年が明けると、改憲をせずに集団的自衛権を認めるとする「国家安全保障基本法」が国会で審議されることが予想される。注意が必要だ。

■尖閣諸島は今や一蝕即発の危機に

今、日米両軍で、大分県の日出生演習場や、グアムやテニアンを部隊に、島嶼(しょ)奪還作戦という合同演習がひんぱんに行われている。一一月はじめには、尖閣諸島に近い沖縄周辺の海上で、非公開で行われた。中国でも同じように尖閣列島を奪還するための軍事演習を行っている。まさに一触即発の状態になっていることを我々は認識する必要がある。

■「憲法を守る」ネットワークを

 金曜日の行動に象徴される「脱原発」の全国的な運動がある。毎週金曜日には市民が集まって抗議をしている。主権者としての権利を、民主主義として行使するという、まさに日本国憲法の精神をあの人々が現している。
 憲法の問題でも、憲法を守るという共通項を持つ者同士が、どうやって手をつなぐか、意見の違いを批判してやっつけるのは簡単だが、仲間をどうやって増やすかということもまた、市民運動にとっては大切なことではないだろうか。
 九条の会はそうやってつくられてきたのだから、そこは大事にしたいと思う。


総会で出された意見と要望

・全司法退職者の練馬在住者に入会を呼びかけたいと思っているが、練馬九条の会と東ねりまや、豊玉 九条の会などとの関係はどうなっているのか?  
 (答 ─ 全部対等な関係。家族だけの九条の会などもあり、掛け持ちで入会しいる人も多い。)
・キープピースからメイクピースという考え方は賛成である。
・国際的視野での活動は大事だと思う。東アジアでの平和構築のため市民交流をするといいと思う。
・「NPT世界会議2015」に青年を送ってはどうだろうか。
・「日本の青空ーⅠ」は日本国憲法のできるまでをわかりやすく描いて説得力がある。ぜひ再上映を企画 して欲しい。
・九条ポスターを拒否する人が多い。九条や憲法の話は「むずかしい話はしないで」と言って敬遠される。
・自民党が自衛隊を国防軍に変えようとしていることを知らない人が多い。
・今では区民の多くが戦争の実態を知らされていないので、知らないでいる。戦争を語り継ぐ会が必要ではないか。
・日本の青空ーⅢ「わたされたバトン」の上映も企画して欲しい。
・近現代史の学習をしたい。
・九条を知らない人が多いので、その人たちに分かるチラシを全戸配布してはどうか。
・学校の社会科教員全員が九条の会に入るべきだ。
・区内にはアジアの人がいっぱい住んでいるし、アジア人と結婚している人も多い。アジアの平和のために、その人たちと話し合いをしてはどうか。

◆平和を育てる大泉9条の会 「新春 落語の集い」   噺家 立川 談之介さん     

 日時 1 月 14日 (月・祝) 午後 2時開会
 会場 練馬区東大泉中央地域集会所    大泉学園駅北口より5分 大泉区民事務所2階( 東大泉3−18−9 ℡03−3922−1260) 
 会場費  800円(茶菓付き)
 連絡・問合せ先 町田 03(3923)0915

◆詩 「逆風」   新村一成(ねりま九条の会会員)
厭な匂いの風だ
右の方から吹きつけてくる
勢いを増して 時代を過去へ戻そうとする
この風に耐えて 守らねばならないものがある
人と人が殺し合い
国と国が滅ぼし合う
そんな時代を呼び戻さないために
僕らは逆風に耐える林になろう
逆風をはね返す壁になろう
守るべき平和
そして その礎である憲法九条を
風に吹き飛ばさせてはならない
だから 僕らは林になる 壁になる
厭な匂いの風から 日本の明日を 
世界の未来を守るために
そして僕らは太陽になる 花になる


◆ 今後の前進に向けて都知事選の「敗北」からまなぶ       浦口 俊郎(南大泉在住)
     

都知事選は、石原の後継の猪野瀬が当選しました。さっそく彼は「都民の代表」と豪語し、都職員を一堂にして「100%は都民ため、プラス20%は国のために働け」と国政の安倍政権と同じ道を歩むことを強要しました。大阪の橋下と軌を一つにして、公務員バッシングをはじめるのではないでしょうか。労働組合の奮起が期待されます。
 猪瀬は当面、表は公明党の顔を立て、紆余曲折しながら、参院選をにらんでいると思われます。
 私は今回の「練馬勝手連」の人たちと宇都宮さんの勝利を期して活動しながら、11月26日の「人にやさしい東京をつくる会練馬」の学習会で話された大内要三さんの小冊子を読ませていただきました。大内さんは自らすごした戦後を少し振り返りながら、戦後復興期の「貧しい」時代、高度成長期の「豊かな」時代、弱肉強食の格差どころか、階級対立を極に陥れた新自由主義の今、美濃部都政の誕生時の経済や、その背景の階級基盤を分析して、今日、非正規労働者が36%と3人に1人以上となり、仕事がない人、明日の生活もままならない年収200万以下の人が1000万人を超すこと、それらが集中する東京をみつめ、我々の運動を問うています。特に今回、あの石原路線の猪瀬を推した労働組合の変化を批判しています。
 脱原発・憲法を守る活動、とりわけ憲法9条を守る運動を広く構築するため、ややもすれば「理屈先行」「自派優先」となりやすい共闘活動に、大内さんは共同活動をすすめようと、広く呼びかけているように思い
ます。