45号 2013年2月発行

〈1面〉

自民党の「自主憲法」とは
         

                          吉原 功(日本ジャーナリスト会議代表・貫井在住)

 第二次安倍政権の出だしが極めて順調だとマス・メディアが喧伝している。各種世論調査でも支持率が六〇%を超え上昇カーブを描いている。不公正な選挙制度のもとで民意と著しくかけ離れた選挙結果によって成立した政府、憲法改正を公言している政府がである。
 長期的にみれば日本経済をどん底に落としかねない経済政策が円安や株高によって成功しているかに見えることや、選挙前とは打って変わって古色蒼然とした軍国主義者の牙を隠していることなどが要因であろう。だが経済的恩恵にあずかっているのは巨大企業や富裕層であること、牙を隠すのは参院選までであることを見逃してはなるまい。事実、参院選後に「集団的自衛権」を法律で行使できるようにする意図は隠していない。憲法改正前にも、米国の戦争に参戦しようというのだ。
 「自主憲法制定」が自民党の党是だという。現行憲法は占領軍が押し付けたものというのだ。だが集団的自衛権にしろ、九条の改変にしろ米国が一貫して要求していること。自衛隊を国防軍にし、これに集団的自衛権という名の海外派兵と国内治安維持という役割を課すのが自民党案だが、これは米国益にはなっても日本の国民益には決してならないだろう。九条の存在によって信頼を寄せている国々を裏切ることにもなる。
 天皇を元首とし、「我が国の歴史、文化、伝統を踏まえ」るという形で基本的人権を無限に後退させているのも自民党案のもう一つの特徴だが、これに関連して、一月二七日付東京新聞が「五日市憲法草案」を紹介しているは注目に値する。
「日本国民は各自の権利自由を達すべし、他より妨害すべからず、かつ国法これを保護すべし」。明治十年代の自由民権運動、それも農民民権の流れに属する運動から生まれた憲法草案の一条項である。「子弟の教育においてその学科及び教授は自由なるものとす」という条項もある。記事が示唆するように現行憲法に連なる日本民衆の意思である。これらの条項は農民や教員の自発的集団的な学習と討論によって生まれた。私たちの運動の方向性を指し示しているように思う。


〈2面〜3面〉
ベアテさんの遺言は「日本国憲法の
  平和条項と女性の権利を守ってほしい」

 ベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年(二〇一二年)一二月三〇日に亡くなった。享年八十九歳。日本国憲法の草案つくりに携わり、男女平等に関する条項(二十四条)を起案した女性である。
 ベアテさんは一九二三年、著名なピアニストのレオ・シロタ氏の一人娘として誕生。ユダヤ人である。両親はユダヤ人排斥のため、ウクライナに居づらくなりウィーンに移るが、ドイツで反ユダヤ主義が台頭したため、演奏旅行に出る。ハルピンでの公演を聞いた山田耕筰が感動して日本に招待。東京音楽学校教授に赴任した。ベアテさんは五歳だった。
 彼女は少女期にはすでに、五カ国語を使えた。また、お手伝いさんを通じて日本に親しみ、日本女性の地位の低さを知る。
 アメリカに留学するが、間もなく日米開戦で両親とは音信不通となる。語学力を生かして仕事をしながら大学を卒業し、終戦後、両親を心配して、日本に帰るために連合軍総司令部〈GHQ〉に就職。軽井沢にいる両親と再会、栄養失調の両親を東京に連れ戻す。
 一九四六年、日本政府は、松本烝治国務相らが憲法改正案を進めてきたが、二月一日、この「案」を毎日新聞がスクープし、全文を掲載した。GHQは、これが明治憲法を多少修正した内容だったことに激怒し、独自の委員会を作り、新憲法の策定作業を進めた。その委員会の中に二十二歳のベアテさんがいた。
 ベアテさんはまず、東京上野の国立図書館に行き、世界各国の憲法から最高と言える条項を抜き出して参考にし、女性の権利条項を書いた。これは当時の世界の憲法において最先端ともいえる両性の平等条項だった。
 「女性の権利」という概念は、当時の日本では「驚愕」的であったために反対されるが、ベアテさんが「自分は日本女性の地位の低さを知っている」と言うと、日本側は反論できなかった。
 「日本国憲法は世界のモデル」とかねてから語っていたベアテさんの最後の言葉は、「日本国憲法の平和条項と女性の権利(九条と二十四条)を守ってほしい」そして、「故人への献花などはいらない。そのお金を『九条の会』に寄付してほしい」だった。

■ベアテさん追悼集会
日時 三月三〇日(土)午前午後
会場 女性と仕事の未来館(田町)映画「ベアテの贈り物」上映他
■ベアテさんの志を受け継ぐ会
日時 五月一〇日午後六時より
会場 津田ホール
映画「シロタ家の二〇世紀」上映他

自民党の教育公約は「戦前教育」の復活
 日本軍がフランス式郷土防衛軍の鎮台制から、ドイツ式のいつでも外国に出て行ける師団制へと転換成し遂げたのが一八八八(明治十一)年。この軍拡路線推進者が山形有朋・大山巌・川上操六・桂太郎らで、彼らはその六年あと朝鮮国へ攻め入り、三浦梧楼公使らをして朝鮮・明成皇后を殺害。これより日本のアジア大陸侵攻が始まる。
 今日、自民党首脳安倍晋三・石破茂や維新の会石原慎太郎らは、憲法を改正し、自衛隊を国防軍と位置づけ、集団的自衛権を行使するという。その狙いは何か。庸懲(ようちょう=懲らしめる)北朝鮮を口実に、資源獲得のために軍国主義を進めて膨張日本を目指そうとしている。そうなったらあなたのお子さん、お孫さんたちは戦場の尖兵として、進軍ラッパのもと、進め!進め!と後方から指揮する彼らに煽り立てられるに違いない。
 戦前、臣民教育を目指した「サイタ サイタ サクラガサイタ」で始まる国語教科書が一九四一年、「アカイ アカイ アサヒ アカイ」と代えられて、忠君愛国が叩き込まれた。今回の衆議院選の自民党道徳教育公約はこれを目論んでいるとしか思えない。
 だが、毎週金曜日の夜、首相官邸前は壁や垣根を越えて「脱原発」を訴え、抗議する
三・一一みんなの民主主義が始まっている。
                                            北島清太郎(練馬九条の会会員・向山在住)

仮称「憲法九条を変える議員を増やさないため
     手をつなぐ練馬区民の会」の呼びかけ
         呼びかけ人(アイウエオ順)大柳 武彦 小岩 昌子 比嘉 高 森田 彦一

  私ども四名は、ねりま九条の会の会員です。ねりま九条の会は事務局会議で、昨年末の総選挙結果に対し深刻な危機感を持ちました。即ち、改憲勢力が衆議院議席の三分の二を占める結果となり七月の参議院選挙で同様の事態が起これば、憲法改定の発議、国民投票の実施が現実のものとなります。安倍政権が戦争ができる「日本をとりもどす」施策を日々、着々と打って来ているのに対して、憲法を守る私達は手を拱いて座視していることが出来ません。私たちは七月の参議員選挙を改憲を阻止する天王山と位置づけて、早急に行動する必要があると考えました。
 そのため、強大になった改憲勢力に対峙できる改憲阻止勢力を、参議員選挙までの時限組織として、九条の会の枠を超えて結成する必要があるのではないかと考えました。
 九条の枠を超える組織とするためには、個人資格で呼びかけるほうがより広く参加を求めることが出来ると考え、四名の連名といたしました。もちろん選挙運動はそれぞれよしとするところで行うのは当然ですが、ベースとして憲法を守る運動を広げようという趣旨です。
七月までの短い期間の重要な戦いとなりますが力を合わせて取り組みましょう。

この呼びかけに応じて、一月二九日に練馬区本庁舎一九階の会議室で行われた第一回目の会合には、四十三人のかたがたが参加され熱心に話し合いました。その結果「危機感を共有しつつ、個人やそれぞれの組織の自主性を尊重しながら、穏やかな連絡会とする」「十人ほどの世話人で具体化を相談し、次回会合で方針を決める」ということになりました。
 さっそく世話人がきまり、二月六日に世話人会を持ちました。世話人会では、
・会の名称を「いのちのため に手をつなぐ
練馬の集い」(略称いのちづな)とする。
・個人も組織代表も対等の関係で討論する。
・世話人は誰でも手をあげてなれる。
・財政はカンパでまかなう。
という方向が出され、次回三月六日の全体会に諮ります。会員の皆さんも参加して具体的な提案をしてください。

 日時 三月六日(水)午後六時三〇分〜九時
 場所 練馬区役所一九階一九〇三会議室

リレートークのおしらせ

  ねりま九条の会が昨年から実施した平和リレー
トークは多くの方々の参加を得て成功してきました。 今年は安倍政権が改憲を企図しているだけに、さらに多くの方にお話していただきたいと思っています。

1、ビキニデー3月1日(金)     17時~19時 大泉学園駅
2、東日本大震災記念3月11日(月) 16時~18時 練馬駅西口
3、城北地域空襲記念4月13日(土) 14時〜16時 光が丘IMA前
4、安保条約締結記念4月23日(火) 17時~19時 大泉学園駅
5、憲法施行記念5月3日(金 ) 1時~12時  練馬駅南口
6、沖縄慰霊の日6月23日(日) 14時〜16時  石神井公園南口
7、ヒロシマ原爆記念8月6日(火) 17時~19時 練馬駅南口
8、ポツダム宣言受諾終戦記念日8月15日(木) 18時~20時 練馬駅南口
9、終戦記念日9月3日(火) 17時~19時 光が丘IMA前
10、憲法制定、勤労感謝の日11月3日(日) 14時〜16時 大泉学園北口
11、太平洋戦争開戦記念日12月8日(日) 14時〜16時 石神井公園北口

4面

女性「九条の会」8周年のつどい
今、日本国憲法最大の危機!!  講師 高橋哲哉さん(東京大学大学院教授・哲学者)
  オープニング  コカリナ演奏 黒坂黒太郎   オートハープと歌 矢口周美さん
 日時 3 月 9日 (土) 13:30開演
 会場 武蔵野公会堂(JR中央線吉祥寺駅下車公園口より2分)
 前売り券  1000円 当日券 1300円 学生800円

 連絡・問合せ先 小沼 03(3991)7087

さよなら原発練馬アクション旬間  
  3月1日 映画「ハードレイン」上映会 勤労福祉会館大会議室 18:50分上映 無料

3月3日 
 ひな祭り宣伝行動 午後大泉学園駅南口 「ぼんぼん祭り」17時 
練馬駅南口広場3月3日から16日まで14日間「江古田映画祭」

3月9日(土) 11時 明治公園  「つながろうフクシマ!さよなら原発大集会」

3月10日(日)「さよなら原発練馬アクション旬間2013」練馬パレード 11時 春日町長谷川ちびっ子遊び場
「首都圏反原発連合」集会13時 日比谷公園野音 その後デモ

3月11日(月)東日本大震災復興支援公演「チカラ」19時 大泉ゆめりあホール
ドキュメンタリー映画「傍」18時30分生涯学習センター

 

■「めげない高校生
─東京高校生平和ゼミナールの活動に思うこと─ 中出 律

 一年半前から東京高校生平和ゼミナールの世話人として、ささやかに活動してきた。このゼミナールは約二十年の歴史をもっている。自主的に平和の問題、社会の問題について高校生が学んでいるのである。
 昨年の十二月二十三日(日)には「東京の高校生平和のつどい」を開いた。そのための宣伝活動、カンパ活動に私は何回か同行した。十一月のオスプレイ配備反対集会では、雨と強風の中彼らは「集会参加ごくろうさま。高校生の平和活動にご協力下さい!」と、ビラ配布、カンパ活動を熱心にやっていたのが印象的である。
 十二月二日(日)の総選挙、都知事選の直前のこと。事前のマスコミの予想では憲法を守ろうという候補者、政党の劣勢が伝えられていた頃である。熱心に繁華街で「平和のつどい」のチラシ配布を五~六人の高校生でしていた。ところが幟もないのでどのような内容かわからないということもあって、私が地域で配布していた選挙のビラよりもっと受け取りが悪い。二〇人中一人くらいしか受け取ってくれていないのである。でも彼らは元気で、「先生まだ時間があるからまた来週やろうよ」と言うのである。二十三日(日)には、「千の風になって」の新井満さんの歌とお話、京都大学原子炉実験所の小出裕章さんの講演を中心とした「つどい」を成功させた。
 彼らは原発、生活保護、学校でのいじめや体罰などを心配している。自分の頭で考え、自分の脚で立って行動する。今度は「春の平和のつどい」を成功させようと学習したり話しあっている。選挙の後、気が抜けてがっくりきている私には誠実な高校生や中学生の姿が希望の灯になっている。 (ねりま九条の会会員)