84号 2019年4月発行

「外交」は国のあり方を問う                  
                                
  大西  広(慶應義塾大学教授

■韓国最高裁の判決は当然

  日本をめぐる現在の国際関係で最も悪化が目立っているのは対韓関係である。私は日中友好協会をやっており、日中間の徴用工問題が日本企業による賠償で解決していることを知っているので韓国最高裁の判決は当然のことと考えている。もちろん、日中間では日本の裁判所が「当事者同士での和解が望ましい」としたのが、1965年の日韓請求権協定のために日韓間でのそれが困難になっているという違いもあるが、徴用工というものがいかに非人道的なものであったかを知る時、この請求権協定自体の問題に考えを及ぼす必要が日本側にあると思うのである。国際関係上よく言われることであるが、日本人は過去の悪行を忘却している一方で、相手国の人々は忘れていない。その傷を知らないとか、無視するとか、そういうことをしては関係の改善は不可能である。何よりもまず相手国国民の感情を知ることから外交は始まらなければならない。

■求められるのは北東アジア新秩序への順応

 実際、その意味で、外交では「法的責任」などというものより、もっと現実の変化に注目する必要がある。そして、この日韓関係についての最も重要な変化は、昨年における北朝鮮核問題の劇的解決、そしてその結果としての南北朝鮮の関係改善であった。南北朝鮮の厳しい対立があれば、韓国はアメリカや日本との同盟をせざるを得なかったが、それが解消すれば同盟は必要なくなる。平たく言うと、このためこれまではアメリカや日本に気を遣い続けなければならなかった韓国が、気を遣う必要がなくなったということである。この意味で、韓国における在韓米軍基地の撤退要求の高まりと徴用工問題や従軍慰安婦問題の再提起はこの文脈で理解されなければならない。日本に対し屈辱的に気を遣った1965年の日韓請求権協定が今や乗り越えられようとしている。その協定自体に問題があった以上、現在の韓国のあり方こそが正常なものなのである。
 したがって、南北朝鮮関係の改善を中心とする昨年における北東アジア国際関係の転換は本質的には正常なものであり、日本に求められているのはこの「正常化」した北東アジアの国際関係にちゃんと順応することである。それができなければただ孤立することになる。よくよく考えると、今や日本はヨーロッパにおけるイギリスの如くに近隣諸国から孤立している。安倍執政には多くの失敗があるが、これらの意味で対韓外交もまた大失敗をしている。

■対ロ外交、対朝外交もまた大失敗

 安倍外交の失敗は対ロ外交や対朝外交にもみられる。私は「北方領土」は本来はアイヌ民族のもので(もともと「アイヌ人の地」を意味する「アイヌモシリ」は北海道、樺太、千島の三地域を指していた)日ロ間で決められるべき性格のものではないと考えているが、それにしても現在の交渉の失敗は「返還後は米軍基地を置かない」と約束できないとの安保・地位協定体制から来ているとともに、これまでの長期の対ソ敵対姿勢が融和を困難とするための多くの障害を重ね続けてきたことにある。これまでの東西冷戦体制とは北東アジアの一方を「アメリカ勢力圏」とするためのものであり、その路線に乗せられた日本はソ連(→ロシア)が悪の権現であるかのような宣伝をし続けてきた。長期に亘ってこのような宣伝をし続けてきた日本が手のひらを返すように「友好」などと叫んでも話はそう簡単ではない。
 この話をここでしたのは、これと全く同じ関係が北朝鮮との間でも見られるからである。上述のように今や北東アジアで日本は孤児となりかけているが、これを避けるにはそれぞれの諸国との間で思い切った関係改善措置をとらなければならないが、それが北朝鮮と全くできない状況にある。そして、そのわけは、これまで反北朝鮮キャンペーンをやりすぎてきたことにあろう。北朝鮮が問題のある国であることは言うまでもないが、それでも我々はかの民族を数十年に亘って侵略してきたことを忘れるわけには行かないし、拉致問題にしても「横田めぐみさん遺骨鑑定問題」に代表されるように日本政府側には捏造の強い疑惑がもたれている。これらはすべて冷戦構造的な敵対関係をつくってきた日本の歴代外交の問題であり、それが現在の孤立を帰結している。過去の外交への根本的な反省なしに日本外交の未来はない。そして、それには政権交代が最も近道だと思われるのである。

   
  ローソクデモに参加する人々  

■外交政策は政権政策の要

 実際、外交選択と政権選択とは多くの場合、深い関係を持っている。たとえば、北東アジア国際関係の今回の転換にとって決定的だった韓国の政権交代も、実は外交選択が隠された重大イシューとしてあった。
 文在寅政権の成立のためには朴槿恵の下野が必要であったが、それを実現したかの大規模なローソクデモの背景には、いわゆる「崔順実ゲート事件」やセウォル号沈没事故での信用失墜だけではなく、日本との安易な従軍慰安婦合意や対中関係を悪化させたTHAAD配備といった問題があった。このことは、ローソクデモに対抗して開かれていた右派の朴槿恵支持デモが韓国国旗とともに星条旗を振っていたことからもわかる。朴槿恵派はこの意味で、これは外交をめぐる闘いでもあると正確に認識していたのである。
 日本でも、実のところ、大きな政治的変革は常に外交路線の転換としてあった。明治維新しかり、1945年の大転換しかりである。そして、さらに、現在、私たち九条の会が追求している目標もよくよく考えると「九条」という外交政策に他ならない。あるいはさらに、沖縄の米軍基地建設に反対する運動も、TPPに反対する運動も「外交」をめぐる闘いである。このことをこの機会に再認識しておくことも重要ではないだろうか。


こんな税金の使い方、許していいのですか!            渡邊 澄子 (大東大文化大学教授)

 統一地方選前半戦、都道府県議選と 政令市議選が行われたが、国民の命と生活にダメージを与えることしかしていない自民党中心の政権に鉄槌を下す結果を期待したが、そうはならずがっかり。当面の区議選、さらに参院選では安倍政権を打倒したい、せねばなりません。怒りの声を挙げ得ぬ日はないような現状なのに、人々の関心の低さには呆然とさせられる。新聞も本も読まず、スマホとやらでのゲームに夢中の人々の知性は劣化の一途。少子化が日本の未来を暗くすると言いながら10代の自殺の多さに唖然。女性力を評価しながら、男女平等の憲法下で、70年以上経っても列国中の下位から抜け出せないこの現実。打破・改善の急を要する問題は山ほどあるが、喫緊課題を挙げてみよう。 
 まず、沖縄問題。沖縄を何時まで植民地状態にしておくつもりなのか。問題の根幹は政権だが、具体的には地位協定にある。ドイツやイタリアは米国に対して毅然とした姿勢で「主権」を主張し、自国の法令に従わせているのに、日本の安倍政権はまさに米国隷従である。税制にもより格差拡大で生活困窮者が増えているのにそのような国民への施策はなく、駐留軍には思いやり予算で贅沢な暮らしをさせ、言いなり、言い値で武器の爆買い、さらに辺野古基地。県民の大多数の反対を押し切っての埋め立て続行。軟弱地盤対応策は確立し得ないばかりか、受注業者の言い値で発注し、莫大な費用と長年月がかかることがわかったのに非公開で、その費用も全部日本持ちだという。生まれたばかりの赤ちゃんから臨
 終の高齢者までが八百何十万円もの借金を背負わされている借金地獄に陥っているというのに、税金の使い方は言語道断だ。 原発の恐ろしさを知っているはずなのに、諸国に売りつけ、死の商人を得々としている安倍首相。歴代首相中、最高頻度の彼の外遊もだが、その夫と手をつなぎ、手を振ってにこやかにタラップを上る昭惠氏の恥知らずの姿には言葉を失う。彼女の旅費も税金だろう。いくらかかったのか公表すべきだ。私は納税者の権利と義務から知りたい。
 元号で大騒ぎだったが、元号なんていらない。グローバルの用語が日常化している時代に元号を使ってる国ってあるのだろうか。私は西暦を使用しているので平成  年と言われても年表を見なければ何年かわからない。併記OKというがそんな面倒なことせずにやめればいいことだ。内閣には日本会議の重鎮が
人もいるという。明治回帰を求めている人達だ。それは、天皇退位・即位行事にも言える。笑ってしまうアナクロニズムだが、神話に基づく仰々しい行事。雅子様の病気悪化が案じられる。特に大嘗祭は「神」になる行事なので明らかに憲法違反だ。「陛下」の呼称も憲法違反だ。臣下が尊・聖なる高所におわします天子に対して階梯のはるか下から奏上する時の言葉なのだから。主権在民の憲法下で使うべき言葉ではない。ああ、まだ、我慢ならぬこと山ほど。みんなで考えましょう。
                                               

 

米軍と一体化する自衛隊は変わるのか? 
             ─ 井筒高雄氏講演会 報告         上田(大泉学園九条の会)
                         
 
 元陸自レンジャー隊員 井筒高雄氏を迎えての講演会を大泉図書館にて実施32名の方が参加されました。主催は西大泉九条の会。大泉学園町九条の会・ねりま大泉九条の会・平和を育てる大泉9条の会の共催。
 まず、1985年米国でベトナム帰還兵たちが立ち上げた「ベテランズ・フォー・ピース」を紹介。「国家政策の手段としての戦争の根絶」など5項目の取り組みを報告し「戦争のコスト」を知ることを訴えました。元兵士に発生する心の問題〈心的外傷後ストレス障害(PTSD)〉〈一般人より高い自殺率〉を紹介し、「心が戦場のままの元兵士」の実態に触れました。アフガン・イラク戦争での米兵の犠牲者・派兵を経験した自衛官の自殺者数などを具体的に告発されました。
【具体的で生々しい話、また広く問題になってもよさそうな事件やら文書がきちんと報道されていないことにびっくり。 代男性】
以下、5つの観点から講演が進められました。

1、憲法9条加憲で自衛官の士気は高まるのか? 

 昨年2018年度自衛隊観閲式での「任務を全うできる環境整備」「感謝発言」した安倍首相。しかし、「すべての殉職した自衛官に賞恤金(しょうじゅつきん=弔慰金)は支給されない」「隊員の死亡に対する補償額は減額される」「隊員の命と遺族の補償はコストカット」との実態報告。参加者の感想の多くがこの点に集中した。
【自衛隊員の命の保障をもっと保険でカバーできるように制度を変えて頂けたらと思いました。 代女性】
 

2、自民党の9条改正案と緊急事態条項は必要なのか。

 ベトナム戦争時、日本に9条がなければ、間違いなく巻き込まれていた。韓国と同等かそれ以上の犠牲を強いられていた。自民党の9条改正草案は9条2項の死文化が狙い。「大規模自然災害時の〈緊急事態条項〉は憲法には必要ではなく、災害基本法の〈改正〉で済む」と断じた。
【昨日「緊急事態法」について東大の石田先生の講演を聞き、2日続けて中身のある講演でした。…女性】

3、憲法9条を超越したPKOの変遷。

 練馬の北側から大きく旋回し、急激に900メートルまで降下し、都心上空を超低空飛行で羽田に向かって着陸体勢をとる真下に位置します。そのため、エンジンを吹かすための騒音、着陸に伴う車輪を下ろすことによる氷塊等による落下物が当然起こる最も可能性のある地域になりま。

4、1月 日の衆議院、安倍首相は隊員募集を拒否する自治体を敵視した。

 災害派遣の自衛隊という幻想を活用し自衛隊員募集。しかし若者の隊員は減少。採用年齢の引き上げなど充足率の拡充を目指すが深刻な事態は変わらない。防衛省は、自衛隊OBと一般国民の活用を表明している。井筒氏は、高齢化を生かす任務とは、国民に対して行った調査で1位の「災害派遣」の道であると言う。
【自衛隊のリアルを様々な角度で教えて頂き、これから考えるべき課題をたくさん突き付けられた思いです。 代男性】

5、日米新ガイドラインと防衛予算

 2015年4月「日米新ガイドライン」の発表。米軍との一体化に向けた自衛隊の改変。日米新ガイドラインと安保法制による新任務(米国の都合で正確な情報が国民に知らされていない)が「海自、米軍イージス艦に補給」「日米共同演し習の延べ日数の増加」「オスプレイの低空飛行訓練のルート拡大・首都横田基地での離着陸訓練の増加」など急ピッチに進められている。安保法制によって新たな財政負担が強いられる。さらに、2015年防衛省設置法第 条の改正で文民統制の形骸化が進んでいる。
【自衛隊の現実と9条改憲の問題も論理的に考える必要性を改めて実感した。ジャーナリズムはこうした実態・問題を広く周知することに努めるべきだと思う。 代男性】

 講演の最後に井筒氏は、「このままの改憲は危うい」として、次のように力説した。
 戦後、憲法9条とともに歩み続けた日本社会。9条の下での専守防衛に徹した自衛隊。9条があるからこそ戦争をしなかった自衛隊の姿は立派な「国防の形」ではないのか。「専守防衛」「災害派遣」に特化した自衛隊を誇るべきだ。憲法改正論議の再考を促したい。【知らない事柄が多かった。聞いて良かった。もっと多くの国民に知ってもらいたいことだと思う。そして安倍さんの責任を追及すべきだと思った。こんな理不尽なことを続けることは国民のため、国家のために良くない。もっともっと井筒さんの活動を広げていってほしい。 代女性】

 

新しいポスターを参議院選挙前に貼り出しましょう!           

ねりま九条の会は、区内9条の会の皆様の協力を得て新しいポスターを作りました。これまでのポスターは有原誠治さんのハトに乗った女の子のデザイ
ンで大好評でしたが、在庫がなくなり、今の情勢にふさわしいキャッチフレーズに変えるためです。
皆様の賛同金でポスターを作ることにし、新しいキャッチフレーズは「九条は平和への誓いー憲法に自衛隊明記は戦争への道」とし、絵はちばてつやさんにお願いし、即日に送っていただきました。皆様のおかげで約500人の方からの賛同を得て約2か月間で出来上がりました。心からお礼を申し上げます。
しかしポスターは貼りだしてこそ意味があります。是非とも引き続きお願い申し上げます。

   
   千葉てつやさんのイラストを使った新しいポスターです      


■「憲法を詩おう」に小学1年生の詩が

日弁連が企画した日本国憲法をテーマにした詩のコンテスト「憲法を詩(うた)おう♪」の大賞に、茨城県の小学1年生、尾池ひかりさんの詩が選ばれました。

わたしはせんそうをしらない
おかあさんもしらない
おばあちゃんもしらない
でも、ひいばあちゃんはしっている
えきでへいたいさんをみおくったかえり、
ひこうきがとんできて
「きじゅうそうしゃ」でやられそうになったって
はしってはしってはしってようやくにげたって
ひいばあちゃんがいきたから
おばあちゃんがうまれ、
おかあさんがうまれ、
そしてわたしがうまれた
へいわをまもるけんぽう
いのちをつなぐけんぽう
わたしがおおきくなっても
このままのけんぽうであること、
それがわたしのねがい

 

 

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