50号 2013年10月発行

〈1面〉

次の総選挙で
         

                                          大内要三(日本ジャーナリスト会議会員)

 次の総選挙がいつになるか、選挙の結果はどうなるか、という予測がマスコミでさまざまに語られている。国会解散に追い込むどころか、問題山積なのに臨時国会を開かせるだけの力さえどの野党にもないから、だらだらと野田政権が続く。選挙の結果は民主党大崩壊、自民党相対多数、第三極不分明。このあたりは誰が論じても同じだ。しかしこのような予測とも言えない予測は、自分の議席を守るために必死になっている現議員の論理から出て来る「政局」論議の結果であって、選挙の中身、選挙の結果を決めるのは私たちの1票だということを軽視してはいないか。選挙制度のことはここでは述べないけれども。
 私たちは選挙で、本物の脱原発の候補を選ぶことができる。原発の再稼働・新規建設・輸出をさせず、何十年も先などと言わずただちに全原発の運転停止を命ずる政府をつくる。そういう力を、私たちの1票は持っている。私は福島の子供たちのことを考える。
 私たちは選挙で、安保廃棄を表明する候補を選ぶことができる。オスプレイは米国に帰ってもらい、基地は返還してもらい、東アジアの緊張をゆるめて「領土問題」協議の土台をつくる。そういう政府をつくる力を、私たちの1票は持っている。私は沖縄の人々のことを考える。
 私たちは選挙で、日本国憲法の平和条項を守り抜く候補を選ぶことができる。9月30日に安倍自民党総裁が京都・綾部市での講演で正直に語ったことは、そのことの重要性・緊急性を示してくれたのではないか。彼は次期総選挙で憲法改正を争点のひとつとしたいと語り、続けて改憲の発議に衆参両院の3分の2以上が必要だとする憲法96条に文句をつけて、「たった3分の1を超える国会議員の反対で発議できないのはおかしい。そういう横柄な議員には退場してもらう選挙を行うべきだ」と語った。
そう、「たった3分の1」の議席で憲法改悪は阻止できる。そして、守るべき憲法の平和条項にかかわる現実が原発であり安保なのだと、福島と沖縄が教えてくれた。


   


〈2〜7面〉


【子どもたちがあぶない】 ─ 戦争への道─ ターゲットにされる 「教育」       元都立高校教員 片山むぎほ


1、はじめに 
 「教育の憲法」といわれた教育基本法の改悪が、政府によって具体的に示され出した頃、東京では「命がけで憲法を破る」と豪語した石原都知事が教育行政へ露骨に介入して、反対する者を懲戒処分にする弾圧(一〇.二三通達や七生養護学校性教育弾圧事件)を始めました。その頃から、「教育の危機」は叫ばれていました。
 しかし、この時は、問題の所在が教育関係者(教職員・学者・研究者・保護者・学校関係者等)の中での議論に留まり、巷の飲み屋では、「最近の子は可愛そうだね。最近の先生はひどいらしいね。全然遊んでくれねえらしいな。子ども、ほったらかしだってよ。俺たちの頃の先生は良かったぜ」というような会話で、教員批判が酒の肴になるという風潮でした。
 そして、今、教育基本法の改悪を強行した安倍晋三が、ゾンビのように甦ってきた第二次安倍内閣のもとで、石原が都知事を辞めた後も、東京の教育の危機は深化するばかりです。石原都知事が豪語した「破壊的教育改革」は、子どもたちと学校を破壊し続けています。今、子どもたちに新たな危険(戦争への道)が迫っています。

 2、防災の名の下に、高校生に自衛隊体験訓練
 七月二六日~二八日、「防災教育推進校」に指定された都立田無工業高校の生徒三三人が、なんと自衛隊の朝霞駐屯地内で、宿泊防災訓練を行いました。この事実を都教委は秘密にしていました。東京新聞の記者や共産党の都議が、都教委の指導部高校指導課(高指課)に質問しても、高指課では、やるともやらないとも回答せず、反対運動が起こることを怖れて、「実行前には発表しない」としていました。でも、東京新聞や都議の追及で、都教委は公表せざるを得なくなり、実行日の前々日にやっと公表しましたが、当日の取材や見学を拒否しました。なんと怪しい自衛隊基地内秘密訓練です。
 九月一九日に「自衛隊をウオッチする市民の会」が防衛省に行き、訓練内容を明らかにすることと高校生対象の宿泊訓練を行わないよう要請しましたが、防衛大臣官房広報課の担当者は、「教育庁からの要請があり、内容のすり合わせを行って実施した。自衛隊を国民にご理解いただくため、自衛隊では駐屯地内宿泊体験を行っており、今後も要請があれば協力する」というような答弁を行いました。
 また、田無工業高校の池上信幸校長は、来年二月には再び自衛隊駐屯地での宿泊防災訓練を実施すると公言しています。
 七月一六日の東京新聞によれば、自民党石破茂幹事長は驚くべき事を言い放っています。「自民党改憲案に基づく国防軍ができると、軍事裁判所的なもの(=審判所)が作られ、命令に従わない者をその国の最高刑(=死刑)にすることができる。そうすれば、死ぬかも知れないから嫌だという者でも命令に従わせて、命がけの出動をさせることができる」
 こんな恐ろしいことを平気で言う安倍内閣の自民党幹事長。自衛隊が国防軍になる日が来たら…、そう考えると背筋が寒くなります。私たちは、今、そんな時代の岐路に立たされています。

3、都教委は実教出版の日本史の教科書の採択を禁止
六月二七日、東京都教育委員会は、二〇一四年度に使用する高校教科書についての「見解」を一切の議論ぬきで議決し、この日のうちに、各都立学校長あてに、実教出版『高校日本史A』『高校日本史B』の国旗・国歌の強制に関する側注の記述が「都教委の考え方と異なる」とし、この教科書を採択することは「適切ではない」と通知しました。すでに、文科省の検定に合格している教科書に対してでさへ、自分たちの気に入らない記述があれば、この教科書の採択を禁止するという、何の法的な根拠もない不法な行政行為を行っています。
 これは、松江市教育委員会が「はだしのゲン」を閉架措置にした行為と同様で、権力を持っている側が、自分たちに都合の悪い情報を子どもたちの目から隠す行為です。そして、このような事は、教育の場だけではなく、秘密保全法として、国民全体の目から都合の悪いことを隠すという政策と同時に進行しています。
 「教育の危機」は、「国民の知る権利の危機」と共に進行しているのです。
 すでに、改憲が行われてしまっているかのようです。戦争への道が多面的で拡がっています。


 4、「ゼロトレランス(厳罰主義)」の「生活指導統一基準」
 「ゼロトレランス」って、ご存知でしたか。アメリカで行われた「寛容ゼロ」「厳罰主義」による生活指導の方法です。校内への銃の持ち込み・発砲事件・薬物汚染・飲酒・暴行・いじめ・学力低下などの諸問題に対する対策として、一九九〇年代のクリントン政権下のアメリカで導入されました。
一九九八年には、全米で三一〇万人以上の生徒が停学になり、約八万七千人が退学になったそうです。アメリカ社会はますます荒廃していき、その三年後には九・一一が起こり、五年後にはイラク戦争。貧困家庭の多くの若者達が、現状と将来の生活のため、戦場へと駆り立てられていったのです。
 そして、今、都教委は、「生活指導統一基準」なるものをつくり、
「ゼロトレランス」をその指針にしようとしています。東京都教育委員会のHPには、「※ゼロトレランス的な考え方に基づく「特別指導の指針」は、平成二五年度(今年度中)に作成予定」と書かれています。そして、その例として、〈問題行動:飲酒、喫煙等の行為、窃盗(万引きなど)、定期考査等での不正行為〉→〈問題行動についての対応:停学〉。〈問題行動:「威圧行為」・「いじめ」等の行為、覚醒剤やシンナー等の薬物使用〉 →〈問題行動についての対応:停学、退学〉などを表に示し、「※訓告、停学、退学は、学校教育法施行規則第二六条による懲戒処分」と書いています。
 これまで、高校の現場では、生徒たちを法律上の懲戒処分とはせずに、生活指導の様々な方法が考えられてきました。それで、「停学処分」ではなく「自宅謹慎指導」、「退学処分」とはせずに「進路変更」などとして、生徒の将来に傷を付けないように「指導要録等には記録を残さない」という指導方法が一般的でした。都教委は、このような寛容はゼロにして、厳しく罰する方法を、統一基準として設けて、全都の学校が一律に行えという訳です。
 今、現場の教員の多くは、『そんなこと、あり得ないでしょ。保護者や地域で子どもたちの健全育成を考えている人たちも、そんなやり方、黙っちゃいないでしょ』などと考えていますが、これは教育行政の新たな危険な動向です。安倍内閣が成立させた「いじめ防止対策推進法」も、この厳罰主義が根底に流れています。また、現場の教員たちは、日々の雑務や多方面からの圧力で疲弊して、一人一人の生徒の気持ちや悩みに対応する余裕がなくなっており、『規律が重んじられて、暴力や予想外の行動を取るような、手のかかる生徒が目の前からいなくなれば、教員は楽になるなあ』という思いが募ってきます。


5、ああ、平和な未来を希求

 教育政策の貧困化、貧困の連鎖が蔓延してきています。
 高校中退の若者が巷に溢れ、治安が怪しくなった時、
「何だ、こいつらは、軍隊に連れてって、教育し直せ」
 石原慎太郎の同類項が巷に溢れる日が来ることを怖れます。
 そんなことをさせないために、「差別をやめよう」「仲良くしよう」「一緒に生きよう」「一緒に歩こう」「多様な人と平和に生きよう」という平和を求める道を拡げていく必要を、今改めて、ひしひしと感じています。

〈4面〉 

私たちの地域の「9条の会」もがんばってます!


■大泉9条の会(★2013年の取り組み
1月 新春憲法落語の会(立川談の介師匠)
2月 講演会「沖縄、福島と9条」 講師 高橋哲哉氏
3月 アクティブ・ミュージアム
4月 9条まなびば「自民党改憲草案の正体」報告 松島修氏
5月 憲法記念日 大泉学園駅前
   ピースイベント(リレートーク・リーフレット・チラシ   配り/ 風船配り/ハモニカ合奏)
6月 雨宮香凜さんトークイベント
   「安倍政権で〝生きられるのか〟」
★今後の取り組み ─講演会─
11月16日(日) 午後6時30分開演 勤労福祉会館 大会議室 テーマ「ほんとは怖い! 集団的自衛権ー 憲法9条が危うい」
講師 川口創さん(弁護士・イラク派兵違憲訴訟弁護団事務局長)
参加費 500円
連絡先  3923ー0915(町田)

■豊玉9条の会
2008年にスタートして以来、毎年五月三日には 練馬駅前でリレートークを行っている。
 講演会は、
2008年6月「後期医療制度について」 講師 佐々木医師。
2011年9月 「ヒロシマ・ナガサキ・そしてフクシマ 環境、健康、命、平和を考える」講師 野村在生氏。
2012年7月「憲法と安保のあいだ」講師 大内要三氏(東練馬九条の会との共催)
2013年 「戦争をする国への道、許さない!」講師 菊池紘弁護士等を開催してきた。

■下石神井九条の会
 年に二度の学習会と、二ヵ月に一回の「しもしゃくニュース」の発行を行っている。
学習会の内容は、
2012年11月「原発テレビと核武装」講師 加藤久晴氏 
2013年3月 「九条の会の動向、憲法改悪の中味」講師 大柳武彦氏。
また、DVDの鑑賞会や、会員である乾知次氏の「低レベル放射能の人体への影響」、「原子力発電と暮らしの中の電気〟他」などの報告をもとに、学習会を行ってきた。
今後の計画
10月頃、講演会「憲法(仮題)」 講師 田場弁護士 を企画中。

■ねりまネット9条の会
 毎月9日に練馬駅前で「戦争はいやだ」「9条を守ろう」と大書きした横断幕をかかげて道行く人に、9条と「非核都市練馬区宣言」を印刷したアピールチラシを配っている。

■練馬退職教職員九条の会
 毎年原発問題等々のテーマを決めて学習会を行っている。
毎年の展覧会(GENKI展)では会員の平和と文化を愛する心意気のこもった作品を練馬区美術館で開いている。
一〇月中に、福島被災地の応援バスツアーを行う予定。

■くるみ9条の会
 毎月第四土曜日に1時間だけ練馬駅頭にある小さな公園でスタンディングをしている。その後二時間ほど学習会を行っている。

 

 

日本の青空Ⅲ 映画「渡されたバトン・さよなら原発」上映会を成功させよう

映画「渡されたバトン・さよなら原発」(日本の青空Ⅲ)の上映を決めました。実行委員会が発足し、来年2月25日練馬文化センター大ホールで朝、昼、夜の3回上映することになりました。
実行委員会では、みなさん方に手紙を送り呼びかけ人に名前を連ねていただき、宣伝、チケットの普及をお願いします。ご協力お願いします。


10月・11月の行事
10月13日  さよなら原発統一行動、練馬アクション、日比谷音楽堂、国会包囲
10月19日  九条の会東京交流会10:00~杉並産業商工会館
10月20日  ねりまDEライブVOL2,14:00~、17:00~土建 練馬支部会館
11月3日  憲法記念日平和リレートーク14:00~大泉学園駅頭
11月5日  渡されたバトン・さよなら原発(日本の青空Ⅲ) 試写会18:40~勤労福祉会館
11月14日 憲法学習会 渡辺治、山本太郎、吉良よしこ、練馬文化センター
11月16日 九条の会全国交流会 10:00~教育会館


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