77号 2018年2月発行

「米朝危機」と日本の役割                     和田  春樹(東京大学名誉教授)                                                                                

  今日われわれの平和、われわれの未来を決する最大の問題は米朝紛争、米朝危機が極まるところ、米朝戦争がはじまるかもしれないというということであり、したがって戦争に反対し、核戦争に反対し、平和憲法を守ることを願う者の課題は米朝戦争をふせぎ、平和な未来を獲得することである。
 国連安保理事会とそれを主導する米国、日本両政府の見るところでは、現在の危機は、北朝鮮という「ならずもの国家」が国際秩序に挑戦し、安保理決議が禁じている核ミサイル開発を強行するという「挑発」をつづけていることからくる。しかし、この見方は正しくない。現在の危機の本質は、多年にわたる米朝対立、米朝紛争にあると考えなければならない。 
 朝鮮戦争は1953年7月に終わったが、中朝軍と国連軍16か国のあいだに休戦協定が結ばれただけであり、平和は構築されず、軍事的対峙状況がつづいている。その後米軍が韓国に駐留し続ける間、北朝鮮は朝ソ友好協力相互援助条約によって核の傘を提供され、守られていた。70年代には米中和解によって中国にとっての朝鮮戦争が完全に終わることになり、南北関係も変化した。朝鮮半島での軍事的対峙状況は米朝対立に限定されるにいたった。
 ところで、1990年前後にいたり、冷戦の終わり、ソ連社会主義体制の終焉という世界史的な大変化がおこり、その中で北朝鮮が孤立したのである。国家的な危機に直面した北朝鮮はまず、ソ連の核の傘をうしなう中で自前の核武装を模索することを決意した。同時に、韓国がソ連、中国との国交樹立に進む中で、自らも日朝国交正常化をおこなおうとした。この2つのオプションで危機と孤立から脱しようとした。しかし、核兵器大国米国は北が米国にむけて核開発をすすめ、核武装することを許さず、それを阻止するために執拗に努力した。他方で、日朝国交正常化交渉が始まると、日本に圧力を加えて、核開発の統制と核武装の阻止を日朝交渉に加えさせて、交渉を行き詰まらせ、以後も日本が核開発を進める北朝鮮と国交を正常化することがないようにさまざまな策を講じたのである。これによって米朝関係はあらたな紛争状態に入り、25年の曲折をへて、今日の危機的関係にいたったのである。
 北朝鮮は核実験を5回おこない、核兵器を保有するに至り、米国にとどくICBM、「火星15号」の発射実験もおこない、核ミサイル兵器を完成させたと宣言するにいたった。米国と日本はこれを許さず、核ミサイル兵器体系の破棄を要求している。日本は北朝鮮との国交正常化交渉を停止し、国交正常化を行わないという態度を明らかにしている。
 しかし、北朝鮮は核ミサイル兵器の放棄の要求を拒絶している。この行き詰まりの中で、米国と日本が打ち出す方策は昨年11月のトランプ大統領の東北アジア訪問のさいに明確に表明された。
 トランプ大統領は11月5日に横田基地に降り立って、米軍将兵と自衛隊員2000人を前に演説した。「いかなる独裁者も、米国の決意を軽視すべきではない」、「同盟国とともに、米国を守るために圧倒的な能力を行使する用意がある」と述べた。横田基地からヘリコプターでゴルフ場にむかい、安倍首相とゴルフをしながら、会談した。以後出発までのあらゆる機会をとらえて、両首脳は会談をつづけた。
 六日の公式首脳会談のあとの記者会見で、会談の内容を説明したのは安倍首相であった。安倍首相はまず「すべての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持」していると述べ、このたびの会談で「日米が100%共にあることを力強く確認した」と述べた。さらに首相は「対話のための対話」は意味がない、「今は対話のときではなく、最大限の圧力をかけるときです」と述べたうえ、「北朝鮮の政策を変えさせるために、日米が主導し、国際社会と緊密に連携して、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全一致しました」と述べた(官邸ホームページ)。
 目的は、北朝鮮に核ミサイル開発を全面放棄させることであることは再三にわたり確認されている。このたびはこの目的を達するために、「圧力を最大限まで高めていく」ことで完全一致したことが宣言された。圧力の第一は、国連安保理がさだめる経済制裁であることは明らかである。しかし、それだけでなく、「すべての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場」を一貫して支持するとしていることは、米国が北朝鮮に軍事的手段をとると威嚇することを念頭におき、それを支持したものである。すなわち米国の軍事的威嚇の行為に対して日本の自衛隊の艦船、航空機が米艦、米空軍機に対する防護などの措置をとることを約束するものである。
 しかし問題はここにとどまらない。米国は最終的には、北朝鮮にたいする軍事的措置をとることを表明している。実際にこの最終措置は、くりかえされている軍事的威嚇の行為、演習がいずれかの時点で、そのまま実戦に移行するという形で行われるほかはない。そのとき日本政府は事前通告をうけるのか。事前通告があろうとなかろうと、米国が軍事的措置をとるときはそれを支持するということが事前に表明されたのか。
 このあたりのこともトランプ大統領と安倍首相の間で議論がなされたのであろう。安倍首相はそのような機微にわたる協議の内容を国会で明らかにしなかったが、11月28日に放映させた「NHKスペシャル独自取材・対北朝鮮日米首脳会談の内幕」の中で、最後に、「日本を守るために、共同対処する唯一の同盟国がアメリカだ。トランプ大統領にも憲法上の制約があることは説明している。その中において日米の協力の絆を強化していくことはまさに国民の命を守るために資することだ」と述べている。つまり、トランプ大統領からの協力要請に対して、「憲法上の制約」があるが、最大限協力することを約束したという意味である。つまり、日本は米国の第一撃に参加することはできない。しかし、北朝鮮は米国から攻撃があれば、在日米軍基地へのミサイル発射で反撃すると公言している以上、日本に向かって北朝鮮が攻撃したら、自衛隊に防衛出動を命じて、米国の軍事行動に以後参加させるという方針が伝えられたのであろう。そうなら、実に重大な協議がおこなわれ、重大な合意がなされたと考えられる。
 じて、米国の軍事行動に以後参加させるという方針が伝えられたのであろう。そうなら、実に重大な協議がおこなわれ、重大な合意がなされたと考えられる。
 日本を出て、トランプ大統領は日本から韓国へ行った。韓国国会での演説は何一つ遠慮することもなく、まさにアメリカ大統領として、言いたい放題言った演説だった。北朝鮮の体制について、「監獄じて、米国の軍事行動に以後参加させるという方針が伝えられたのであろう。そうなら、実に重大な協議がおこなわれ、重大な合意がなされたと考えられる。
 日本を出て、トランプ大統領は日本から韓国へ行った。韓国国会での演説は何一つ遠慮することもなく、まさにアメリカ大統領として、言いたい放題言った演説だった。北朝鮮の体制について、「監獄国家」、「収容所列島」、「カルト集団に支配された国」、「野蛮な体制」、「ならずもの国家」と口をきわめて、罵倒した。北朝鮮国民の生活は「奴隷の方がまだましだと考えるくらいだ」と言い、北朝鮮は「人間にふさわしくない地獄だ。」と言いきった。大統領は、韓国の国会の演壇から、北朝鮮のような悪の国家、非道徳な国家は破壊されなければならない、その国民は解放されなければならないと主張したのである。「あなたが犯した神と人間に対するあらゆる罪にもかからず、われわれははるかによりよい未来への道を提示するだろう。それは、攻撃をやめ、弾道ミサイルの開発を停止し、完全で、検証可能な全面的な非核化をするならば、はじまるのだ。」つまり、北朝鮮の指導者は両手をあげて出てきて、米国大統領に無条件降伏せよというのである。日本でトランプ、安倍は100%の同意、完全に一致したと確認してきた上でなされた以上、この通告は米日共同の対北朝鮮通告と言う意味をもったのは間違いないところである。
 トランプ大統領はアジア諸国歴訪の旅から帰って、北朝鮮をこんどは「人殺しの国家」とよび、テロ支援国家指定を復活させた。これに対して、北朝鮮は、11月29日、1万キロ以上飛びうるICBM「火星15号」を発射して、「国家核武力完成の歴史的大業、ロケット強国偉業」をなしとげたと発表した。米朝対立は決定的な危機的局面を迎えた。米国がいつ軍事的な措置をとるかわからない段階にはいったのである。
 このとき、国連事務総長グテーレスの使者として事務次長フエルトマンが北朝鮮を訪問した。このような措置が突如としてとられたのは、危機が決定的にたかまっているからである。さらに平昌オリンピックをめぐって、南北政府の協力、オリンピック期間の合同軍事演習の中止、北選手の参加問題、芸術公演などと、対話を促進する動きがとられた。これも緊張を緩和させなければならないという韓国文在寅大統領の必死の努力がみのったものである。韓国の指導者は米朝戦争に反対だとはっきりと表明した上で努力をおこなっている。では、米朝戦争になったら、大きな被害をうけることになる日本はどうすべきなのか。安倍首相はトランプ大統領と一体化して、北朝鮮に核ミサイル開発を放棄することをもとめて、経済制裁と軍事的威嚇を推進している。そして米国が軍事行動をとる場合には、それを支持して、最大限の協力をおこない、第二段階で戦争に参加するつもりであるようだ。
 これは日本と地域の平和と安全を破壊する方針であるだけでなく、国際紛争解決の手段として戦争はもとより武力による威嚇をも永久に放棄した日本国憲法九条1項に違反するのである。米国が軍事的手段をとるさいには、一緒に戦ってくれるように依頼され、「I’m with you」と答えているのだとすれば、米朝戦争参戦の暁には、自衛隊を完全な軍隊にするための抜本的な憲法改正に進めると見通しているのだろう。
 日本国民はどうすべきなのか。まず韓国大統領、韓国国民の努力にならって、2020 年の東京オリンピックまでは平和休戦状態を確保する必要があるのではないかとあらゆる議員を説得する必要がある。オリンピックには反対だという人が多いようだが、政治家や国民を説得して、米朝戦争はふせぐ必要があるという意見を聞いてもらうための手がかりだと思って、やってみてほしい。韓国の手本にみならうことだ。
 野党政治家に話ができれば、国会で、安倍首相に質問して、米国の軍事行動についてトランプ大統領とどういう話をしているのかを問いただしてもらうことだ。トランプのような危険な大統領と心中するような愚かな方針はやめてもらいたいと言う必要がある。
 憲法ということなら、米国の軍事的威嚇に自衛隊を協力させることは憲法九条第一項違反だと主張することだ。憲法九条をまもるというなら、憲法九条で平和を実現しなければならない。日本も北朝鮮に対して緊張緩和、対話促進の道にすすまなければならない。それは日本国家の方針となっている日朝国交正常化の道を追求することである。   (完)
           
 

 3000万署名用チラシ解説     
 石神井台九条の会の古山博之さんが、配布チラシについて、署名集めのさいに出されるであろう質問に対する詳しい解説を書いてくださいました。ここでは残念ながら紙面の関係で、その1部を抜粋して掲載することしかできませんので、解説をご希望の方は事務局にお問い合わせ下さい。                                  

   

私たちの生活

(1)日本の「軍事費」の現状
 2017年度の防衛予算は、5兆1251億円で、一般会計総額の5.3%に及びます。この額は、世界で8位になります。また、日本の軍事力は既に7位です。
      世界の軍事力ランキング(Global Firepower:2017年).
(2)軍事費の増加について
 自民党の安全保障調査会の中間報告 2017.6.20産経ニュース
 自民党の安全保障調査会は、「 NATOがGDP2%を目標としていることに関連し、参考にする」としています。現在、日本の「軍事費」はGDP1%なので、2倍にするということです。2倍になれば、10兆円。一般会計総額の10%超になります。社会保障費はどんどん抑制されていきます。

安倍九条改憲

 安倍総理は、「『自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任です。自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。」と発言しています。(2017.5.3 「第19回 公開憲法フォーラム」)
また、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は、「①365日24時間、日本の守りに専念」、「②国際平和協力活動に、世界各国で貢献」「③国民の暮らしを守るため、年間500回の災害救助へ」「今こそ憲法に自衛隊を明記しよう!」と主張しています。(同会のビラ)
 しかし、自衛隊員の命を守ってきたのは、憲法九条なのです。
①自衛隊を憲法に明記すると、憲法9条が空文化して、無制限な集団的自衛権によって、海外でアメリカなどと自由に戦争できることになってしまいます。
②イラク派兵では、「非戦闘地域」、南スーダンでは、「現に戦闘行為が行われている現場以外」で自衛隊は活動していました。「非戦闘地域」、「現に戦闘行為が行われている現場以外」という制限があるのは、憲法9条があるからです。憲法9条が空文化すれば、自衛隊は、「戦闘地域」にまで派遣されることになります。災害救助や海外の復興支援に武器はいりません。必要なのは専門的な技術です。

北朝鮮問題 

アメリカは、2002年にイラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難し、その後、2003年に大量破壊兵器を保有しているとの理由で、イギリスとともにイラクのフセイン政権を武力で倒しました。北朝鮮は、イラクのような結果を避け、自らの体制を維持するために、アメリカに対して核ミサイルをちらつかせて、交渉の糸口をつかもうとしているのです。そして、日本が対象となるのは、日本にアメリカの軍事基地が多く存在するからです。
 安倍総理は軍事的な対立を煽って、軍備を増強していますが、軍事的衝突が発生した場合の被害について、何ら説明をしていません。
 「核戦争になったら、韓国では朝鮮戦争の10倍、日本では第二次世界大戦に匹敵する犠牲が出る」と元米国防長官ウィリアム・ペリー氏は言います。
 このような被害を考えれば、事的な対立ではなく、あらゆる問題を話し合いで解決する重要性がわかると思います。

 

署名への取り組み ─金森孝子さんの場合─
            
■3000万人署名に取り組むようになったきっかけはどのようなものですか?
 ─安倍さんのやること、なすことが国民無視で本当に腹が立ちました。この怒りをどこにぶつけたらいいのと考えて、この際、自分の意思表示がしたいと思ったのがきっかけです。
■そのためにどうなさったのですか?
 ─憲法の勉強をしました。大泉町九条の会にも加入しました。当初はチラシの挟み込みのお手伝いをしていましたが、九条の会に加入するつもりはあまりなかったのです。会報が欲しくて結局加入しました。伝えることはできるし、大切なことだと思います。ですから今日も午後からの総会には出席できないのですが午前中のチラシの折込は手伝いに来ました。
■金森さんにとって署名とはどのようなものですか?
 ─署名とは意思表示のことだと思っています。
 また他の方に署名をお願いして、書いていただくことで繋がれると思っています。繋がることです。
■具体的な署名活動のやり方をお話していただけますか?
 ─まず、用意・心構えとして、いつもバッグの中に、返信用の専用封筒と署名用紙、それに切手は入れているようにします。 これでいつでも、どこでも3000万人署名の話が出た時に対応できます。時とか場所についてですが、どのような時・どのような場所でも、様子を見ながら切り出せる時には必ず切り出そうと考えています。
 レストランで話しているときとか、クラス会とかで、さり気なく話を切り出して、どう考える?とか話しかけたりしています。
■署名用紙に記入していただいたものを回収するのはどうなさっておられますか?
 ─基本的に、一度お目にかかったら、必ず次の約束を取りつけるようにしています。ひと月後にお目にかかりましょうと約束するのです。次に会ったその時に署名用紙を持ってきてもらうわけです。
 持ち帰って、ご家族などの署名を取り付けていただける方の場合は、それで良いのですが、中には預かれない人もおられます。そのような場合には、その場でその方に署名していただくようにします。
 また、次にお目にかかるのが難しかったりする場合には、返信用封筒に切手を貼ってお渡しすることもあります。
 こういうことですので、切手はいつも持っていないといけません。
■大変な工夫ですね。その他に何か工夫なさっていることはごいますか?
 ─駅頭で署名活動する時には、一筆とか二筆とか少しだけ署名してある署名用紙を使うようにしています。書いてくれ易いみたいです。
■ありがとうございました。それでも断られることも多々おありでしょう?
 ─そうですね。断られてもメゲないです。強くなりました。
■最後になりましたが、今までどのくらいの方から署名をいただきましたか?
 全部、提出しちゃったので分からないのですが、数十といった感じだと思います。これからも頑張ります。

※これは総会(12月9日)の会場でインタビューにお答えいただいたもので、現在は何百筆も集めておられます。金森さんのやり方は大いに参考になるのではないでしょうか。

                                        聞き手 松下光雄(ねりま九条の会会員)

 

「『梅雨空に9条守れの女性デモ』裁判」 勝訴するも市が控訴!

 この句を公民館だよりに載せることを、さいたま市が「世論を二分するテーマのため掲載できない」と拒否。提訴したところ、昨年10月、裁判所は市が作者の女性に5万円を支払うよう命じました。ところがさいたま市が控訴したため、3月1日に再び裁判が行われます。現在、各地で行政の萎縮が起こっています。みなさまのご意見、体験などをお寄せください。

 

 

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