102 号 2022年4月発行

 

 

世ウクライナ戦争と日本政府の責任
 そしてわれわれは─
                             和田 春樹
 
 

 4月6日ねりま九条の会と九条の会ねりま連絡会の共催で、ロシアの研究をされてこられた和田春樹さんをお招きして学習会を行いました。和田さんは大変詳しいレジュメを用意してくださいました。そこで、紙面の都合でかなり省かせていただいてはいますが、レジュメを中心にご報告いたします。

■ロシア軍の侵攻と停戦交渉
 ロシア軍の侵攻によりウクライナ戦争がはじまってから40日がすぎた。ロシア軍はキエフを包囲し、総攻撃を加えると見えたが、立ち止まり、撤退した。そして兵力をウクライナ東部、ドンバス方面の作戦に動かすと発表した。
 ロシア軍が撤退したキエフ近郊ブチャでは民間人の遺体400人以上が発見され、ロシアの戦争犯罪、ジェノサイドだとして、追及の声があがり、西側は新たな制裁を決定しようとしている。米国は東部戦線にむかうウクライナ軍に旧ソ連の戦車をあらたに提供することをきめた。トルコの仲介によるロシアとウクライナの停戦交渉は3月末にかなりの前進をみせたが、その後はふたたび停滞している。
 米国は、プーチン大統領が5月9日というロシアにとっての大祭典の日、対独戦勝利の日にウクライナ戦争勝利を宣言するのではないかと想定し、これを許さないとの決意のもとに戦争の支援に力をそそいでいるようにみえる。ゼレンスキー大統領は停戦のためにプーチン大統領と会うという希望を表明する一方、世界的危機の克服のためには、ウクライナがこの戦争に勝利することが必要だと演説をして、抗戦継続を覚悟しているようにもみえる。
 戦闘は東部においてなお継続する傾向を示しているが、戦争が一日でもながく続くことはそれだけ多くのウクライナ人とロシア人が殺され、それだけ多くのウクライナの家と財産と記憶が破壊され、ウクライナとロシアの将来にとりかえしのつかない打撃をあたえることになる。それだけではない。ウクライナ戦争は米国を盟主とする西側陣営とプーチンのロシアとの間の準世界戦争に転化しつつある。
 だから、この戦争をただちに終わらせなければならないと考える。ロシア軍とウクライナ軍は現在地で戦闘行動を停止し、正式に停戦会談を開始しなければならない。
 戦闘停止を両軍に呼びかけ、停戦交渉を仲介するのは、トルコがおこなっているが、ロシアのアジア側の隣国、日本、中国、インドも加わるのが望ましい。私たちは3週間前、開戦3週間後にそのことを提案した。

■ 人の歴史学者がロシア大使に停戦を促す

 戦争をとめる方法は二つしかない。一つは独ソ戦、日米戦争、イラク戦争のように、一方が相手軍を粉砕し、相手国を焦土化して、降伏させるという方法である。いま一つは朝鮮戦争のように、停戦交渉をはじめ、合意にいたるという方法である。第二の道も決して平たんではないが、武器のレベルがこの上なく高まっているいまは第二の道をとることが至上命令だ。 第一の道を貫くことはドイツと日本についてはなしとげられたが、指導者が敗北、降伏をうけいれるまで、国民がどれだけ苦しみをうけなければならなかったか、大空襲や二箇所に落とされた原子爆弾落とされを経験したわれわれはよく知っている。 だから、いまでは第一の道をとることは考えられず、第二の道をとるほかないのである。私はロシア史を研究してきた同僚たちとともに、即時停戦をよびかけ、停戦交渉の本格的開始をもとめ、その交渉に日本、中国、インドというロシアの東と南の隣国が仲裁者として参加することを提案する声明を3月15日に出した。戦争を止める第二の道の提案である。ポーランド、ハンガリー、中国史の研究者も数名加わって、14 名の憂慮する歴史家の声明となった。
 この声明には、「こういう声を聞きたかった」と、支持して下さる方が現れている。日中印は立場が違い、相互に衝突もしている。だからこそ三国が平和のための仲裁を一緒にやれば、自分たちにも意義があるはずだ。
 この声明をもって、私たちはまず3月16 日外務省を訪問し、山田欣幸ロシア課長に訴えた。ついで、ロシア大使に会見をもとめ、24 日に発起人6人で大使館を訪問して、一時間半にわたり面談した。
 冒頭ガルージン大使は 分にわたって、ロシアの公式的な立場を説明された。私たちは、ロシアにはロシアの言い分があるとしても、隣の国をあのような大軍で攻め込むのは衝撃をうけた、このような「兄弟殺し」の戦争をしては、ロシア人とウクライナ人の平和的な協力関係は永遠にこわれてしまうのではないかと指摘した。
 私たちの方からは、即時停戦、停戦会談の開始、3国による停戦の仲裁という私たちの提案を力説した。これについては賛成、反対、いずれも明瞭な意見の表明はなかった。ただし日本には仲裁に立つ資格はないというようなことは一言もいわれなかった。大使は「停戦会談はおこなわれている。話がまとまってくると、ウクライナ代表団のスカートの端を踏む動きが出る」と言った。アメリカが邪魔をするということのようだ。
 結局、私たちの対話はいかなる合意点もみいだせなかったが、大使は本日の会合のことはモスクワに報告すると言われた。私たちはロシアも停戦を考えていることを感じ取った。私たちの提案をさらに推進していく決意をかためて帰った。大使との問答をただちに報告したが、ロシア大使館も会合の報告をフェイスブックに日本語とロシア語でのせた。我々が停戦をもとめて訪問したということだけは書いてある。

■われわれは何をするべきか

 ところで、日本政府は何もしない。外相がトルコを訪問し、首相がインドを訪問したのは、アメリカの意をうけて、ロシアに対する圧力をつよめるための外交であったのではないかという疑惑がある。
 さらには外相がポーランドを訪問して、ウクライナ難民 人を連れ帰っただけである。ロシアに対しては制裁をおこなったが、平和条約交渉は当分停止するとして、北方4島は我が国固有の領土だと再び言い出して、圧力をかけている。実に愚かな政策である。自分でロシアとの戦争をふせぐことを考えない。アメリカに守ってもらうから安心だという態度である。国民はテレビで実況放送をきくようにウクライナ戦争の画像と解説を聞いている。これは基本的に米国がおこなっている戦況の発表とその分析に基づいている。またゼレンスキー大統領の訴えも連日のように流れている。こうなると、解説者も国民もウクライナがんばれ、プーチンを押し戻せ、打ちのめせという気分になるほかない。停戦交渉が前進してからは、停戦のことも語られるようになったが、その成功に対する否定的な意見が多い。
 平和運動では「ロシアはウクライナから即時撤退を」という主張が多く見られる。しかしこれは第一の道を主張するものにひとしい。「日本政府は平和的解決の先頭に立て」とは言うが、何をせよという提示はない。停戦という言葉自体が出てこない。
 停戦をすすめるには会談の仲介者、仲裁者を立てる必要がある。公式、非公式でもいい。私たちがロシア大使館に言って、停戦の条件について、論じたのも非公式の仲裁をしたことになる。停戦には停戦監視団も必要になる。二国間の停戦合意は当然に国際会議をひらき、関連国が承認し、擁護することを約束しなければならない。世界の政府、世界の国民が介入して、停戦合意を支えなければならないのである。だからはウクライナに平和を願う者は、停戦をなによりも求め、そのために加勢しなければならない。


ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、学び続ける平和ゼミナールの高校生

                                    中出 律(東京高校生平和ゼミナール世話人)
 ロシアのプーチン大統領による隣国ウクライナへの侵攻が始まったのが2月24日。何とかしなければということで沖縄、広島、東京の高校生平和ゼミナールの高校生たちが急遽メールなどで連絡をとりあい、「プーチン大統領すぐに戦争をやめてください」というタイトルで「緊急署名」を呼びかけたところ20日までに計5212筆の署名が集まった。21日に小学生、中学生、高校生、大学生計17名と世話人20 名以上でロシア大使館に署名を提出。東京の高校生のTさんが「唯一の戦争被爆国の日本の高校生が声を上げたことの意味は大きい」と述べた。また沖縄高校生平和ゼミナールからのメッセージ「日本は過去に戦争反対ということを言えない時代があった。ロシアでもそのような状況がある。今こそ戦争反対と言うべきだ」を紹介した。ウクライナ大使館まで」30分のピースウォーク。
 ウクライナ大使館では、Yさん(高3)が「ロシア大使館に行き、ウクライナへの侵略に抗議する署名を提出してきました。私たちは、決してロシアの文化やロシアに住む人びとの人生そのものを批判しているわけではありません。」と挨拶。ウクライナ大使館の女性二等書記官サヴォスキーさんは「皆さま、ありがとうございます。このような悲惨な戦争が絶対おこらないようにするにはどうすればいいか。次世代を担う大人になる皆さんがしっかり、歴史を学んで批判的思考を身に着けることが大切だと思います。さきほど、ロシア人アを責めないということを言っていましたね。でもプーチンを大統領に選んだのはロシア人です。今でもプーチンの支持率は高いです、驚くべきことですが。教育が大事です」と貴重なお話をしてくれた。

 

練馬区長選─吉田健一氏惜敗 練馬区長選挙の結果


 4月17日投票の練馬区長選挙の結果は吉田健一氏93397票、前川あきお氏95540票、2153票差で前川現区長が当選した。練馬区の選挙史に残る僅差の結果となった。
零時を超えた吉田健一事務所は、敗北にもかかわらず万雷の拍手が沸いた。吉田氏は「立候補表明し3か月、ほぼ無名の私がここまで迫るとは、悔しさはあるが悔いはない、全く知らない多くの仲間に支えられたことが宝」と感謝の言葉を述べた。
 吉田氏は「区長にとって区民は家族、困ってる人は探し出しても助ける区政にしたい」と区民主役の区政実現を訴えた。居丈高なワンマン区長に対して、誠実で温かい人柄に魅了されて多くの市民と野党が結束した。ねりま9条の会は、9条守り、市民と野党の統一候補、吉田氏勝利に全力を挙げて闘かい、次は勝てるという確信の持てる選挙となった。(大柳武彦)



年金学習会を終えて
     憲法を生かし、軍事費を削り社会保障の充実へ
        

 3月3日、ねりま九条の会、九条の会ねりま連絡会主催の年金学習会を開催しました。幅広くお知らせをせず、九条の会のメンバーの学習会と位置づけたため、参加者は10人ほどでしたが、日本が如何に国際法や憲法を無視してきたかを知ることができました。

■生かされない憲法の精神

 日本の軍事予算は毎年膨張し、2022年度予算では、補正予算をあわせると6兆円を超え、さらなるアップや核共有の議論まで出てきている。
 その一方で、政府は低年金の構造的原因にメスをいれることなく、マクロ経済スライドを実施するなど、年金引き下げを強行してきた。

■困窮する低年金高齢者
 年金しか収入がなく、それで暮らす高齢者世帯は約6割にのぼる。国民年金のみの受給権者(納入期間25年以上)の年金は、男性平均5万4014円(月額)、女性5万 円で4万円未満が79%を占める。国民年金は、40年間支払い続けても、年金支給額は月額にして約6万5000円で、生活保護の生活扶助額にも満たない。
 厚生年金受給権者の平均支給額は月額14万6162円(基礎年金を含む)。しかし、男性は16万4770円、女性は10万3159円で、実額で6万円も女性は低い。女性の年金受給権者のうち月額10万円未満が50%を超えている。
 高齢者のいる世帯の約4分の1が実質生活保護基準以下の貧困状態にあり、なかでも、女性単身世帯では2人に1人と突出している。さらに、無年金者が数十万人もいる。

■なぜ女性は低年金なのか?

 日本の公的年金制度自体、年金の 種類で年金額に大きな差があり、また同じ年金でも男女格差がある。
さらに女性は、
・結婚、出産、介護等で雇用中断、働き続けても昇格・昇進できず低い賃金におさえられる。
・家事・育児・介護などのケア労働を無償で担わざるを得ない。
・短時間勤務では厚生年金に加入できない。
等々、長年のジェンダー不平等な扱いが積み重なって年金の2階部分(厚生年金等の標準報酬比例部分)を積み上げることができないのだ。


■年金引き下げは憲法と国際法違反

 国連には、「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」があり、そこで社会保障に関する「社会権規約」が作られ、日本も批准している。
 「社会権規約」は、社会保障の権利の後退的措置、つまり年金や社会保障の引き下げは、利用可能な資源を最大限利用してもそうせざるを得ないときに限られ、 その必要性や正当性は国が主張し、立証しなければならないとしている。この「社会保障の後退禁止の原則」は、国際的に確認されたルールであるもかかわらず、日本は無視し続けている。
 日本の憲法25条も、1項で国民に「健康で文化的で最低限の生活」を保障し、2項では、国が社会保障などの向上・増進に努めなければならないと定めている。年金や社会保障を切り下げることは、よほどの理由がなければ違憲ということになる。

■年金積立金の国際比較

 年金積立金は、厚生年金、国民年金、共済年金をあわせて190兆円に上る。日本の年金総額は約55兆円なので、給付金の4年分となる。
ヨーロッパ諸国の年金積立金は、ドイツは給付金の1.6ヶ月分、イギリスは2ヶ月分、フランスは1ヶ月分で、日本の溜め込み額は飛び抜けている。溜め込まれた年金積立金は計画的にとり崩し、活用するべきである。
また、日本の社会保障財源は先進諸国と比べて公費負担が少なすぎる。公費負担はスウェーデンの50.9%、イギリスの50.66%に対して、日本は38%に過ぎず、事業主負担は、フランスの41.2%、スウェーデンの38%に対して日本は25.8%、被保険者本人負担は、スウェーデン9.1%、イギリス10.1%、日本は28.9%と極端に高くなっている。

■最低保障年金制度

 昨年全日本年金者組合が「最低保障年金制度実現への提言」(第3次)を発表し、年金制度の抜本的な改革を提起している。
・全額国庫負担と事業主負担による最低保障年金を土台に据え、この部分はすべての人が受給することがでる。つまり無年金者は存在しないことになる。その上に 収めた保険料に応じて加算される仕組みである。
・日本年金者組合では、土台の最低保障年金部分を月額8万円としている。
・ その財源は、従来の国庫負担と事業主負担に加えて、大企業優遇、年金制度の抜本的な改革を提起。
・ 高額所得者優遇税制を「応能負担」の原則へ転換するとともに、所得再配分機能の強化によって 捻出する。
・最低保障年金制度は、世界の流れ となっており、全額国庫負担の基準で見るとスウェーデン、フランスなど カ国で実施され、韓国マレーシア、ベルギー、イ タリア、イギリス、アメリカなどでも税による高齢期所得補償が行われている。

 今野さんは最後に「誰もが安心して生活できる社会の実現のための幅広い議論が進むことを願っています。私も弁護団の一員である年金引き下げ違憲訴訟も正念場を迎えています。司法が、国際人権法と憲法に基づく判断をするよう、原告団へのご支援を切にお願いします」と訴えました。

■貧困家庭の多い練馬区

 講演後の話し合いの中で練馬年金者組合の矢部さんから ・区内高齢者の3人に1人は年所得80万円以下、約半数は年所得200万円以下。
・区内一人暮らし高齢者の約半数(約2万2000人)は所得ゼロ、約5万人は月所得4万円以下で暮らしている。
・練馬区の一人暮らし高齢者の生活保護受給者は東京都や全国を上回って増加している。
・70代の自殺者が増加している。
という練馬の実態についての発言があり、大変ショックを受けました。

 憲法九条と年金問題はコインの表裏と今野さんは言います。年間何兆円もの税金を軍備に使いながら、非正規雇用を増やし、あるいは奨学金の返済に追われて、年金保険料の支払いを躊躇する人々を増やす。その結果、将来に渡って低年金受給者がますます増えていく。おそらく自殺者も増え続けることでしょう。
 年金問題は日本国憲法9条25 条 に関わる大きな問題であることを認識することで、私達も何らかの運動をしなければならないと強く感じた学習会でした。   

                                  

 「練馬区の美術館・サンライフ問題の理解
         ー整備計画、公文書と財源ー」 
       眞嶋康雄(練馬区立美術館を考える会事務局)

 昨年 月以降、練馬区立美術館(図書館併設) 「再整備」(リニューアル)と福祉施設サンライフ練馬の取壊しや廃止を巡る問題が噴出していますが、その問題の所在、核心について整理します。

■問題の経過 

 昨年12月に区は「美術館再整備基本構想(素案)」と銘打った豪華な写真、イラストや「アートがまちに輝き、暮らしに寄り添う」「本物のアートに出会える美術館」などの華々しい文言が躍る 頁の「パンフ・基本構想」を発行しました。パブリックコメントも実施、その後区議会で審議され、「(素案)」が取れ正式な「基本構想」となりました。
 しかし、「中村・貫井地域の公共施設を考える会(代表井上陽子氏)」が開示請求を行い入手した資料によれば、「基本構想」は、昨年8月の「作業部会」で急遽区長の意向を受けた企画部と企画課が、所管課(地域文化部・文化生涯学習課)を押し退けて、「調整中」とした「70億円美術館改修計画」に基づいて策定したものです。設計や工事のスケジュールも当初より2、3年先送りしているのにもかかわらず、まったく訂正せず、「パンフ・基本構想」にそのまま載せるなど、実に杜撰な「構想」なのです。
 「調整中の基本構想」の係る計画の検討や策定を担当する公共施設等管理作業部会(総務省の公共施設の見直し・削減の方針を受けて設置された区の横断組織)や企画部は、12月の「パンフ・基本構想」の発行までは一切審議も起案もせず、決裁も求めず、区議会へ「基本構想(素案)」を議案として提出しています。区民の追及は何としても避けるようと、「基本構想」の根幹を成す「サンライフ練馬の敷地活用」を検討した資料は「不存在」と記載し、情報公開を拒んでいます (企画部などの回答)。
 公文書の開示請求は、秋元美術館長を委員長とする「美術館基本構想策定検討委員会」に関する資料も開示を求めていますが、回答していません。このことは、「パンフ・基本構想」と「検討委員会」の提言との関連が極めて薄いことを物語り、当構想が前川区長のトップダウンに基づき策定され、計画が進められていることを物語ります。

■問題の本質と背景 

 「パンフ・基本構想(素案)」は、区民へのパブリックコメント実施を行い、2月区議会の審議に間に合わせ、「(素案)」を取り本格的な「基本構想」として捏造するために、民間業者に作成させた、およそ公文書としての性格はまったくない公文書偽造に等しい代物です。
 区が公開している「練馬区の財務書類(令和2年度)」の貸借対照表や「基金の明細」には、700億円、または1100億円もの現金預金の存在が明らかになっていますが、これらは長年に渡る区民サービスの切捨てによる「黒字」の溜め込みです。
 2018年に導入された公会計制度は、自治体の資産と経営状況を可視化させましたが、国は各自治体に「財政健全化」を強く求め、業務収支などの黒字化を求めました。同時に基金・積立金などの巨額の溜め込みの存在も露呈しました。国や都などは、練馬区に「公共施設等管理計画」や「公共施設等作業部会」を通じて、教育、福祉施設の民間委託と廃止を進める一方、巨大事業の実施による「基金」の取り崩しを求めています。今回の美術館、サンライフ練馬問題の背景でもあり本質がここに表れています。
 区民の命と生活を守る区政か、大事業優先・財源浪費の区政かが今問われています。                               

 

参議院選挙に向けて
  「改憲を許さない全国署名」に取り組みましょう  
                                                                            

 2021年の総選挙で、岸田政権は改憲に積極的な勢力の議席数を増やし、3分の2を占めるようになりました。岸田首相は中国や北朝鮮を念頭に「敵基地攻撃能力の保持」を謳い、「党是である憲法改正に精力的に取り組む」と公言する中、衆参の憲法審査会が毎週開かれるようになりました。
 今年度の防衛予算は5兆3422億円、補正予算を加えると6兆1744億円という膨大な額に増額、「GDP2%を念頭に増額を目指す」とまで踏み込んでいます。
 さらに、ウクライナ情勢を利用して戦争ができる国づくりを目指す動きも目に付く中、9条改憲NO!全国市民アクションが、改憲4項目に反対し、人権や暮らしの向上を実現する政治を求める署名運動を、新たに開始し、取り組みが始まっています。
 参議院選挙で3分の2を占めさせないために、署名の取り組みを強めましょう。

 

戸別訪問による署名活動に参加して                       北町九条の会 中村 貞子

 北町九条の会では、戸別訪問による署名活動をすることにして、会員のNさん宅に集まった。集まったのは女性4人だけだったので、2グループに分かれて活動することにした。
 最初は都営住宅を訪問することに決めた。都営住宅は6階建てで4棟並んでいる。私とTさんが組み、NさんとYさんが組んで活動した。
 私達は6階まで中央のエレベーターで行き、右と左に分かれて行動した。署名活動の方法など、誰からも教えてもらっていないので、心は迷いの中にいた。
 チャイムを推すと返事をして顔を出してくれる人は少なかった。その上留守宅も多く、入居していないところもあった。 
 Tさんは上手だった。チャイム越しに返事があると、「こんにちは、私は近くに住む、北町九条の会のTと申します。『憲法改悪を許さない全国署名』のお願いにまいりました」と名乗る。すると出てきてくれて、「それどういうことなの?」と質問された。そこで、「日本は敗戦後 年が過ぎ、平和に暮らしてきました。それは憲法九条が守ってくれていたからなのです。九条には、日本は戦争をしない、武器を作らないし、他の国から買うこともしないと書かれているのですが、憲法を変えて日本も戦争ができる国にしようとしているのです。現在、他の国では戦争をしているようで、悲惨な状況をテレビで観ますけれど…」と説明した。すると、「私ね、向島に住んでいたの、空襲の時、戦火をくぐって逃げたのよ、あのときは大勢の人が死んだわ」という返事。私も言葉が出た。「私は樺太から引き揚げてきたの、五歳の時」すると「あんた戦争知っているの、私もうじき 歳になるのよ」と言って署名をしてくれて、「頑張ってね」と励ましてくれた。
 それからは、私もTさんの真似をして、挨拶をしてから、話し出すことを始めた。二人はチャイムを押して、自己紹介をして署名のお願いをすることを進めていった。ときには「間に合っています」「結構です」と剣もほろろの返事が返ってくることもある。私も腹立たしく、「押し売りと間違えているみたい」と言うと、Tさんが「怒らない、怒らない」となだめてくれた。  車椅子の人も署名してくれたし、身体に障害のある人も「手が不自由なので…」と言いながら、しっかりした字で署名してくれた。
 「息子が帰ってきたら相談します」と言うので、「それでは明日来てもいいですか」と聞くと「来ないでください」と言う人もいた。「私も駄目ね、断り文句なのにね」と笑うとTさんも笑った。ある家では、出てきてすぐ「アラ中村さん」と言われてびっくり。娘が中学の時の同級生のお母さんだった。「すごいわ、頑張っているのね」と言いながら署名してくれた。
 初体験ながら、大勢の人と話ができたので、少しは役立つ行動だったと安堵している。

 

 

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