104 号 2022年8月発行

 

 

記念講演「政治の裏側を切る」
                  講師  望月衣塑子さん
 
 

 ねりま九条の会は、6月 日、文化センター小ホールで 周年のつどいを開催しました。オープニングの、鮑捷さんの中国琵琶の演奏には、たくさんの方が中国琵琶を初めて聴き、その美しい音色に魅了されたことをアンケートに書いてくださいました。
 記念講演は東京新聞記者の望月衣塑子さんによる「政治の裏側を切る」で、多方面にわたる内容を最後まで精力的に語ってくださいました。時間が少々超過したにもかかわらず、参加者から「時間が経つのも忘れて聞きいった。もっと聞きたかった」という感想が多く寄せられました。
 冒頭、映画プロデューサーの川村光庸さんの逝去に触れ、「現状肯定では文化芸術が発展しないのは、歴史を見れば明らか。突破しなければいけない壁にぶつかり越えていかなければならない」という河村さんの言葉とともに「新聞記者」や「パンケーキを毒味する」などの映画を紹介され、その後に現在進行中の時事問題をお話しいただきました。ここでは紙面の関係で部分的にしかご報告できませんことをお詫びします。



〈講演内容〉

■ロシアのウクライナ侵攻

 ウクライナの死者は数万人、国外避難者1千万人。ロシア軍は一日6万発の砲弾とロケット弾を撃ち、ウクライナ軍は5〜6000発。
 NATOの軍事支援が始まり、アメリカは、8億ドル相当の追加支援を決定。イギリス、ドイツ、フランス、カナダなども大量の兵器をウクライナに送る。5月に入るとバイデン大統領は「武器貸与法」に署名、しかしウクライナの2割をロシアが制圧、ロシア側は「ウクライナ兵は降伏か死を選ぶのみ」とウクライナ兵に投降を求める。
 一方、米国のレイセオンとロッキード・マーティンが開発・製造し、弾薬が一発2000万円もする対戦車ミサイル「ジャベリン」がウクライナに提供されているが、欧州各国からも注文が殺到している。レイセオン株は、2月から急騰、3月7日に株価が8%も上昇、4月21日にはロッキード・マーティン株価が20%上昇、4月19日には最高値更新、ノースロップ・グラマンとゼネラル・ダイナミクスも3月7日に最高値を更新している。ウクライナ戦争で得をしているのはアメリカの軍需産業とその恩恵を受けているアメリカだけという構造になっている。

◆「敵基地攻撃能力」「核シェア」「先端技術開発支援」は戦争への道
 安倍元首相は2月 日のテレビで「NATO加盟国の一部が採用する核共有を日本でも議論すべきだ」と発言。国会では参院予算委で「政府として議論することは考えていない」と否定するが、3月19日の毎日新聞によると、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する「核共有の議論をすべき」という意見が男女全体では57%を占め、男性では64%が「議論すべき」と答えている。
・自民安保調査会は、4月21日の全体会合で「敵基地攻撃能力」の名称を「反撃能力」に改称、敵の司令部などを攻撃対象とする「指揮統制機能等」を追加する提言を政府に提出。防衛費は、GDP比2%以上を念頭に5年以内の増額を岸田首相に提言。
・さらに、防衛装備移転3原則を見直し、「侵略を受けている国に幅広い分野の)防衛装備移転(武器輸出)を可能とする制度を検討する」と提言。
・日米首脳会談で岸田首相は、中国有事に関して、敵基地攻撃能力保有を含めて「あらゆる選択肢を検討する」、防衛費は「相当な増額を確保する」と発言。バイデン米大統領は、台湾有事の際には台湾防衛で、軍事的な関与を明確にし、中国牽制に踏み込んだ発言をした。
 望月さんは、これらの発言に加えて、ウクライナ戦争を機に、日本維新の会や安倍前首相が言い出した「核シェア」の危険性を指摘。また、軍事研究に使われる先端技術開発支援の法制化である「経済安保推進法」は、日本がアメリカ型の軍産複合体国家を目指しているのではないかと指摘した。

■ジェンダー平等
・日本のジェンダーギャプ指数は156ヵ国中120位。
 政府は、2025年までに「女性割合を35%」を掲げたが、国会議員の女性比率はわずか9・7%にすぎない。政治の場を男性ばかりが占めているため、女性が関わる社会問題が課題として認識されず、子育て支援、少子化、貧困対策、賃金格差の分野での対応が遅れている。クオータ制やパリテ(同等という意味のフランス語)といった女性の政治参加を促進する暫定的措置の取り組みが必要。

・選択的夫婦別姓
 岸田首相は、菅政権のときは夫婦別氏(姓)制度を早期実現する議員連盟の呼びかけ人だったが、自民党の公約から「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方についてさらなる検討を進める」との一文を削除。2021年には最高裁で夫婦同姓を再び「合憲」とする判決が出る。

・世界に広がったMeToo運動
 日本でも、デートレイプドラッグを使って性暴力に及んだ山口敬之氏を訴えた伊藤詩織さんの勇気に触発された被害者たちが、「伊藤詩織さんを孤立させない」と勇気を奮い起こして立ち上がり、運動が広がっていった。また、2019年に岡山地裁で、実父の娘への性暴力に対して無罪の判決が出たことへの抗議として、フラワーデモが全国に広がり、その結果翌年には実父に対して懲役 年の逆転有罪となる。

■岸田政権の新しい資本主義
 企業利益は20年前に比べて63兆円増、過去最高に。しかしこれは株主配当や内部留保に回り、人件費はたったの4兆円増。コロナ禍に対する国の予備費は3年で総額 兆円弱だが、それらの9割は使徒不明。国会審議なしに使われるせいだ。
 コロナによって中退する大学生は昨年同時点より8割増えて701人、学生全体の0・4%にのぼる。

■人権侵害の技能実習制度が横行

 技能実習生の67・6%が最低賃金以下で、人権を無視した働かされ方をしている実態が明らかになった。
①中国人男性がダンボール工場で作業中に指を切断したが治療費は自己負担。
②ベトナム人男性が建設会社で鉄筋型枠を学ぶ予定が除染作業を強制される。
③中国人女性が縫製工場で1日16時間働かされ時給は300円でしかなかった。
④33歳のウイシュマさんが、医療を受けさせてもらえず、入管収容中に死亡などの人権侵害が続いている。

◆メディアの役割とは

 権力側が隠そうとすることを明るみに出すことが私のテーマ。そもそもメディアの役割とは権力の監視と権力側が隠そうとすることを明るみに出すことが私のテーマ。そもそもメディアの役割とは権力の監視とチェックであり、「ジャーナリズムとは 報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報にすぎない」(ジョージ・オーウェル)。首相官邸が望月記者の質問を「事実誤認」などと指摘し、官邸の記者クラブに対応を申し入れたのは「知る権利」を狭める行為だとして日本マスコミ文化情報労働会議は、2019年3月 日、官邸前抗議集会をひらき、多くの報道機関が参加、市民や弁護士、記者のOB、OG、九条の会など、全国から官邸に批判の声が殺到した。

■憲法九条は軍国主義への反省から

・「国の形、理想の姿を語るのは憲法。今こそ新たな国づくりを共に進めよう!」と安倍元首相は言う。彼の発想には戦前、戦中の軍国主義への反省はなく、憲法とは、権力者が個人の自由や尊厳を奪うことに抵抗するためのものであるという認識はない。
・野党であるはずの「日本維新の会」は改憲を扇動。11月9日、吉村洋文副代表は、記者団に「自民党は党是で改憲と言っているが、『やるやる詐欺』である。憲法改正すべきとの意見が3分の2あるなら国民に諮るの当然」と煽っている。
・「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」という憲法九条2項は、戦前の富国強兵・殖産興業で、軍国主義・開発主義が癒着して形成された「軍産複合体」の禁止を意味しており、ウクライナ侵攻で兵器ビジネスが活性化する現在こそ重要な意味を持つ。改憲派の言う「自衛隊明記」は、戦後築いてきた自由のシステムを壊すもので、戦力不保持と交戦権の否認を無力化することになり、戦う国に変質される。この 年間平和憲法があったから、自衛隊が海外で人を殺したり、殺されたりすることはなかったのだ。

■幣原喜重郎の憲法九条への思い

・マッカーサー元帥を説得して、日本国憲法に戦争放棄を盛り込むことを提案した幣原喜重郎首相は、戦争を放棄し、一切の軍備を持たないことに対して、それは正気の沙汰ではないのかもしれないとしながら、「正気の沙汰とは何か。武装宣言が正気の沙汰か。それこそ狂気の沙汰だという結論は考え抜いた結果出ている。世界はいま一人の狂人を必要としている。自ら買って出て狂人とならない限り世界は軍拡競争の蟻地獄から抜け出すことはできまい。これは素晴らしい狂人である。世界史の扉をひらく狂人である。その歴史的使命を日本が果たすのだ」と熱く語っている。
 望月さんは最後に、幣原の戦争放棄への強い思いを語り、7月の参議院選挙で私たちの意思を表明しようと、ガンジーの言葉を紹介してくれました。
 「あなたのすることの殆どは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分自身が変えられないようにするためである」。          


円安と物価高騰

◆暮らしに欠かせないものほど土大きく値上がり

 総務省が発表する「消費者物価指数(2020年規準)」によると、6月の指数は、総合は101・8(1・8%の上昇)に過ぎませんが、食料品は103・6、うち生鮮食料品は105・7、光熱・水道費に至っては115・6に。暮らしが日々苦しくなっているのは、こうした生活に欠かせない「基礎的支出品目」の値上がりが大きいからなのです。
 「基礎的支出項目」の値上がりが大きいことを示す、もう一つの指数が第一生命経済研究所示した「朝食価格指数」です。パン、ジャム、マーガリンなど朝食に欠かせない 品目は、4月は前年と比べて5・2%と、1月の2・4%から毎月上昇しています。
 「基礎的支出項目」の値上がりが続く中で、庶民・低中所得層の生活が追いつめられていることを示す言葉が「スクリューフレーション」、「締め付け」(スクリュー)と「物価上昇」(インフレーション)を合わせた造語です。(朝日新聞7月 日)

◆円安と円高
 物価高騰の大きな原因がロシアのウクライナ侵攻と円安ですが、字数の関係から円安についてだけ述べます。
 円とドルを交換する外国為替市場(外為市場)で、1ドル=120円の時と比べ、円が欲しいという人が多くなれば1ドル=110円、あるいは100円の「円高」になり、逆に円に人気がなくなれば、1ドル=130円、140円の「円安」になります。
 外為市場と国債の売買市場とは相乗効果があります。外国人が円高になると思い、入手した円を銀行に預けるだけでなく、日本の国債を買えば国債の価格は上がります。反対にドルへの投資(外貨預金、債券や株式)が儲かりそうだと思えば円を売ってドルを買う動きが強まり円安になります。あるいは国債の価格が下がると思う投資家や金融機関は国債を売り、円も売ってドル建ての預金やドル建ての預金や債券、株式を買います。



◆円安の要因アメリカの金利引き上げ   

  米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、今年になって3月に0・25%、5月に0・5%、6月に0・75%、7月に0・75%と、4回も利上げ=政策金利を引き上げました。政策金利とは金融市場(マーケット)の金利を実体経済に見合った水準に誘導するために、中央銀行が定める基準金利のことです。中央銀行は金融市場の調節手段(金融政策の狙い)として景気が良い時は利上げによって景気の過熱やインフレを抑制し、逆に景気が悪い時は利下げによって市場金利を低めに誘導し、お金が個人消費や設備投資などに回りやすくします。
 アメリカはいま、猛烈な物価高騰(インフレ)に見舞われています。6月のCPI(消費者物価指数)上昇率は9・1%を記録、5月の8・6%を大幅に上回りました。CPIが9%を超えたのは1951年(朝鮮戦争)、1974年(第4次中東戦争)、1980年(イラン革命)、今回の4度しかありません。
 なぜこれほどのインフレになっているのか、ここではとりあえず、米国では昨年以降、コロナ禍で眠っていた人々の消費意欲が復活し、景気が急激に回復し物価が高騰しているためとだけ説明しておきます。
 お金は金利の低い市場から高い市場に流れます。お金を運用する投資家からみると、金利が高いドルは利益を得やすい。つまり、ドルの資産としての魅力が上がっている一方、金利が低い円の魅力は下がり、円を売ってドルを買う動きが広がっているのです。FRBが利上げを行う以前の円の今年の最高値は、1月21日の113・84円でした。その後どんどん安くなり、一時は138・94円(7月15日)と140円寸前まで下がりました。その後、8月に入って外為市場では、米景気の先行きに対する懸念から、円安局面で膨らんだドル保有を減らす動きが強まり、円高につながっています。
 日本は食料やエネルギーなど多くの品目を輸入に依存しています。輸入に頼るモノの価格は、円の価値が下がると支払いの際多くの円が必要になり割高になります。6月の輸入物価は1年前と比べて %も上がりましたが、その要因の4割以上を円安が占めています。

◆ふくれ上がる国債残高   
 今年3月末時点で、税収で返済しなければならない国債と借入金残高の合計は約1017兆円、「アベノミクス」による「財政ファイナンス」(政府の発行した国債等を中央銀行が直接引き受けること)という禁じ手もあって 年連続で増え、1千兆円を超えました。国債と借入金、政府短期証券を合計した広義の「国の借金」は約1241兆円で、これも6年連続で過去最多を更新し、国民一人当たり991万円もの借金となります。
 これだけ国の経済が行き詰まって府短期証券を合計した広義の「国の借金」は約1241兆円で、これも6年連続で過去最多を更新し、国民一人当たり991万円もの借金となります。
 これだけ国の経済が行き詰まって生活改善と安定に向けた経済政策、そして平和のための外交なのです。

 

「入隊したらさあ大変自衛隊」展示会

 6月22、23日ここねりホールで「入隊したらさぁ大変!自衛隊ねりま」パネル展示会を開催した。主催は、ねりま9条の会も参加する同実行委員会。この日は自衛隊が練馬区役所ロビーで、自衛隊員募集のパネル展を開催したのに合わせる形になった。自衛隊側の展示は災害救助で働く自衛隊の写真がほとんどで、人殺し訓練のパネルは皆無であったのに比べて、私たちのパネル展は、いかに自衛隊がブラック企業かが、新聞や写真、資料で埋め尽くされた。
 自衛隊では自殺者が多く、セクハラ、パワハラが日常的に行われて裁判で上司が訴えられ、病気になる者や、退官者も多く、防衛大学卒業生の多くが任官を拒否している。こうした実態はあまり知られておらず、災害出動で貢献する自衛隊ばかりが宣伝され、誤った情報で入隊して大変な思いをすることになる。
 自衛隊は旧軍の伝統を引き継ぎ、上司の命令は絶対で、プライバシーや人権は全く通用しない世界、特別公務員のため、残業手当が出ないため、過労死になるような過酷な職場である。当然不満が出るが労働組合がなく、不満を吸い上げてくれるところがないため、個人としての抵抗に終わってしまう。やめたくてもやめさせてくれず、勤めていたくとも辞めさせられる。
 しかし、無理無体で人間を拘束したり、良心の自由をも奪うことは許されず、最後の人権ラインは守られるべきだ。それには自衛隊の改革、改造が必要だ。自衛隊を国際的なレスキュー隊に特化することが望ましいが、自衛隊の民主的改革は急ぎ行う必要があるのではないだろうか。
 安保関連法が採択され、日米軍事演習が日常化し、敵基地攻撃能力保持と、まさに戦争の準備が急ピッチ、隊員への負荷は一層強まっている。維新の党が、自衛隊員の危険手当の新設、慰霊施設の建設まで提案するに至って、自衛隊員の戦死が前提の法整備が現実化している。
 最近は退職と希望者の減少で、自衛隊員は定員の7割にとどまり、高等工科隊員という名の、中学卒業者の募集も強まっていて、練馬区議会でも元自衛官の区議が盛んに、貧困家庭の中学生獲得のため、学校での宣伝を求めている。 ねりま九条の会は地域九条の会とともに、「戦争は絶対にダメ」、「自衛隊員の命を守れ」、「南スーダン派遣に反対!」「九条があるから自衛隊員の命が守られている」と、田柄商店街、北町商店街、大泉学園桜並木通りを、パレードして呼びかけた。また練馬区議会のたびに陳情を提出、「重要土地調査規制法反対」、「辺野古基地建設反対」、「軍拡、敵基地攻撃能力保持反対」、「自衛隊の練馬区役所での募集宣伝反対」などを訴えてきた。
 引き続き練馬各地で、「入隊したらさぁ大変!自衛隊の」パネル展を行いたい。これには「自衛隊の募集と現状」元自衛官の告発映画を同時上映も可。希望があれば申し込み大歓迎。 

 

新たな改憲の危機と9条の会の運動の意義

改憲発議阻止のために

先の参院選の結果、参議院でも改憲4党の議席が3分の2以上を占め、改憲に向けて動きの加速が懸念される事態となった今、九条の会をどのように進めるべきかを考える学習会が7月29日に、渡邉治さん、高田健さんを講師に開催されました。
 渡辺さんは、「改憲は阻止できる、改めて私たちの行動に確信を持って、市民と野党の共闘を強化しよう」と呼びかけ、高田さんは「参加するすべての政党は対等であり、多数による強行採決はおこなわない」という憲法審査会のルール(中山方式)が破られ、危機を迎えている。私たちにできることは、「国会外に市民と野党の壮大な共闘を作り出すこと」と訴えました。
 当日会場で配られた九条の会からの「呼びかけ文」に講演内容が凝縮して収められていますのでお届けします。

第26回参院選の結果について

 7月10日に行われた参議院選挙は、自民党、日本維新の会が議席を増やし、公明党、国民民主党を合わせた改憲4党の議席が3分の2以上を占めました。一方、市民連合の働きかけに応じた野党共闘は、過去2回の参議院選挙とは異なり限定的なものにとどまり、立憲民主党、共産党はともに議席を減らしました。改憲に向けた動きの加速が懸念されます。
 自民党は、選挙公約で、改憲4項目を提示し、「憲法審査会で改正原案の国会提案、発議を行い、国民投票を実施する」としています。維新の会は、「9条に自衛隊を明記」、「緊急事態条項を創設」との公約を掲げ、自民党に「憲法改正のスケジュールを示せ」と迫りました。国民民主党は「緊急事態条項の創設」を主張し、9条については「議論をすすめる」と述べ、公明党は「憲法9条1項、2項は今後とも堅持する」としつつ、憲法72条など別の憲法条項に自衛隊の存在を明記する「検討をすすめる」と、明文化に向け踏み込みました。岸田文雄首相は、選挙結果を受けて11日、選挙戦終盤の演説中に銃撃され死去した安倍晋三元首相の改憲への「思いを受け継ぐ」として、「具体的な内容について3分の2の賛成を結集し、できる早く発議に至るとりくみを進める」と述べました。さらに安倍元首相の国葬を強引に閣議決定し、これを最大限に利用しながら、この秋の臨時国会から来年の通常国会にかけて、改憲原案の作成、憲法審査会への提出、議論が進められようとしています。また、「敵基地攻撃」能力の保有と大軍拡、辺野古新基地建設をはじめとする南西諸島での軍備強化のごり押しなどを強力に推し進めようとしています。
 しかし、4党の間には目指す改憲条項や改憲への姿勢に隔たりがあり、改憲が一直線に進む状況ではありません。選挙終盤7月4、5日の朝日新聞の世論調査では、改憲賛成 %反対 %と大きく分かれていました。多くの有権者は改憲を望んでおらず、今回の選挙で改憲の動きが支持されたわけではありません。わたしたちの頑張り次第で国会内の動きを止めることは可能であり、これまでもそうしてきました。
 岸田政権は改憲の動きをロシアによるウクライナ侵略と中国の脅威などを口実に推し進めています。しかし、ロシアの蛮行を止めさせるために求められているのは、「戦争反対」「国連憲章守れ」との圧倒的な国際世論の結集であり、「核兵器使うな、なくせ」の世論の拡大であり、敵対的な軍事同盟の強化ではなく、対話と協力の包摂的な平和の枠組みの構築の努力です。東アジアの平和にとってこの方向の探求が求められています。
 私たちは、憲法施行後75年にわたって憲法を守り抜き、これまでも改憲派が衆参両院で3分の2を占めるもとでも改憲発議を許してきませんでした。九条の会は、憲法9条とそれに基づく日本の社会が最大の危機を迎えている今、対話や署名・宣伝など創意工夫をこらして行動を起こし、草の根から市民の共同で憲法を守り、生かす取り組みをすすめることを呼びかけます。

 

杉並区に女性新区長!が誕生!

 わたしの属している女性「九条の会」が細々と活動を続けられているのは、憲法九条によって平和が保たれているからこそだろう。その会も、今やねりま九条の会のメンバーなしには先行き危ぶまれるほどだが、ともかく、女性の声を政治の現場に、と知恵を出し合っている。
 この度、ねりま九条の会のメンバーからのお声がけで、女性新区長誕生について書かせていただくこととなった。せっかくの機会なので、本音に徹して記したい。
  歳を超えた本年まで、結婚後の2年を除き一貫して杉並区民だったが、区長として覚えているのは山田宏氏から。彼は定期購読していた「週刊金曜日」の記事でやけに称賛されていたが、実はトンデモないとの噂を聞き及んでいただけで、当時、私は地元の政治にはさして興味がなかった。それが本当に「こいつは許せない!」現区長、つまり岸本さん相手に争うことになると判明し、やむなく提訴取り下げ…。何をおいても杉並初の女性区長の足を引っ張るようなことはできないからだ。

 自転車で初登庁(7/ )、
 待ち構える支持者たちに大歓声で迎えられた岸本さん。とにかく爽やかでカッコいい。「透明性を高め、住民参加を重視する」政策の特徴などは、すでに多くのメディアが紹介している。「私個人としては、自分の名前の『聡』の字が公の心に耳傾けることを表しているのでそれを裏切りたくない、ベルギー人の夫とは永いコラボを発展的に解消し杉並のために働くべく帰国した」という自己紹介を、なにより鮮やかに思い出す。
 西荻窪界隈の女性たちの要請に応じた立候補公表の場で、しかし私はは思い切って苦言を呈した。「披露されたポスターが立憲民主党の女性国会議員とのツーショットというのは解せない、無所属のはずでは?」しかもその女性が衆議院に当選できたのは、れいわの山本太郎がそれこそ「大人の対応」で自らの立候補を取り下げて応援に徹し、一気に注目の的となったからだ。
 岸本さんも「水道民営化はだめ」という点で山本太郎と早くから共鳴していたと聞く。どんな組合とも組織とも無縁なまっさらの市民政党れいわの杉並支部には、有機給食や環境保護に詳しいメンバーも活動中だから、岸本さんが 年近くヨーロッパNGOで公共政策に取り組んだ経歴が活かせるはずだ。
 「区民想いの区長を!」との女たちの願いは奇跡的に達成できた。杉並が変わったからには東京も変えられる、東京が変えられるなら日本という国も…。明日は「国葬反対・女たちの会」で元気な女性たちの声を聞きたい。 小林緑(杉並区在住)

 


 

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