108 号 2023年4月発行

 

 

放送法と安倍政権・総務相文書読む
                 
永田浩三(武蔵大学社会学部教授)
 
 

◆小西洋之議員が明かした衝撃文書
 2023年3月2日。国会内で立憲民主党の小西洋之参議院議員が衝撃的な文書の存在を記者会見で明らかにした。公表された文書は、2014年から 年にかけて、当時の総務省幹部と首相官邸側などがやりとりしたもので、A4で
 枚に及んだ。その後、さまざまな取材によって、小西議員が文書を入手したのは、安倍晋三元首相が銃撃され亡くなる前であったことがわかっている。小西氏は総務省時代、放送法に関わる業務に携わったこともあるが、かつての職場の仲間が危険にさらされないよう準備に時間をかけ、公表に踏み切った。早々に公開されたことで、森友学園文書において起きた文書改ざんは起きていない。

◆安倍政権によるテレビ局の締め付け
 安倍政権は、政治的公平性をめ
ぐっての放送法の解釈を、テレビ局への締め付けの道具として使い、揺さぶりを続けた。それはある報道番組がきっかけだった。
 2014年 月 日、2014年、TBSの「ニュース 」のスタジオに安倍首相が生出演した。衆議院の解散が3日後に迫っていた。キャスターは岸井成格さん。総選挙直前に取り上げたのは、安倍政権の経済政策の功罪について。アベノミクスを実感できているか否か、新橋などでの街頭での率直なインタビューが紹介された。街の声は、生活は苦しく恩恵などありえないと、否定的なものばかり。これに対して安倍首相は「これって選んでますよね」と不満一杯だった。
 そこから自民党は立て続けに政治的公平を放送界に求めるようになる。 月 日、自民党萩生田光一氏らが、NHKを含む在京テレビキー局に衆院選報道の「公正中立」を文書で要請した。結果として選挙の争点について伝える報道は大きく減り、政権与党は大勝した。

◆放送法が定める放送の自立、政治的公平
 今回の総務省文書の始まりは、この日と同じ 月 日。ここで礒崎陽輔首相補佐官は、放送法のこれまでの解釈の変更に言及し、絶対におかしい番組、極端な事例というのがあるのではないか、それを総務省として検討するよう持ち掛けた。この時、政治的公平について問題があるとした番組はTBSサンデーモーニングだった。
 放送法第四条にはこう書かれている。
放送事業者は、国内放送及び内外放送(中略)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一、公安及び善良な風俗を害しな いこと
二、政治的に公平であること
三、報道は事実をまげないでする こと
四、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
 一方、放送法第三条には「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と書かれている。三条に明記された「放送の自立」。これは日本
国憲法第二一条に記された「言論・表現の自由」に基づく規定である。ひるがえって放送法の第一条の二項と三項も重要である。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義に資するようにすること。
「放送の不偏不党、真実及び自律を保障」するのは誰か。それは政府であり日本社会である。だから、礒崎氏のように政権によって放送法の解釈を捻じ曲げたり、放送局に圧力をかけ、コントロールしようと考えることは、放送法の精神に根本から反している。時の政権がどれほど乱暴者であろうと、放送を自分たちの都合の良いように扱ってはならないし、放送局で働く人間は、健全な民主主義の実現のために、圧力に抗い日々の仕事をしなければならない。

◆放送は民主主義のためにがんばるべき
 さて、放送法は1948年から準備が始まり、1950年に成立した。占領当初の無条件の民主主義の涵養という時代が終わり、アメリカの対中国・朝鮮半島政策が日本社会を変質させつつあった。それでも、あの悲惨な戦争の旗振りをした放送を繰り返すことは許されず、独立した放送でなければならないという理念は揺らいでいなかった。問題の「政治的公平」の文言は、NHKの内部にあった「政見放送における内規」がそのまま流れ込んだとも言われている。つまり、政見放送で候補者を公平に扱うというレベルの局所的な公平性の確保を求めていたにすぎず、礒崎氏が念頭に置くような「国論を
二分する」ような、たとえば憲法改正において放送局をコントロールということが想定されていたのではない。戦争に突き進み悲劇を生んだ時代と訣別し、多様性を認めた「健全な民主主義」を行き渡らせるために放送はがんばるべきだというのが放送法の根幹だ。

◆高市総務相・磯崎補佐官の嚇しと岸田首相の虚偽
 わたしが身を置いたNHKのドキュメンタリーの世界では、「政治的公平」が「お守り」のように働くこともあった。NHKの政治ニュースは過剰に政府に忖度しteiruga、それとのバランスをとるために、ひとつの番組で政府への厳しい批判を全面展開しても構わないというのがわれわれの常識だった。だが、今回の礒崎氏の働きかけは、そうしたお守りを破壊し、一本の番組でも政治的公平を欠いていれば取り締まるという嚇しだった。一方、それに抗う山田真貴子秘書官は「変なヤクザにからまれたもの」と表現した。言論・文化を扱う世界には似合わない野蛮なやりとりに驚く。
 2016年2月、高市早苗総務大臣(当時)は放送局が政治的公平性を欠く場合の停波命令の可能性に言及。テレビ局の政治報道は一層萎縮していく。2016年3月、「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター、「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスター、「ニュース23」の岸井成格キャスターといった放送人が表舞台から去った。
 岸田首相は、国会の答弁で、今回の文書は放送法の解釈変更を行ったのではなく補充的説明にとどまるとの見解を示したが、これは虚偽だ。当時の総務省自身がひとつの番組でも政治的公平は担保されるべきと答えているのだから。「政治的公平」という文言を悪用し、免許を人質にとって放送局に政権批判を許さず、世論をコントロールする。そんなシステムは、今回の事件以降も変わらないどころか、より強化されているとも言える。今回の出来事への関心が持続し、政治介入の精緻な検証がなされることを願う。



「戦争する国」でなく「平和を広める日本」
~憲法9条こそが国を守り、国を超えて人類を守る
                             伊藤 千尋さん講演会より  


 ねりま9条の会は3月 日ここねりホールで、伊藤千尋さんの講演会を開催しました。
 岸田政権がロシアのウクライナ侵攻を口実に、敵基地攻撃能力の保有と大軍拡を閣議決定。マスコミの反対記事もなく、国民世論も軍拡に大きく傾き、閉塞した状況下で、4月の一斉地方選挙を迎える。この流れの中で、岸田政権の戦争への道を止め、9条守る運動に確信を深める学習会になればと企画したものですが、目的は達成され、参加者全員が元気とエネルギーをもらえる講演会となりました。
 以下は講演の抜粋です。

1、ウクライナ戦争の教訓として、侵略した国は孤立し、決して成功しないと、ベトナム、イラク、アフガン戦争などの歴史を紹介し、ロシアの戦争の失敗を予告。また、戦争否定の100年の歴史に触れて、国連憲章の一部が憲法9条の元になり、軍隊を持たないことで平和を築く、これこそがこれからの世界平和に欠かせない要素であり、人類の知恵だ。
 ウクライナが攻められたのは軍隊が弱いからというのは誤りで、ウクライナの軍事予算はDPの3・26%、ロシアの2・6%を上回り、軍拡を進めていた。それに脅威を感じたロシアが、今なら何とかなると攻め込んだ。むしろウクライナの軍拡とドンパス地方のロシア系住民の殺戮がロシア侵攻の原因となった。非武装中立だったらロシアの侵攻口実はなかったとも言える。

 2、ウクライナの戦争に便乗して軍拡、改憲を進める日本政府は、防衛費を倍増し、現在世界9番目の軍事力を3番目に引き上げる。軍拡は相手の軍拡を誘い、緊張と戦争の危険が高まる。
 中国の目標はアメリカを追い越すことで、日本がそれに対抗するには、日本の国家予算全部を軍備に当てることに。専守防衛と言いながら、敵基地攻撃能力を持つことは、明確な憲法9条違反。にもかかわらず馬毛島、石垣島などの南西諸島を軍事基地化した。馬毛島は4億円の島を 億円で政府が購入して、艦載機の離着陸訓練飛行場に。石垣島は自民党市議所有のゴルフ場を政府が買い上げ、ミサイル基地に。「数百メートルのところに市民の住宅が」、と住民の反対運動を紹介。
 またこの機に乗じて改憲をもくろみ、9条1項はそのままに「その2」として自衛隊・国防軍の保有を明記しようとしているが、後法優位が法の原則、追加の法が、前の法を打ち消すことで、戦争国家への総仕上げにしようとしている。

3,軍隊を持たない国は現在
カ国あるが、平和に暮らしている。9条は国を超えて人類を守るのである。アフガンで活躍した中村哲医師は「水があり、農業で食べていければ戦争する者はいない、軍隊は無力」と常々語っている。9条を発案した幣原喜重郎はマッカーサー元帥との3時間に及ぶ説得を続けた。軍人に軍隊をなくせということをなくせということは、医者に病院を、教師に学校なくせというのと同じで、説得は困難だったが、最後に理解し固い握手をしてくれた。
 憲法 条を作ったべアテ・シロタさんは「当時の男女平等は世界でも画期的なもので、今もアメリカの憲法に載ってない、押し付けるとしたら、アメリカより悪いものを押し付ける、これはプレゼントだ、私への香典は日本の9条の会に寄金する」という言葉を残した。

 伊藤さんはさらに、、世界中の憲法9条のモニュメントを紹介され、平和外交とは、具体的になにをすればよいのかについて、事例を紹介されました。
 コスタリカ─軍事費が国家予算の %の国だったが、軍隊がしたことへの反省からから常備軍を廃止、教育費全額を教育費に回し、教育国家に大転換した。また、キューバ危機をきっかけに中南米非核地帯を呼びかけ、東アジアなど世界中に拡大し、国連に核兵器禁止条約を提案する。
 ベルリンの壁─崩壊させるきっかけをつくったのは5人の若者。彼らの「我々は考えなければならない、前進しなければならない」という、教会でのプラカードをきっかけにデモが起き、翌年には数十万のデモに発展した。
 辺野古のハイジ爺さん─「決して敵を作らない」との教えを残した。
 杉並区長選挙─一人街宣(1人で選挙に行こうというプラカード持ってスタンディング)が勝利に。 これらの教訓から、市民の力が政治を変える時代になっていることに確信をもって立ち上がろうとの呼びかけに、聞き終えた 人の参加者からは「元気をもらえた、すっきりした」との感想が寄せられました。

 

戦争はダメ、軍拡NO !4.2大泉学園桜並木デモ    

 4月2日、ねりま大泉町9条の会とねりま9条の会が共催し、新座市栄・池田9条の会が賛同した「戦争はダメ、軍拡NO !」デモが行われました、自衛隊朝霞基地の近くにある大泉公園を出発して、憩いの丘公園までの2・2キロの桜のトンネルを「自衛隊に戦争させるな、守ろ!活かそう!憲法9条」と訴えました。 デモは約60人の 参加でしたが、 太鼓と
鐘を鳴らし、 岸田政 権の戦争国家 反対を呼びかけ、ねりま9条の 会のチラ シを 道行く人 に配りました。デモに先立つ集会では、山岸一生さん、和田春樹さん、新座栄・池田9条の会の松沢さん、暉峻淑子さん、池田五律さんから挨拶を受けました。また参加された区議選予定候補者の岩瀬さん、渡辺さん、薬師さん、高口さん、石森さんからも挨拶がありました。途中からデモに参加する人もあり。無事元気に終えることができました。次回は5月 日(土)北町9条の会が、電車の見える公園に集まって、北町商店街のデモを計画しています。も


◆貯め込んだ基金

 最後に、前川区政が貯め込んだ基金について触れます。自治体の「貯金」である積立基金は練馬区の場合、2017年度の約850億円から2021年度の1077億円と、4年間で227億円も増やしています(2021年度基金運用状況審査意見書)。
 区立小中学校の給食費の無料化を実現、あるいは予定している品川区、荒川区、北区、
足立区、中央区の積立基金と比較すれば、足立区の1804億円を除いて4区の積立基金は練馬区を下回っています。にもかかわらず、インクルーシブ練馬、共産党、立憲民主党などが提出した「給食費無償化を国に求める意見書」を自公両党、未来会議・都民ファーストの会・国民民主党などが否決したことは、区民の要求に背を向けた行為と言わなければなりません。
 今、ヨーロッパ、ブラジル、ソウルと、世界で岸本区長が唱える「ミュニシパリズム(地域主権主義)」、あるいは「市民参加予算編成」の運動(宇都宮健児弁護士の講演)が広がりつつあります。東京都の自治体では、杉並区、世田谷区、中野区、多摩市で、「住民と一体となった自治体の構築」が進められています。
 4月 日に投票が行われる練馬区議会議員の選挙では、区民の声に耳を傾け、暮らしの改善向上のために区民とともに奮闘する候補者に一票を投じましょう。


講演会 福島―内から外から―子どもたちの12年 
       「震災・原発避難者はいま」 PART8 報告

                青木 節子(NpO法人「福島こども保養プロジェクト@練馬」)

 2022年1月、2011年当時未成年だった7人の若者たちが甲状腺がんを発症し苦しむ中、東電を相手に裁判を起こしました。 原発事故から 年が経ち、国も東京電力も責任を取らないまま、国は、原子力発電所の運転期間を 年から 年に延長し,廃炉もままならないのに新しい原発を作ろうとしたり、汚染水の海洋放出を強引に推し進めようとしています。
 当時子どもだった若者が声をあげています。また、子ども達の健康を守るために2011年からずっと放射能を測り続けている「いわき放射能市民測定室たらちね」の鈴木薫さんのお話から今の福島で起きていることをお伝えします。

◆福島の子どもたちの帰還と福島イノベーション構想を中心に🌼  鈴木薫さんのお話
 原発事故後、廃炉もままならない状況が続く中、一部避難解除された第一原発立地町の大熊町に認定こども園と義務教育一貫校「学び舎ゆめの森」が今年6月完成を目指して 億円かけて建設中である。
 2044年から文部科学省が「福島イノベーションコースト構想」をスタートさせ、小中学校における理数教育やふるさとを守るために原発に関わることを教え、さらに高等学校では企業と連携したキャリア教育を実施し高い志を持った人材を育成するという。この構想に沿った学習は既に、ふたば未来学園(福島初の中高一貫校)、小高産業技術校(小高商高と小高工高を統合)で先行実施されている。
 小さい頃から親の目の届かない学校で、故郷を守るため、誰かがやらなくてはならないからと教え込まれる教育は、原発事故という本来東京電力や政府が担うべき責任と課題を、地元の子ども達に押し付けることになるのではないか。学び舎の校歌は谷川俊太郎親子が関わり、計画実現のため著名人を呼んでワークショップなども盛んに行われているという。しかし、子ども達が長期にわたって生活し学ぶ場所は年間放射線量の基準値が ミリシーベルトという高い値であることを思うと、今後の健康に大きな不安を感じる。一方、双葉町では高齢者の方がたを放射能高線量区域に住まわせようとする取り組みも進められている。
  年経ち、ますます、子ども達や人々の健康を守るため放射能を測定し事実を記録し続け、健康診断を通して見守っていく活動を続けていく必要がある。

◆この12年間を振り返って伝えたいこと

  郡山市で小学5年生の時に被災。2013年に兵庫県に母子避難。2020年に「ありのままの自分で」を母と出版。現在、公認心理士資格取得のため勉強中の渥美藍さんの話
 当時、郡山に住んでいて原発からは遠いと思っていたが、放射能汚染は高く、最初はわからずに友だちと外で遊んでいた。母が放射能について勉強してから、外の体育も参加しない、給食の牛乳も飲まない、という選択をした。県内産の食材がどんどん給食に入って来て母は弁当を自分に持たせようとしたが、同じクラス内で弁当を持ってきていた子がいじめられていたので、それはいやだと断った。母にうそをついて、友達と外の公園で遊んでしまったこともある。クラスの中でも何人か引越していくのを見て不安だったりもした。 2011年の夏休み明けからは、もう大丈夫、放射能は怖くないという教育が学校で行われ、家で母が言うことと、学校の先生が言うことが違い、どうしてよいのかわからない混乱した状態がずっと続いた。今、6年生の頃を思い出そうとしてもあまり覚えていない。中学入学を機に母方の祖母と祖父が住む田村市に引っ越した。田村市は郡山より原発に近いが放射線量は低い。その分、放射能に対する感覚が薄く、祖父も自分で育てた野菜を孫の自分に食べさせたがり、母はそれを阻止しようとして口論になるのが悲しかった。学校の先生も友だちも放射能に対する考え方を理解しようとせず、なかなか分かり合えなかった。その中でも、2011年の夏から兵庫のお寺に泊まる保養
に行ったことが救いだった。
 県内よりも放射能のことやいろいろな心配事を言うことができ、耳を傾けてくれた。そこで出会った方が親身になって下さり、兵庫への母子避難が実現したのが中学2年生の夏。兵庫に行き、全く違う文化、言葉に戸惑いながら、保養で出会った方々に支えられ今も兵庫で暮らし自分のなりたい目標も見つかり、勉強中である。
 父と母は放射能に対する考え方が違い、離婚した。また祖父は急性白血病を発症し亡くなった。原発事故由来なのではないか?原発事故が無ければどうだったろう?と考えてしまうことも多い。事故は私の周りで多くの分断を生んだ。出来ればこのような経験はしたくなかった。けれど、保養に参加して自分を成長させることができ、困っている人や未来の子どもたちのために寄り添う仕事がしたいと今は考えている。

 お二人の言葉から私たちは何を受け取り行動すればよいだろうか?
  

「公契約法・条例」をご存知ですか?    桑原 研二 (東京土建練馬支部九条の会 )

 「公契約法・条例」とは、国や自治体が行う公共工事や委託事業(施設管理、窓口業務、清掃、保育、学校給食、介護・福祉施設など私たちの生活に密着する多くの公共サービス事業)について民間業者と契約を結ぶ際に、事業に従事する労働者の賃金・労働条件を適正に定め、確実に末端の労働者にまで確保することを義務づける制度のことです。
 これらの事業に従事する労働者は、国民・住民の生活と権利、安全をまもる大切な仕事を担っており、その数は全国で1000万人以上にのぼります。にもかかわらずその労働者の賃金・労働条件は劣悪で、国や自治体が税金を使って行う公共サービス事業で、年間の所得が200万円にも及ばない多くの官製ワーキングプア(働く貧困層)が生み出されているのが実態です。
 それは政府・財界の戦略による公的部門への「競争原理」の導入や「構造改革」路線の下で低価格・低単価の契約・発注が増大し、公共事業や委託サービス価格は「安ければ安いほどいい」と人件費を無視したダンピング入札が広範に行われているからです。自治体から低価格で落札した業者は、運営コストの大半を占める人件費を安くし収益をあげるために、労働者を正規では雇わすに、パート・アルバイトなど不安定な身分で雇用しています。
 このような状況の中で、各地の自治体では安値で受注した民間業者が事業を続けられなくなった事例や埼玉県ふじみ野市のプール事故など「安かろう、悪かろう」の
公共サービスが、質の確保を難しくし、安全・安心が損なわれる事態を招くなど住民の利益を大きく損なっています。
 公契約条例は、従事者の労働条件の下支えだけでなく、公共施設・公共サービスの品質確保・向上、発注・積算・入札制度の改善など、安定した中小企業経営と地域経済の発展に繋がる「好循環」を目指すものです。
 都内では、すでに 区3市(千代田区・新宿区・目黒区・世田谷区・渋谷区・足立区・杉並区・江戸川区・中野区・北区・日野市・国分寺市・多摩市)の自治体で制定されています。公契約条例が制定された多くの自治体では、政労使・学識経験者で構成される「審議会」が設置され、報酬下限額、条例運営全般を中心に、公共サービスの品質確保・向上、地域経済の発展等につながる活発な論議が行われ、その賃金は区内労働者の実質最低賃金になっています。
 しかし、練馬区では公契約条例の制定は実現していません。長年にわたる公契約条例制定の求めに対しても、練馬区は、「民間企業に雇用される従業員の賃金や労働時間等の労働条件に関する事項は、地方自治体の条例ではなく法律によって定めるべきものであり、その実効性についても、国の労働保護政策によって担保されるべきものであると考えます。したがって、区は、公契約条例を制定して民間事業者における労働条件に関与したり介入することは、考えておりません。」と繰り返すばかりです。物価高で多くの中小企業・労働者が苦しむ今だからこそ、公契約条例の制定が求められます。

 

2023年5月広島に集まるG7指導者に送る日本市民の宣言(抜粋)   

                    共同記者会見(4月5日) 和田春樹氏ほか30名

 ウクライナ戦争は、ロシアのウクライナへの侵攻によって始まり、すでに1年続いている。ウクライナは国民をあげて抵抗戦を戦ってきたが、今やNATO諸国が供与する兵器によって代理戦争の様相を呈している。ウクライナの街や村は破壊され、おびただしい人々が死に、ロシア兵も数多く死んでいる。これ以上戦争が続けばその影響は、世界に広がり、世界中の人々の生活と運命はますます危うくなる。
 朝鮮戦争は、参戦国米国が提案し、交戦支援国ソ連が同意したため、開戦1年あまりで正式な停戦会議が初められた。ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア2国間の協議がはじめられ、1ヶ月後にウクライナから停戦の条件が提案され、ロシア軍はキーウ方面から撤退した。しかし、この停戦協議は4月はじめに吹き飛ばされ、戦争が本格化してしまった。
 開戦1年が経過した今こそ、ロシアとウクライナは、朝鮮戦争の前例にしたがって、即時停戦の協議を再開するべきだ。
 穀物輸出と原発については、国連やトルコが仲介した一部停戦がすでに実施されいる。人道回廊も機能している。こうした措置は全面停戦の道筋となりうる。中国が停戦を提案したこともよい兆候だ。ヨーロッパ諸国でも停戦を願う市民の運動が活発化している。

 G7支援国は武器支援をするのではなく、「交渉のテーブル」をつくるべきだ。グローバルサウスの中立国は、中国、インドを中心に仲裁国の役割を演じなければならない。
 ウクライナ戦争をヨーロッパの外に拡大することは断固として防がなければならない。私たちは東北アジア、東アジアの平和を維持する、日本海を戦争の海にしない、米朝戦争をおこさせせない、さらに台湾をめぐり米中戦争をおこさせない、そう強く決意している。
 日本は1945年8月に連合国に降伏し、 年間続けてきた戦争国家の歴史を捨て、平和国家に生まれ変わった。1946年に制定した新憲法には、国際紛争の解決を、武力による威嚇、武力の行使を用いることを永久に放棄する第9条が生まれた。、日本は朝鮮の独立を認め、中国から奪った台湾を返した。だから、日本は北朝鮮や韓国、中国、台湾と2度と戦わないと誓っている。日本に生きる市民は、日本海における戦争に参加せず、台湾をめぐる戦争にも参加することはなく、戦わないのである。
 私たちは、日本政府がG7の意を受けて、ウクライナ戦争の停戦交渉を呼びかけ、中国、インドとともに停戦交渉の仲裁国となることを望んでいる。


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